「睡眠時無呼吸症候群」で寿命が10年縮む

「睡眠時無呼吸症候群」で寿命が10年縮む

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/09/16
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睡眠中の身体の状態は、誰も自覚することができない。家族や友人に指摘され初めて、睡眠中に「息が止まっている」ことを知る人も多い。単なる不眠とは違う、そこには死に至る病が潜んでいる。

痩せていても無呼吸に

「ガーガー」と大イビキをかいていたかと思うとピタッと止まる。……しばらく無音(無呼吸)が続いた後に、爆音のようなイビキが再開される。それを夜中に何度も繰り返す――。「睡眠時無呼吸症候群」(SAS)の典型的な状態だ。

「SASは、肥満の中年男性に多いと言われますが、痩せていて小顔の(顎の小さい)女性、さらには口腔全体に対して扁桃腺の大きい子供もSASになります。

慢性的な鼻詰まりや鼻中隔湾曲症(鼻の中の骨が曲がっているため空気の流れが遮られる)のように、鼻の病気を抱えている人も無呼吸状態になりやすいですね」

こう語るのはスリープクリニック調布院長の遠藤拓郎氏。

高齢者になれば誰しも体重が落ちてくるもの。そのため首まわりの脂肪も少なくなり気道(空気の通り道)が確保されやすくなるはず。しかし、年齢が上がってもSASの患者数は減少していないという。

睡眠時無呼吸症候群を治す!最新治療と正しい知識』(日東書院)を監修した、RESM新横浜睡眠・呼吸メディカルクリニック院長の白濱龍太郎氏が言う。

「高齢者で痩せている場合でも無呼吸になる人がいます。それは舌を支える筋肉が衰えてきて、睡眠時に舌が落ちてしまうからです。

SASの9割は気道が閉塞されイビキを伴う『閉塞性睡眠時無呼吸症候群』ですが、高齢になると睡眠中に脳からの呼吸指令が出なくなるために無呼吸になる人もいます。これは『中枢性睡眠時無呼吸症候群』と呼ばれる。この場合は脳のトラブルが原因であり、気道が塞がっていないので、イビキは出ません。

また女性の場合は男性に比べ、プロゲステロンという女性ホルモンがイビキや無呼吸を起きにくくしています。しかし、更年期から閉経後には女性ホルモンが低下するため、SASの発生が増えてくるのです」

SASのサインと言われるのが「イビキ」――。SASは睡眠時にイビキと無呼吸を繰り返すため、イビキが急激に大きくなったり、逆に小さくなり過ぎると、無呼吸の前兆とも言える。

岩田恭子さん(59歳・仮名)は、夫(60歳)のイビキの変化をこう語る。

「大イビキをかいていたと思ったら、急に音が聞こえなくなって静かになる。あれっと思って隣を見ると呼吸が止まっているんです。『ちょっとあなた大丈夫』と身体を揺すると『ぷふぁー』と息を吹き返す。こんな状態がもう何年も続いていました。

そのうち本当に死んでしまうのではと心配していたのですが、でも本人は寝ているので全然自覚がなくて……」

そしてある時、妻の嫌な予感が的中する。

「いつものように息が止まったので、また揺すったんです。でもその時は一向に息を吹き返さない。慌てて救急車を呼んで事なきを得ましたが、これ以上酸素が不足していたら脳梗塞や心筋梗塞を発症したかもしれません」

岩田さんのように睡眠中の無呼吸で意識不明になり、家族が慌てて救急車を呼ぶ例は少なくない。

たかがイビキ、されどイビキ――。睡眠時無呼吸症候群を放置した場合、10年後の死亡率は16%になるとの報告もある。

「SASで呼吸が止まれば、脳や身体は酸欠状態(低酸素血症)に陥り、全身に十分な酸素が行き渡らなくなる。本人には自覚がなくても、夜寝ている間に心臓や脳など身体全体に大きな負担がかかり、最悪の場合は死を招くこともある。

SASは単なる不眠と違い、それくらい恐ろしい『病気』であることを認識する必要があります」(前出の白濱氏)

現在、国内には睡眠時無呼吸症候群で治療が必要な重症度の人は300万人と推測され、潜在的な患者は2000万人以上とも言われる。

「正確な統計はありませんが、成人男性のうち10人に3人はイビキをかいていると思います。イビキは寝ているときに気道が狭くなり、空気が口蓋垂(のどちんこ)を激しく振動させることで起きます。やがて気道が完全にふさがると無呼吸になる。

ですからイビキをかくということは無呼吸になりかけていると受け止めたほうがいい。つまり、検査していないだけで成人男性の30%は睡眠時無呼吸症候群を患っている可能性があるのです」(前出の遠藤氏)

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夜間頻尿は兆候の一つ

いかにしてSASは起こるのか――そのメカニズムを詳細にみていく。

東京医科歯科大学医学部附属病院快眠センター副センター長の玉岡明洋氏が解説する。

「SASは、基本的に夜就寝中、喉の舌の付け根部分あたりが狭くなって気道を塞ぎ、呼吸ができなくなることで発生します。健康な人であっても仰向けで寝ると重力により、舌や軟口蓋が下がり、気道は狭くなります。

