世界初の女性だけのラリー、「女城主の里」岐阜県岩村町で開催

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2017/12/07
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「妻として、主婦として、家事をして、子供を育て、仕事もして、やることは一杯ありますが、ラリーはやれるんです。みなさんも一緒に走りましょう」

表彰式のシャンパンファイトで印象深い挨拶をしたのは、世界で初めて開催された女性だけのラリーで優勝(1500cc以下のクラス)した栗原智子選手。最新車ばかりのライバルの中で栗原選手の車は25年以上前に作られたシティ。大事にメンテナンスして今も現役だ。それもまた印象的だった。

11月26日、岐阜県恵那市で開催されたL1ラリー恵那。不肖勝股も自動車雑誌編集長時代、多くのラリーを取材・参加もした愛好者の一人。このラリーも私の地元開催ということで、構想段階から参画した。

舞台は恵那市の岩村町、古い城下町だ。戦国時代、織田信長の叔母(美人だったとか)だというのに武田方につき、城を守るために信長方と戦った女城主がいた。NHKの直虎は実在したかどうかわからないらしいが、岩村の女城主は史実。また岩村町は明治を代表する歌人・教育者(実践女子大創立者)、下田歌子を輩出しており、まさに女性が活躍した町。女の戦いにはうってつけの地だと思う。

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大会は岩村の情緒あふれる街並み(国の重要伝統的建造物群)がスタート地点。遠くに見えるのは日本三大山城、岩村城。

近年、レースやラリーへの参加者が徐々に増えてはきているが、まだまだ。このイベントを通じて、女性にもっと参加型のモータースポーツの魅力を訴えていこうというのだ。

男女問わず、問われるのは「センス」

女性とモータースポーツ……自論では車という道具を使ったスポーツなので、男女の差はあまり出ないと思う。要は車を操るセンスなのだから。重要なのは継続性だ。女子がより遠くに飛ぶこともあるスキーのジャンプ競技も、男女を統合してほしいと思っている。

ラリー界では女傑と呼ばれたミシェル・ムーンが最高峰のWRCで1982年に3勝して、ランキング2位になるなど計4勝を挙げている。レースはF1に挑戦した女性が何人か出ているが、成功した人はいない。これからが楽しみだが、アメリカのインディカーではダニカ・パトリックが2008年にインディジャパンで勝ち、100年近い歴史のあるレースで史上初の優勝者となった。

意外と知られていないのは、8000kmも走る肉体的に最も過酷なダカールラリーでも女性が総合優勝している。2001年ユタ・クラインシュミットの快挙だ。今大会の発起人、井原慶子さんも、これまたル・マン24時間でクラス優勝している。

と、いうように女性が活躍できるモータースポーツの世界。その一方で多くのセンスある女性が途中でレースシーンから退いている。やはり結婚や出産など、女性ならではの環境変化によるものだろう。

ただ、欧米には趣味としてモータースポーツを楽しむ女性は多い。日本もそうなってほしい。いきなり男性の中に入っていくのではなく、まずは入門しやすい環境を作ろうというのがL1ラリーの開催趣旨だ。

大会を企画したのは前述、FIAのウィメンモータースポーツの日本代表・井原慶子さん。地元は趣味がダートトライアルという恵那市の小坂喬峰市長や、学生時代ラリーに熱中していた古屋圭司衆議院議員が強力にバックアップ。さらにスーパーマーケットを展開する地元企業、バローなどが協力して実現した。

ラリーは一般公道を移動区間に、閉鎖した林道や公道でスピードを競う競技。大会は岩村町の情緒あふれる街並みをスタート地点に、錦秋の山間部、全92km、スペシャルステージ(SS)4か所・16kmで開催された。主催者によると8000人の観客が集まった。

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75歳まで走る宣言をしていた大ベテラン、小出久美子組の激しい走り。タイヤ選定に泣いた。

女性だけのラリーと書いたが、女性だけでコンビが組めるチームはまだまだ少ないため、ドライバーだけは女性限定、助手席でナビをするコ・ドライバーは男性OKとしたが、予想を超える39台が全国から集まったのはちょっと驚き。女性だけのチームも19台を数えた。

選手の顔ぶれも多彩。女性モータースポーツ界の草分け、競技歴38年の小出久美子選手(ランサーエボ)や、女性ラリー界の第一人者、上村梢選手(大井こずえさん改めWRX STI)のベテラン勢からラリー初参加の人まで様々。主婦、学生、会社員からモデル……なかには、母・娘・息子の嫁の2台参加、台湾の留学生、女性白バイ隊員、トヨタ社長の秘書嬢まで。取材するこちらも面白かった。広島県からの遠来者もいた。

何より嬉しかったのは、主婦業のためにラリーから退いていた人が、この大会の開催を聞いてカムバックしてくれたこと。小さなお孫さんが応援団だった。

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応援に来た娘さんと完走を喜び合う玉木友恵選手。感動のシーンだった

ベテランからレーサー、まったくの初心者までのL1ラリー。大会前、勝田照夫組織委員長は「事故は絶対ダメ!」と口をすっぱく注意していたが、内心は「リタイアは20%くらいかな」と覚悟していたらしい。しかし、終わってみれば、全車完走とラリーでは珍しい結果に。井原さんは「女性の適応力の高さが証明されました!」と破顔一笑。

さぞ、ゆっくり走った結果だとお思いでしょうが、レベルは想像以上に高かった。狭いクネクネ林道を総合優勝した今橋彩佳選手(トヨタ86)はSS1/3(2.45㎞)を平均スピード約77km/h、SS2/4(5.49km)を平均スピード約82㎞/hで駆け抜け、優勝候補最右翼、上村選手を4.5秒の僅差で押さえた。ストレートは120km/hは出ていただろうね。私でも手も足も出ません。

と、いうことで、世界初の女性だけのラリーは無事終了。総合優勝の副賞もラリー競技では前代未聞のJAL東京~パリ往復航空券。こちらも参加者や車同様、華やかだった。

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最後のSSで優勝を決めた今橋彩佳組の86。これまでレースを中心に活動。見事、パリ往復航空券を獲得

小坂市長は来年の開催を約束。日本ラリー界に名物イベントが誕生した。フォーブス ジャパンは女性の読者も多い。皆さんも来年、参加してはどうでしょう。

元ベストカー編集長・勝股優の連載「だからクルマは面白い」

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