「デス・バイ・アマゾン」を乗り越える処方箋

「デス・バイ・アマゾン」を乗り越える処方箋

  • JBpress
  • 更新日:2017/11/14
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人はリアル店舗に何を求めるのだろうか。

「デス・バイ・アマゾン」(Death by Amazon)。

「アマゾン恐怖銘柄指数」とも呼ばれるこの株価指数は、アマゾンの収益拡大や新規事業参入などを受け、業績が悪化すると見込まれる米国の小売関連企業54社で構成される。

54社に含まれるのは百貨店のJCペニー、小売業最大手のウォルマート・ストアーズ、食品スーパーの最大手クローガー、会員制卸売のコストコ・ホールセール、そして書籍チェーンのバーンズ・アンド・ノーブルなど、いずれも著名な大手企業ばかりである。

デス・バイ・アマゾンは、米投資情報会社のビスポーク・インベストメント・グループによって2012年2月に設定された。

2017年6月、アマゾンによる高級スーパーのホールフーズ・マーケットの買収(買収額は137億ドル:約1.5兆円)が発表されると、この指数は一時、時価総額ベースで320億ドル(約3.5兆円)もの下落に見舞われ、日本でも大きなニュースになったことは記憶に新しい(参考:http://www.quick.co.jp/6/article/12478)。

54社に含まれる企業の店舗に、あるお客さまが洋服を買いに出かけたところ、洋服の売り場がAmazon Echoの売り場に改装されていた、という笑えない話も伝わってきている。

いかに事業規模が大きくとも、リアルの店舗がアマゾンの「豊富な品揃え」や「デリバリーのスピード」に真っ向勝負を挑むことは難しい。

それでは、デス・バイ・アマゾンの企業は文字通りこのまま死を迎えるのか。危機を乗り越えるための打ち手はないのか。

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「店舗=販売の場」という固定観念から自由になる

モノやサービスの成熟化・同質化が進む中、ブランド差別化のドライバーとして「ブランド体験価値」(エクスペリエンス)が注目されている。

モノやサービスを「売ることがゴール」だった時代から、「売ってお客さまにどう感じてもらうかがゴール」になる時代。

企業は、お客さまの気持ちの変化に寄り添い、お客さまの体験が豊かになる方向であらゆるブランド接点(つまりマーケティングプロセス全般)を検証し、刷新していくための活動が求められるようになるのである。

かつては、お客さまにモノやサービスを届けるのには「店舗」というリアルなブランド接点が不可欠だった。

しかし、インターネットが普及して以降、モノのデリバリーはもちろん、航空券やホテルの手配だけではなく、生命保険や投資信託のように相当複雑なサービスまでもがウェブサイトで提供できるようになってきている。

今一度、お客さまのブランド体験の旅(カスタマージャーニー)の中でのリアル店舗の役割を考え直してみよう。

販売の場としてのリアル店舗の役割を、土地・建物代や販売員の人件費の一切かからないウェブサイトで代替できてしまう場合、企業の経営者の選択肢はおそらく次の2つである。

戦略的にリアル店舗での販売比率を縮小し、ネット通販のウエートを短期間で高めていくか。

あるいは、リアル店舗に別の役割を持たせることで、お客さまのブランド体験をより豊かにしていくか。

前者は、日本のユニクロやGUを運営するファーストリテイリングが真剣に考えている打ち手である。

アマゾンが次々に繰り出すイノベーションや新規事業参入のスピードを凌駕し、お客さまを引きつけていくことが、生き残りの条件になる。

対照的に後者は、徹底したお客さま目線で発想を転換し、ブランド接点としてのリアル店舗=販売の場、という固定観念から自由になることを意味する。

看板から「ストア」が消えたアップル社の旗艦店

IoT Today』の読者の多くの方々は、今年の夏くらいからアップルの旗艦店アップルストアの看板から「ストア」の名称が消えたことにお気付きだろう。

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ホームページでの「アップル表参道」。

アップルストア銀座は「アップル銀座」に、アップルストア表参道は「アップル表参道」になり、ホームページでもそのような表示の仕方に変わっている。

全世界的に同様の変更が行われたようなので、今回の変更はクパチーノの本社の大きな判断が背景にあることは明白だ。

リアル店舗=販売の場、という固定観念から自由になることこそが、実は「デス・バイ・アマゾン」を乗り越える、最良の処方箋なのである。

2001年5月に最初のアップルストアがオープンしてから、現在では22の国と地域に470を超える「アップル」が存在する。

販売のためのレジがない、ハンズオンのためのテーブルが店舗の大部分を占める、ジーニアスと呼ばれる専門スタッフが気さくに相談に乗ってくれる・・・というのは「アップル」らしいユニークな特徴で、開設以来、変わっていない。