また、常に口を開けている口呼吸でも、仰向けの状態になると、下顎が下がってやはり気道が狭くなりやすく、呼吸がしづらくなることがあります。

さらに睡眠中は喉や首回りの筋肉の緊張が緩みます。肥満によって首まわりや舌のまわりに脂肪が付いている人は、気道が狭くなっているので特に塞がりやすい」

睡眠時無呼吸症候群の主な症状としては、朝起きた時に頭痛がする、爽快感がない、昼間に強烈な眠気が襲ってくる、肩こり、口が乾く、喉が痛むなど多岐にわたる。

さらに無呼吸になると、睡眠中の酸素吸入が減るためエネルギーを燃やせず、脂肪に変わっていく。だからSASの人は余計に太ってしまうと、前出の遠藤氏は語る。

「太れば太るほど、無呼吸が悪化しますので、負のスパイラルに陥ってしまうのです。また低い濃度の酸素で身体機能を維持しなければならないので、その分血圧が上がります。すると心臓への負担がかかるので不整脈、特に心房細動が多くなる。

酸素濃度の低い血液を大量に循環させなければならなくなるので、どんどん腎臓を通過する血液量が増え、夜間に何度もトイレに起きてしまうのです。しかも血圧が高くなると、腎臓の細かい血管が破れて、腎障害を引き起こすことになります」

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Photo by iStock

SASにより睡眠の質が悪くなると精神面にも悪影響が出る。イライラしたり、うつ病になるリスクも上昇する。男性の場合は、性欲の低下、インポテンツなども増える。

ただ、それらがSASによるものなのか自分で判断するのは難しい。自覚症状がはっきりとしないのもSASのやっかいなところだ。早期発見のためにもページ末の表を見て一度チェックしてほしい。

「睡眠時無呼吸症候群であるか否かを確認するには、病院で検査をする必要があります。睡眠中に10秒以上呼吸が止まったり極端に呼吸が浅くなったりする現象が、平均して1時間に5回以上起こる人はSASと診断されます」(前出の玉岡氏)

SASは、病気の氷山の一角と言われるほど、ありとあらゆる病気を引き起こす可能性がある。その中でも一番怖いのが「突然死」だ。

SASへの意識が高い欧米では、夜間に心臓麻痺で死亡すると、まずSASが原因ではないか疑われる。SASの場合、夜間の心臓突然死は2.6倍にまで跳ね上がるという報告もある。

あの重大事故もSASが原因

「私たちが普通に呼吸しているときは、起床時も就寝時も血中酸素濃度は96~100%に保たれています。しかし、重症のSASとなると、睡眠中の血中酸素濃度は60%にまで落ち込んでしまい、低酸素状態になります。それが心臓に大きな負担をかけるのです。

重い持病があったわけでもない人が睡眠中に亡くなる場合は、高確率で睡眠時無呼吸症候群が関わっているとされます」(前出の白濱氏)

他にも血液が酸素不足になることで、糖尿病や高血圧などを悪化させる危険がある。

「SASになると夜間に何度も脳が目覚めることが繰り返されるため、交感神経の緊張状態が続いて自律神経が乱れることで内分泌系にも影響を及ぼします。このため動脈硬化、糖尿病、高血圧などの合併症を発症することがわかっています。

逆にこういった疾患がある患者さんでは、SASの合併をチェックする必要があります。このようにSASも生活習慣病の一つと言えるかもしれません」(前出の玉岡氏)

SASの人は健康な人と比べ、脳卒中になるリスクが4倍、高血圧症が2倍、糖尿病、狭心症、心筋梗塞が2~3倍も高くなる。まさに寝ている間に病気が作られているというわけだ。

さらに睡眠時無呼吸症候群は、一個人の健康状態だけにとどまらず、社会生活の安全、安心にも重大な影響を及ぼす危険性がある。その最たるものが交通事故である。

中でも有名なのが'03年に山陽新幹線で起こった、緊急停止事故だ。原因は運転手の居眠り。この運転手は眠ったまま時速270kmで走りつづけ、車掌に起こされるまで意識を失っていたという。

その後の調査で、居眠りの原因がSASだったことが分かり、社会に大きなショックを与えた。

'12年に群馬県の関越自動車道で起きた高速ツアーバスの事故(死者7名)でも、後に運転手がSASであったことが判明している。

SASの人は、居眠り運転により交通事故を起こす確率が健常者と比べて7倍も高いというデータもあるほど、SASが原因とされる交通事故が後を絶たない。

「普通の居眠りと違い、SASの人は通常ありえない状況で突然眠り込んでしまうことがあります。JRや東急などの運輸会社では、運転手にSASがないか、会社が費用を出して定期的に検査しています。事故を起こしてからでは遅いですからね」(前出の白濱氏)

このように自らの命だけでなく他人の命も奪う危険性があるSASだが、睡眠中は誰しも自覚がなくなるため、一人で寝ているとなかなか気づきにくい。そのため家族からの指摘で病院に訪れる人がほとんどだという。

「SASの場合、特に無呼吸から呼吸を再開するときに大きなイビキが起こります。とはいえ、眠っているときの症状を自ら知ることはできません。実際、患者さんの多くが『妻からイビキを指摘された』と告白しています。

特に近年は高齢化が進み、一人暮らしの高齢者の方も増えていますが、そういう人はなかなか自分では気づきにくいので、放置したまま悪化させる可能性は十分あります。

たっぷり寝ても疲れがとれないなど、兆候があれば専門の睡眠外来を受診することをおすすめします」(前出の白濱氏)

実はあなたもそうかもしれない――。日中に憂鬱だったり、倦怠感がとれないと最近顕著に感じる人は、SASを疑ってみてほしい。SASは放置すれば寿命が縮まる半面、きちんと治療すれば寿命を10年延ばすことも可能なのだ。

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