模擬国連キャンプ(下) 九州初開催 企画・関係者に聞く

  • 西日本新聞
  • 更新日:2017/11/16
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大庭真佐子さん中尾実樹さん

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九州大、立命館アジア太平洋大、英国オックスフォード大の学生たちが自主企画して今夏、大分県九重町で開かれた「模擬国連」のキャンプ。そこには、どんな狙いや意図があったのだろう。運営に関わった学生リーダー、高校と大学教員の3人に聞いた。

◆異論に学び合うのも教育 オックスフォード大3年・滝野俊太さん

先生の講義を聞くだけではつまらない。本を読んで知識を積み上げることも重要だが、みんなで意見を交わし、違った考え方があることを学び合うことこそが大切。正解を得ることだけが教育ではないはずだ。

国際化って、英語ができればいいだけじゃない。自分の意見をきちんと論理的に発言できたり、異論を受け入れ、互いに問題解決を探る方法を見いだす力が必要だと思う。九州で初めての模擬国連キャンプを企画運営したのは、各国の仲間たちにその過程を体験してほしかったからだ。

海外で大学生同士の討論会に参加すると、日本の学生は自分の考えを表すことが弱いと感じる。日中韓の学生で南京事件や慰安婦問題を議論したときも、日本の学生はどうしても感情的な反論に終始し、他者の意見に則した反論や建設的な討論ができていなかった。

模擬国連は、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんたちが日本で広めたとされる。でも、日本国内の取り組みでは、チーム対抗で討論の優劣を問うものが多く、国連のまねごとで終わっている印象だ。主張が間違っていたとしても、独自の視点や議論の過程を尊重する欧米の取り組みとは違いを感じる。

オックスフォード大の模擬国連協会の会長として、各地の大会運営に携わっている。考え方や討論手法を基礎から学びながら、自分たちで考え、自由に学び合える仲間を増やしていきたいと考えている。

◆世界への関心広がった 福岡雙葉高英語教諭・大庭真佐子さん

私が勤務する高校からも生徒4人が参加した。「ニュースを見なさい」「社会に関心を持ちなさい」…。学校でもそんな指導をしているが、この模擬国連キャンプでは生徒たちの世界への関心度は想像以上だった。

英語学習の点でも「聞く」「話す」「読む」「書く」の四つの力を同時に鍛えられる。厳しい環境に身を置くことで、相当な力がついたはずだ。それ以上に生徒たちが受け身ではなく「自ら学ぶ」仕掛けがたくさんあり、教育効果があると感じた。まさに「アクティブラーニング」(主体的、対話的で深い学び)だった。

生徒たちは連日、未明まで翌日の準備に追われ、「大変です」とこぼしていたが、泣き言は口にしなかった。最初はなかなか英語で発言できなかった生徒も「最終日までには自分の意見を言いたい」と積極的な姿勢で臨んでいた。

英語が無理でも、日本語で国際問題を調べたり、考えたりする取り組みができないかと思った。こんな経験をした高校生は、大学に入ってからも「自分は何を、なぜ、どう学びたいのか」という目標を立て、学び続けるだろう。

キャンプ後、生徒の一人が「アフリカのことを知りたい」と、南アフリカへの短期留学を希望した。全国の高校生を対象にした模擬国連大会に出場したい、という意欲も示してくれた。各国からの留学生が進路相談にも乗ってくれたそうで、交流も深まったようだった。

◆大学連携 活動広げよう 九州大・中尾実樹教授

単に国際問題を学ぶだけでなく、異文化理解、交渉術、プレゼンテーション(発表)力などを多元的に学べる場だった。自ら調べ、仲間と議論し、自分の考えを磨く「自主的な学習」の場でもあった。

異なる歴史観や専門性を持つ各国の学生たち40人が大分県の山里で合宿した。外国籍と日本国籍の人数もほぼ半々。日本人だけでは互いに遠慮して、これほど活発な議論につながらなかったかもしれない。

企画運営した学生スタッフが作った4日間のプログラムには驚いた。チームワークを深めるためにゲームも取り入れ、国連組織や討論のあり方などの講義もよく準備されていた。ユーモアでみんなを和ませたり、模擬国連を初めて体験する参加者を臨機応変に手助けしたりしていた。積極的に楽しく学ぶ、みんなの姿が印象的だった。

「間違ってもいい。失敗を恐れずに自分の考えを発信しよう」。指導役の学生たちは強調していた。日本の教育はどうしても正解を求めることを重要視するが、みんなで知恵を寄せ、補いながら、解決策を見いだしていく面白さを味わえたはずだ。日本人の国際化に必要な素養の一つだと思う。

私は大学の国際化に向け、学生たちの意見をまとめる「国際化学生委員会」の運営や人材育成に関わっている。こうした取り組みが、複数の大学が連携・協力することで、学生たちのサークル活動としてさらに広まっていけばいいと思った。

=2017/11/12付 西日本新聞朝刊(教育面)=

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