プラネタリウム・クリエーター大平貴之さんが影響を受けた本10冊

プラネタリウム・クリエーター大平貴之さんが影響を受けた本10冊

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2017/11/12
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ミーシカに自分を重ねていたあの頃

小学生のときは漫画や小説よりもハウツー本が好きでした。百科事典や理科実験の説明本が図書室にあり、夢中になって読んで、科学の実験や工作、植物の栽培などに没頭していました。少し変わった子供でしたね。

本で調べた知識を実践することの楽しさを覚えたのがこの頃。10歳の時、初めてプラネタリウムを自作することにもつながります。

そんな小学校時代でしたが、数少ない物語の読書で印象的だったのが『ぼくとわんぱくミーシカ』。ロシアが舞台で、主人公にはミーシカという友達がいます。

彼がとんでもないいたずら小僧で、花火を自作したり、時計を見ると分解したり。主人公は「弱った弱った」ともらし、その奔放ぶりに振り回されながら冒険や新しい実験をして一緒に遊び、それが楽しい思い出になっていきます。今思えば、ミーシカに自分を少し重ねていたのかもしれません。

小学校高学年の頃、あるテレビ番組を見て衝撃を受けました。それが3位に挙げている『コンタクト』の著者、天文学者のカール・セーガン先生が監修し、自ら出演していた『コスモス』という科学啓蒙ドキュメンタリー。書籍にもなりましたが、これがめちゃくちゃ格好良かった!

科学が解き明かした宇宙の神秘をドラマチックに表現していて、魅了されました。以来、セーガン先生の大ファンに。『コンタクト』はそれを知った父が中学の時に見つけてきてくれた本。読んで感動しました。

天文台で研究を行う女性科学者が、他の星から届いた謎の電波を解析してみると、宇宙船のような機械の設計図が示されていることがわかります。その機械を完成させ、作動させると発信元の惑星までワープ。人間とは別の知的生命体に遭遇する、いわゆるSF物です。

ただ、そこはセーガン先生、作品に通底する科学的態度がなんともロマンチック。宇宙の物理法則は創造主の何らかの意思によるという独特の世界観がある。さらに、真理を探究する人間の心の美しさが際立っている作品です。

冒頭から心を鷲掴みに

1位に挙げる『星を継ぐもの』も同じくSFです。高校の頃、図書館で何気なく手に取って気に入り、すぐに買いました。

月面探査で宇宙服を着た死体が発見されます。その死体を調査したところ、5万年前の人間であることが判明する、というところから物語が動き出し、冒頭から心を鷲掴みにされます。

執筆された'70年代当時の科学的事実と、架空の科学を織り交ぜ、天文宇宙の観点から社会や歴史、経済、宗教など人間のすべての活動を包括的に解き明かしていく。非常に大きなスケールで、ある種の推理小説にもなっているんです。とても新鮮で惹かれました。

この小説は『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』と続く3部作で、僕の中では不可分の一つの作品としてベストワン。読み進むに連れ、地球人の起源や進化の方向性もユニークかつ客観的な視点で語られます。

プラネタリウムづくりを生業にしていると、「地上の雑事を忘れられて夢があるね」なんてよく言われますが、その捉え方はやや表面的。むしろ天上の星を調べると、地上の私たち人類を見つめ直すことになる。

宇宙の中に地球があり、すべてがつながっている。プラネタリウムも単に夢を伝えるというよりは、人間自身を知るための一つのツールだと、最近、思うようになりました。その考え方のヒントをくれたのがこの本だったんです。

2位の『イノベーションのジレンマ』は、ソニーの会社員時代、当時の出井伸之会長が薦めていて読んだ本です。

盤石の地位を築いていた大企業が、新進の小さな会社の登場であっさり主役の座を奪われてしまうことがある。そのメカニズムを考察しています。

この本で語られる、いわゆるベンチャー企業による「破壊的イノベーション」に対し、僕は自分自身の仕事を強く投影しています。専用施設にある大規模なプラネタリウムの市場は大手が圧倒的に強い。でも私たちは小型のプラネタリウムを開発し家庭用という新しい市場を開拓しました。

読み返すと自分の仕事が破壊的イノベーション側と考えられ、今後の展開の仕方の示唆にも富む、まさに今、大切な本になっています。

成功譚でも失敗話でも、本を読めば著者の生の感覚までをダイレクトに受け継げます。そして一冊の本は読者一人一人の知恵をつなげ、集合知を作る強力な媒体です。読書は本当に豊かな価値観を育んでくれます。

(取材・文/佐藤太志)

▼最近読んだ一冊

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「昨年からメロン栽培にハマり、手に取った本。メロンの育て方を体系的に説明した良書です。今年の出来はサイズは十分、糖度に不満が残り、まだまだ研究が必要。ハウツー本を読み、実践する楽しさを思い出しました」

大平貴之さんの10冊

第1位『星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン著 池央耿訳 創元SF文庫 700円
「科学技術が開く明るい未来を信じたい、という著者の考え方が貫かれています。3部作通して今も読み返します」

第2位『イノベーションのジレンマ 増補改訂版
クレイトン・クリステンセン著 玉田俊平太監修 伊豆原弓訳 翔泳社 2000円
「敏感なレスポンスができないなど大企業のジレンマと、破壊的イノベーションの事例も書かれていてわかりやすい」

第3位『コンタクト』上・下
カール・セーガン著 池央耿、高見浩訳 新潮文庫 入手は古書のみ
「映画化もされましたが、小説には著者の知性が溢れている。ディテールの描写に圧倒され、余韻の残る結末も印象的」

第4位『夢の蛇
ヴォンダ・N・マッキンタイア著 友枝康子訳 ハヤカワ文庫SF 入手は古書のみ
「女性主人公の恋愛と冒険を描くSF。1位の巨人シリーズとは対照的な世界観」

第5位『ぼくとわんぱくミーシカ
ニコライ・ノーソフ著 佐野朝子訳 学研プラス 入手は古書のみ
「モミの木を切り倒しクリスマスツリーを作るなど子供心をくすぐるエピソードが良い」

第6位『十五時間の核戦争』上・下
ウィリアム・プロクノー著 後藤安彦訳 ハヤカワ文庫NV 入手は古書のみ
偶発的に起きた核戦争でアメリカ爆撃機の乗員が直面する現実を冷徹に描くSF小説

第7位『地上に星空を
伊東昌市著 裳華房 入手は古書のみ
「業界を代表する識者によるプラネタリウムの歴史と技術書。僕も少し紹介されてます」

第8位『原発ホワイトアウト
若杉冽著 講談社文庫 700円
「キャリア官僚による告発小説。私利私欲が生む悲劇。原発問題の一面を捉えています」

第9位『アルケミスト 夢を旅した少年
パウロ・コエーリョ著 山川紘矢、山川亜希子訳 角川文庫 552円
「羊飼いの少年が旅を通し人生の知恵を学んでいく物語。成長する姿に共感できる」

第10位『違法合法スレスレマニュアル
桜吹雪探偵団編 アリアドネ企画 入手は古書のみ
「大学院生の時にコンビニで立ち読みしてハマりました。面白おかしい法律相談が満載」

『週刊現代』2017年11月18日号より

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