アメリカで「寿司を素手で握るか否か」の論争が勃発! 日米の衛生観念が対立する

アメリカで「寿司を素手で握るか否か」の論争が勃発! 日米の衛生観念が対立する

  • ハーバー・ビジネス・オンライン
  • 更新日:2017/10/11
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手袋をはめて寿司を握るニューヨークの寿司職人の手元

「医療服のままでの出退勤」が常態化するアメリカの衛生観念を紹介した前回だが、今回は海外と日本の衛生観念の違いから生じる問題について綴ってみようと思う。

日本は、自他ともに認める世界有数の「超きれい好き国家」だ。

日本衛生材料工業連合会によると、昨年度の家庭用・医療用・産業用を合わせたマスク生産数量(国内生産・輸入数量)は、49憶枚超。1度の青信号に3,000人が横断する渋谷の交差点にすら、空き缶1つ落ちていない。ドラッグストアの商品棚には「除菌」、「抗菌」、「殺菌」という言葉が並び、公衆トイレに入ればボタン1つで洗浄から乾燥までしてくれる。

そんな日本人の衛生観念は、外国人にとって時に異様に映ることもある。

サッカーの国際試合後に、日本人サポーターが片付けをしている姿が現地メディアに取り上げられると、世界は「負け試合の後に掃除ができるメンタルの強さはどこからくるのか」と不思議がり、小学生が自分の教室を掃除する姿には、「清掃要員の雇用を奪っている」「児童労働だ」という声すら上がる。

前出の「マスク」に至っては、海外のスリ集団の間で「白マスク姿=日本人」という認識がもたれているため、“素直で金持ちの日本人がする自己紹介アイテム”として彼らの目印になっているほどだ。

こうした公衆衛生に対して高い意識が保たれている国だからこそ育まれた代表的な食べものがある。「寿司」だ。

素手で握った生魚を客に提供するには、それ相当の衛生的環境が求められるが、日本の寿司職人は、徹底した人材教育と衛生管理によって、見事にその伝統と環境を守り抜いてきた。今や日本の寿司は、生ものを口にする文化がなかった国でも食されるほどポピュラーな食べ物として知られるようになり、日本を代表する文化の1つとしても、その地位を不動のものとしている。

しかしニューヨークでは、そんな世界に愛されてやまない日本の寿司が、数年前からある論争に巻き込まれている。その論争とは、「寿司を素手で握るのは、衛生的か否か」というもの。病院や旅館などで集団食中毒が頻発していた当時の日本でも、海の向こうで勃発したこの日本の食文化論争は、一時逆輸入される形で話題になった。

事の発端は、ニューヨーク市の衛生局による、ある取り決めだった。当局が、市内のレストランにおける衛生基準の1つとして「調理時にゴム、またはプラスチック製の使い捨て手袋の着用」を義務付けるようになったのだが、この“調理”に、本来素手で扱われるはずの寿司も該当するとされたことで、現地の寿司職人らも、この手袋の着用を余儀なくされたのだ。

一部の寿司店はこの基準に反発し、署名運動にまで発展したのだが、最終的に、当局の改善命令に従わなかったとして、現地の人気寿司店が廃業に追い込まれる事態になったのである。

◆なぜか屋台の食べ物は、現金を触った手袋で扱ってもOK

寿司職人は本来、素手で握ることで、魚の鮮度や脂ののり、シャリの硬さや温度などを確認している。それが手袋着用の義務化により、こうした触覚での確認作業ができなくなるどころか、手袋が破れた際、内部で繁殖した雑菌が食品に付着し、かえって食中毒などのリスクが増すおそれもあるため、手袋着用の義務化には店側からだけでなく、現地の外国人客からも疑問の声が多く上がっている。

そのため、現地の寿司店の中には、当局の検査が入る時にだけ手袋をするという方針を打ち出すところも少なくない。こういった店は、その心意気が多くの常連に支持され、実際、連日店内はにぎわうのだが、こうして日本の伝統を貫き通し、清潔を保っている店ほど、当局の検査に神経をとがらせなければならないというジレンマに苛まれているのが現状だ。

今回、日本人経営の寿司店を7軒訪れたが、調理場や職人の手は、日本国内の店と同じように清潔そのもので、立派な調理道具と一緒に置かれていた市販のゴム手袋の箱は、清潔な店をむしろ不衛生で安っぽく見せてしまう存在に見えた。

一方、外国人経営の寿司店やフードコートで、修行経験のない“アルバイト寿司スタッフ”8人に話を聞くと、彼ら全員が「手袋着用は当然だ」と回答。実際、客の側からも、やはり“アルバイトスタッフ”が素手で握る寿司には、どこか不安感が拭えないというのが正直なところだ。彼らにそう感じてしまうのは、長い年月を経て板場に立つ寿司職人から、彼らが修行時代に培った「技術と衛生観念に対する自信」を客として感じ取っているという表れでもあるのだろう。

こうした、本来日本の調理工程には存在しない手袋着用の義務化は、衛生観念が日本と異なる外国だからこそ生まれた基準であるゆえ、受け入れざるを得ないことなのかもしれない。

「多文化が共存するためのルールの一本化」と言われれば、ぐうの音も出ない。ただ当局は、日本のコンビニに相当するデリや屋台などで提供される即席食品に対しては、「現金を触った手袋で食品を扱っても違反にはならない」ともしており、「清潔な素手で寿司はアウト」で、「現金を触ったゴム手袋でサンドイッチはセーフ」とする基準にはやはり、どこか腑に落ちないところがある。

原稿執筆中、カフェで隣り合った若い外国人グループに意見を求めたところ、やはり「他人が素手で握った生ものを口に入れるのには、強い抵抗がある」と声をそろえる。

筆者個人的には、ゴム手袋で握られた寿司は、どことなく人工的な感じがして気持ち悪いのだが、近年、「他人が素手で握った寿司やおにぎりが食べられない」とする人は、若者を中心に日本国内でも増加傾向にあるのも事実だ。

そんな昨今の過剰な潔癖症の日本人と、寿司に対して知識不足の外国人が求めるものが、共通の「手袋」だというのもなんだか滑稽だな、と隣の若者グループの意見をゆっくり吸収していたところ、席を立った彼らのテーブルに、飲みかけのカップとパンくずが置き去りにされたことが、なんとも印象的だった。

【橋本愛喜】
フリーライター。大学卒業間際に父親の経営する零細町工場へ入社。大型自動車免許を取得し、トラックで200社以上のモノづくりの現場へ足を運ぶ。その傍ら日本語教育やセミナーを通じて、60か国3,500人以上の外国人駐在員や留学生と交流を持つ。ニューヨーク在住。

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