反面、大きく変わったなと思われるのは、キッズ向けのワークショップやディベロッパーによるセミナー、トークセッションなどのイベント開催の頻度やその押し出しが急速に高まったことである。

カリスマ創業者のスティーブ・ジョブスが亡くなって以来、自社のイノベーションのスピードが落ちていることは当のアップル社自身が十分認識しているのであろう。

リアル店舗であろうと、TVCM、ウェブサイト、アプリであろうと、あらゆるブランド接点でお客さまを楽しませたり、ディライト体験を提供したりすることによってお客さまの注目を集めたい。

そして、モノやサービスの購入やリピートにつなげたい。

アップル社の経営陣はそう考えているに違いない。

今年の夏に全国の「アップル」が開催した子供向けワークショップ「サマーキャンプ」では、8歳から12歳までの小学生を対象とし、iPadやMacを使って動画制作を学ぶ、効果音やマルチタッチ機能を使ったインタラクティブブック作りに挑戦するなどを、1回90分のセッションで3日間行なっている。

子供は大人に比べるとリアクションがストレートだ。

「アップル」内ではワークショップのスペースはオープンだから、他の来場者に対するプレゼンテーション効果も十分に期待できる。

また、同伴する子供の親も来場させることができるので、家族単位でアップル・ロイヤルティを醸成できる、というメリットもある。

ワークショップを通じ、バーチャルなウェブサイトでは体験できない、ワクワク感や達成感を「アップル」ならではの売りとして押し出すことで、デス・バイ・アマゾンの轍は踏むまい、というアップル社のしたたかな戦略が透けて見えるようだ。

人間ならではの発想や価値の提供が「デス・バイ・アマゾン」の処方箋

「アップル」に限らず、近い将来、多くのリアル店舗にはAIが導入され、接客シーンの多くは対話型のAIロボットが担当するようになるだろう。

また、Amazon GoのようにNFC(近距離無線通信)とスマートフォンのアプリが連動して、「レジ」は全廃され、言葉自体が死語になると予想される。

それでは、人間が関与するブランド接点は必要なくなるか、といえばそうではないだろう。

AIは人間の仕事を奪うのか?歴史が示す意外な事実」で書いた通り、AIやIoTの導入が進めば進むほど、むしろ逆に「人間ならではの発想や価値の提供」が見直され、ブランドのプレミアム価値の担保になるのではないか、と著者は確信している。

【参考】「AIは人間の仕事を奪うのか?歴史が示す意外な事実

「デス・バイ・アマゾン」の54社すべてがアマゾンの軍門に降れば別だが、数の上で40%程度にまで淘汰されることはあっても、「人間ならではの発想や価値の提供」に気づいた数社がアップル社のように知恵を働かせて、豊かなリアルのブランド体験を創出するだろう。

再び光を放つ存在として、アマゾンに一矢報いる可能性もある。

例えば、日本でも26店舗を展開するコストコ・ホールセール。

その規模感や実演販売の豊富さなどで、あたかもテーマパークに来場したかのようなリアル体験を味わうことができる。

そこでは、ディスニーランドにおけるキャストのような存在の店員が、その個性をあえて圧し殺さないことで、お客さまのユニークなコストコ体験の創出に重要な機能と役割を果たしているように見える。

そういう意味では、アマゾンが買収した高級スーパーのホールフーズ・マーケットの今後の変貌ぶりには興味が尽きない。

「人間ならではの発想や価値の提供」をキープしつつ、プレミアム感で定評のあるリアル店舗にネット通販の持つ効率やスピード感を注入することによって、アマゾンはどういったブランド体験を創出していくのか。

「デス・バイ・アマゾン」は、実は破壊のストーリーではなく、創造のドラマのプロローグなのかもしれない。

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