ひとり暮らしの若者の家電事情-雇用環境改善でひとり暮らしが増加、パソコンやスマホがあるからテレビはいらない?

ひとり暮らしの若者の家電事情-雇用環境改善でひとり暮らしが増加、パソコンやスマホがあるからテレビはいらない?

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  • 更新日:2018/04/17

要旨

近年、ひとり暮らしの若者が増えている。背景にはアベノミクスによる雇用環境の改善がある。若年層の失業率や非正規雇用者率は低下しており、大学卒予定者の内定率は上昇している。

住まいの変化や情報通信技術の進化により、ひとり暮らしの家電保有状況が変化している。備え付けの小型冷蔵庫の設置やフローリング床が増えるなど、住まいの利便性向上により、冷蔵庫や掃除機の保有率が低下している。さらに、パソコンやスマートフォンの普及により、機能的にも内容(コンテンツ)的にも通信と放送の融合が進むことで、男性ではテレビの保有率が低下している。

今後、日本では高齢層を中心に単身世帯が増える見込みだ。住まいの変化や技術革新は若者だけでなく高齢者を含めた消費者全体に関わる変化だ。消費者の暮らしや価値観の変化を丁寧に読み解くことが、日本の消費市場を生き残る鍵だ。

はじめに

新生活が始まる春。社会人となり、ひとり暮らしをスタートした若者もいるだろう。今の若者は、消費社会が成熟化し、景気低迷が進む中で生まれ育ってきた。安価で品質の良い商品やサービスに囲まれ、インターネットやスマートフォンなどの技術革新の恩恵を受ける一方、労働環境や社会保障制度における世代間格差などに直面し、経済不安が強い世代だ。そんな今の若者は、どのようなひとり暮らし生活を送っているのだろうか。ひとり暮らしの割合や家電の保有状況などを見ていきたい。

若者の親との同居率~アベノミクスによる雇用環境の改善で、ひとり暮らしが増加

総務省「親と同居の未婚者の最近の状況」によると、20~34歳の未婚者の親との同居率は、1990年から2012年までは上昇傾向にあり、ピーク時の2012年では48.9%を占める(1)。しかし、2012年以降は一転、低下傾向を示し、2016年では45.8%となっている。

若者の親との同居率が下がり、ひとり暮らし(2)が増えた背景には、アベノミクスによる雇用状況の改善があるようだ。20~34歳の失業率は、親との同居率と同様に、2012年以降、低下している。さらに、20~34歳の雇用者に占める非正規雇用者の割合も最近では低下傾向にある。5歳階級別に細かく見ると、20~24歳では2014年から、25~29歳と30~34歳では2015年から低下している。また、大学卒予定者の就職内定率も上昇傾向にある。つまり、もともと非正規雇用者の割合が高いなど厳しい環境にあった若い年齢層ほど、比較的早い時期から雇用環境の改善が進んでいるようだ。なお、大学卒予定者の就職内定率は、2013年以降、女子学生が男子学生を上回って伸びており、「女性の活躍促進」政策の効果が窺える。

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(1)5年毎の男女別・5歳階級別の値を見ても、いずれの層も20~34歳全体とおおむね同様だが、より若い年齢層で近年の親との同居率の低下幅が大きい。
(2)仮に親との同居以外をひとり暮らしとしているが、厳密には兄弟姉妹や親戚、友人との同居なども含まれる。

ひとり暮らしの若者の家電事情~パソコンやスマホがあるからテレビはいらない?

さて、春は家電量販店で、ひとり暮らしの新生活に必要な家電製品のセット販売が実施されることも多いが、今のひとり暮らしの若者の家電保有状況はどうなっているのだろうか。

1|家事用耐久財の保有状況~近年、男女とも冷蔵庫が若干低下、女性では掃除機や電子レンジも低下

総務省「全国消費実態調査」にて、30歳未満の単身勤労者世帯の家事用耐久財の保有率を見ると、1999年から2014年にかけて、男性では炊飯器や電子レンジ、洗濯機が約5割から約9割へ大幅に上昇し、もともと保有率が高い冷蔵庫や掃除機も1割程度上昇している。なお、冷蔵庫の保有率は、2009年から2014年にかけて若干低下している(▲2.4%pt)。

同様に女性について見ると、もともと男性と比べて家事用耐久財全般の保有率が高いためか、全体的に上昇幅が小さく、むしろ低下しているものもある。1999年から2014年にかけて、炊飯器は約2割、洗濯機や電子レンジは約1割、冷蔵庫も若干上昇しているが、掃除機は1割弱低下している。また、2009年から2014年にかけて、男性同様に冷蔵庫が若干低下(▲1.6%pt)するとともに、電子レンジも若干低下している(▲3.6%pt)。

保有率の男女差を見ると、1999年や2004年では全体的に女性の方が高いが、2009年から炊飯器で、2014年では掃除機で男性が女性を上回るようになっている。

つまり、男女とも主な家電保有率が8割程度に上がっているが、近年、男女とも冷蔵庫の保有率が、女性では掃除機や電子レンジの保有率も若干低下している。また、炊飯器や掃除機など、男女の保有率が逆転するものもあらわれている。

