英ハロッズを支える伝統と「独自の視点」、社長が語る成功の鍵

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/12/07
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高級品市場では小売各社の競争が激しさを増している。多くの企業が客足の増加と顧客のブランド忠誠度の向上を目指し、実現のための新たな方法を模索している。年間売上高に大きな影響を及ぼすホリデーシーズンには各社とも、そうした取り組みに特に力を入れる。

小売業者の多くはより幅広い層の顧客を獲得することを狙い、苦心の末に考案した消費者向けのイベントなどを開催するなどしている。だが、英国の老舗高級百貨店ハロッズが重視するのは、より「ミクロな」アプローチだ。

ハロッズのマイケル・ワード社長はこの方針について、「われわれが目指すのは、限られた顧客のためのたった一つの店だ。ターゲットとする消費者は、割合としては小さい」と述べている。さらに、自社を銃に例えて「ラッパ銃(散弾銃)ではなくライフル銃だ」と語った。

世界の富裕層がターゲット

ワードによれば、英国に滞在する中国人が小売店での買い物に使う金額のうち、25%がハロッズで支払われている。また、中東からの旅行者で見ると、この割合は50%に上る。

「外国人旅行客はハロッズでの買い物に大金を支払っている。世界中の高額所得者の大半が、ハロッズで買い物をしているのだ」

また、ワードは旅行に関する消費傾向の変化も敏感に感じ取っている。中でも中国と中東のほか、マレーシア、韓国、タイの旅行者に大きな変化が見られるという。

「彼らは買い物のためではなく、何かより多くのものを得るためにお金を使いたいと考えている」「富裕層はありふれたものを求めていない。彼らは何かと関わり合い、楽しみたいと思っている」

さらに、世界全体において、「小売販売を超えた(顧客との)関係性重視の方向への変化が見られる」と指摘する。

重要なのは「適応力」

こうした変化を背景に、ハロッズ自身も変化し続けている。売り場面積を広げ、百貨店に一般的なファッションばかりを重視することにとどまらず、顧客が楽しめるものを提供している。

ワードによれば、「それを示す良い例が、今年5月に開設したウェルネスクリニックだ。最も優れた医師や美容の専門家らを招き、DNA解析に基づくスキンケアやダイエットのアドバイスを受けられるようにした」。

シャネルやフェンディが入居する百貨店内で処方薬を購入したり、遺伝子検査を受けたりするとは、不思議な感じがするものだ。だが、これがハロッズの掲げる体験を提供するというテーマに合致するものであり、顧客に個別の商品ではなく「ライフスタイル全般」の購入が可能だと周知させることを狙ったものであることは間違いない。明らかに、利益の底上げにつながるものだ。

基本的にハロッズは、世界中の富裕層が数々の商品を購入し、まとめて支払いをすることができるワンストップショップを目指している。これは、ハロッズの最大の競争相手は「あらゆる高級ブランド」との考えを明らかにしているワードが強調する重要な点だ。

一方、競争相手と名指しされても、グッチやシャネル、ドルチェ&ガッバーナといった高級ブランドは、ハロッズとのパートナーシップに前向きだ。その理由は、老舗としてのハロッズの評判、そして来店する富裕層の旅行客の多さだ。ワードによれば、「ブランド各社はハロッズを世界に向けたショーウィンドウと考えている。そのため、彼らはハロッズに出店しなくてはならない」。

ハロッズの地位は確かに、183年に及ぶその歴史によって支えられてきた。だが、それはその成功の理由のごくわずかな一部にすぎない。粘り強さ、そして常に適応しようとする姿勢を維持することが、いわば受け継いだ「秘密のソース」であることが証明されている。

ハロッズの売上高は昨年、20億ポンド(約3000億円)に上った。これを実現した大きな要因は、「英国らしさ」を前面に打ち出してきたことであり、外国人富裕層とのエンゲージメントの強化に力を入れてきたことでもある。

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