これらの背景には、例えば冷蔵庫については、最近のひとり暮らし用のマンションでは備え付けの小型冷蔵庫の設置が増えていることがあげられる。掃除機については、特に女性ではフローリングの部屋に住むことが増え、使い捨ての掃除シートを使えば必ずしも掃除機が必要ではないのだろう。男性の保有率が女性を上回る炊飯器については、若年単身勤労者世帯の男性では自炊が増えており、男性の方が女性より米などの穀類の支出額が多いこと(3)が影響しているのかもしれない。現在、女性では自炊が減り、ひとり暮らしの男女の食生活は似通ったものになっている。このことが女性の電子レンジ保有率の若干の低下につながっている可能性もある(現在、電子レンジ保有率は約9割で男女同程度)。

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(3)久我尚子「若年層の消費実態(3)-『アルコール離れ』・『外食離れ』は本当か?」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2016/6/20)>http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=53147?site=nli

2|教養娯楽用耐久財や通信機器の保有状況~男性ではパソコン・スマホの普及でテレビ保有率は低下

同様に教養娯楽用耐久財や通信機器の保有状況を見ると、男性ではパソコンが5割弱から9割を超えて大幅に上昇している。2014年ではタブレット端末と単純に足し合わせると120%を超える。また、もともと8割を超えて保有率の高い携帯電話(2009年までの調査項目)も2004年から9割を超え、2014年ではスマートフォン(約8割)と、それ以外の携帯電話(約26%)の保有率を合わせると100%を超える。パソコンやスマートフォンなどの通信端末が広く普及する一方、テレビの保有率は15%程度低下している。

女性でもパソコンの保有率は大幅に上昇し、2014年ではタブレット端末と合わせると約9割である。男性と同様に携帯電話は2004年から9割を超え、2014年ではスマートフォンと、それ以外の携帯電話を合わせると100%を超える。なお、女性ではテレビの保有率は依然として9割を超えて横ばいで推移している。

男女差を見ると、パソコンやタブレット端末は男性で、テレビやスマートフォンは女性で高くなっている。

つまり、男女ともパソコンやスマートフォンなどの通信端末が広く普及する一方、パソコンやタブレット端末の普及がより進んでいる男性ではテレビの保有率が低下している。

これらの背景には、テレビの視聴を機能的にも内容(コンテンツ)的にもパソコンやスマートフォンなどで代替できること、そして、若者ではテレビ離れとネット志向の強まりが進んでおり、その傾向は特に男性で顕著であることがあげられる。男性ではインターネットの視聴時間がテレビの視聴時間を上回りつつあるが、女性では依然としてテレビの方が圧倒的に長い(4)。テレビの視聴時間が長い女性では、スマートフォンなどの小さな画面よりも、液晶テレビの大きな画面でテレビを見たいというニーズが強いのかもしれない。

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(4)久我尚子「若年層の消費実態(5)-どこまで進んだ?デジタル・ネイティブ世代の『テレビ離れ』と『ネット志向』」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2017/2/15)http://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=55075?site=nli

おわりに~製品の高機能化だけでなく、消費者の暮らし・価値観の変化を読み解くことが鍵

アベノミクスによる雇用環境の改善で、親元を離れ、ひとり暮らしをする若者が増えている。現役世代の経済基盤安定化に向けた政策は今後も続く見込みであり、ひとり暮らしの若者は、さらに増える可能性がある。

また、住まいの変化や情報通信技術の進化により、ひとり暮らしの家電保有状況が変化している。備え付けの小型冷蔵庫の設置が増え、掃除のしやすいフローリング床が増えるなど、住まいの利便性が高まることで、従来は必需品であった冷蔵庫や掃除機の保有率が低下している。さらに、情報通信技術の進化により、機能的にも内容(コンテンツ)的にも通信と放送の融合が進むことで、男性ではテレビの保有率が下がっている。

今後、日本では、高齢層を中心に単身世帯が増える見込みだ。住まいの利便性向上や技術革新は、若者だけではなく、高齢者も含めた消費者全体に関わる変化だ。

昔から日本企業が得意とする従来製品の高機能化は重要な視点ではあるが、消費者の暮らし方の変化によって、必ずしも高機能化を求められない部分も出てくるだろう。逆に、従来からある機能でも、見せ方を工夫することで、現在の暮らしに合う製品に変わる可能性もある(5)。

消費者の暮らしや価値観の変化を丁寧に読み解くことが、日本の消費市場を生き残る鍵だ。

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(5)例えば、冷蔵庫について、従来と同様の冷蔵・冷凍機能のままでも単純に大型化することで、大量の作り置きや下ごしらえ食品を保存しやすい作りにし、共働き世帯向けに打ち出すなど

久我尚子(くが なおこ)
ニッセイ基礎研究所 生活研究部 主任研究員

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