全国13地域で計52機のドローンが同時飛行する運航管理に成功 - NEDOやKDDIなど

全国13地域で計52機のドローンが同時飛行する運航管理に成功 - NEDOやKDDIなど

  • マイナビニュース
  • 更新日:2021/11/25
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新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とKDDI、パーソルプロセス&テクノロジー(パーソルP&T)は11月24日、都内で記者説明会を開き、経済産業省の「ロボット・ドローンが活躍する省エネルギー社会の実現プロジェクト/地域特性・拡張性を考慮した運航管理システムの実証事業」において、全国13地域でドローンを同時に飛行させて運航管理を行う実証実験を10月27日に実施し、成功したと明らかにした。

JAL、セコムら5社、ドローンのレベル4運航の実現に向けた実証実験

2025年には6400億円規模の市場拡大が見込める国内ドローン市場

実証では、2022年度の制度整備が予定されている「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)を見据え、複数のドローンを制御して安全に飛行させる運航管理システムを開発し、その有効性を検証した。

その結果、運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用が可能であり、複数のドローンが飛び交う上空で衝突回避などの運航管理業務を行えることを確認した。また、各地域の抱えるさまざまなニーズとドローンの活用方法についても検証している。

経済産業省 製造産業局 産業機械課 次世代空モビリティ政策室 室長の川上悟史氏は「ドローンの国内市場はすでに1400億円規模に成長しており、2023年に2019年比3倍、2025年には同4倍に拡大する見込みだ。今後、測量・監視、災害対応、インフラ点検、物流などの業務用途の市場が拡大することが予測されている」と述べた。

3者は今回得られた成果をもとに、運航管理システムの社会実装や持続可能なビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの作成を2022年1月に向けて進める予定だ。
レベル4の実現で用途拡大が期待される

ドローンは安全確保や利用促進、技術開発などさまざまな視点による課題が官民協働で議論されており、政府が設立した「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」は2020年7月に「空の産業革命に向けたロードマップ2020」を策定した。

これまでのドローン利活用に関する制度整備の経緯としては、目視内の操縦飛行をレベル1、目視内飛行(自動/自律飛行)をレベル2、無人地帯(離島や山間部など)での目視外飛行をレベル3、有人地帯(都市を含む地域)での目視外飛行をレベル4に分類。

日本では2018年9月にレベル3の個別許可の要件が明確になり、2021年通常国会で航空法が改正され、2022年12月からレベル4の開始を予定している。この中で、2022年度をめどにレベル4を実現する方針を定め、レベル4環境下でドローンを運航するために必要な環境整備と技術開発に取り組んでいる。

特に、警備分野やインフラ点検分野のほか、エネルギーの効率化が求められている物流分野では、レベル4環境下のドローンを活用することで運用負担を減らし、省エネルギー化の実現が期待されているという。

川上氏は「目視外の飛行には運航管理システム、衝突回避の技術、リモートID、性能評価基準の開発、国際標準化などが必要となる。ただ、現状ではレベル3にとどまっていることから、有人地帯でも目視外飛行が可能なレベル4を実現していくことで、物流や点検などドローンの利活用拡大が期待できる。そして、開発した運航管理システムにより、将来的にはドローンに加え、空飛ぶクルマや航空機の安全かつ効率的な空域共有に向けた議論を進めていく」と説明した。

13地域で同時に52機のドローンが飛行

こうした背景のもと、NEDOは2017年度から同事業を推進しており、2020年12月には先行開発した運航管理機能を実環境で実証する研究開発として、KDDIとパーソルP&Tの提案を採択した。

2021年3月には西日本(兵庫県)、東日本(宮城県)、災害時想定(三重県)の3地域で計9機のドローンの飛行状況を運航管理システムで収集する先行実証を実施しており、今年度はさらに公募で採択した10地域を加えて、計13地域で事業を進めてきた。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) ロボット・AI部 部長の林成和氏は「コロナ禍において全国の自治体に協力をしてもらい、レベル4を目指す実証実験を展開している。これは、運航・運用あるいは技術上の課題を目的としており、検証の結果などをふまえ、社会実装を目指す」と話した。

実証では、レベル4を見据えて開発した運航管理システムで複数のドローンを制御し、安全に飛行させる検証を実施。当日は計13地域で計52機のドローンを飛行させ、KDDIの東京都港区虎ノ門のオフィス内に設置したドローン運航管理室で運航管理を行った。

実証に先立ち、2019年10月に福島ロボットテストフィールドにおいて1時間1平方キロメートルに100フライト以上のドローンの飛行試験に成功。同フィールドの総合管制室に設置した運航管理統合機能のサーバや運航管理システムのAPI、API接続支援サービスを利用してドローン運航管理システムの相互接続試験を実施し、システムの実用性や相互接続に関するセキュリティ対策の有効性を実施している。

今回の実証実験では、運航管理システムが機能・オペレーションの両面から全国で運用可能であり、複数のドローンが飛び交う上空で衝突回避などの管理業務を行えることを確認した。加えて、各地域の抱えるさまざまなニーズと、ドローンの活用方法について検証した。

検証結果を振り返り、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの森理人氏は「これまではテストフィールドでの実証のみだったため、今回の大きな目的は運航管理システム技術の確立と、ビジネスモデルの確立だ」と説く。

一方、KDDI 事業創造本部 副部長 理事の増田晴彦氏は「当社の携帯の電波を使い、ドローンを動かしており、事前に設定しておけば目視外で自律飛行が実現できる。レベル4での運航はドローンの社会実装の拡大に必須だ」と力を込める。

また、KDDI 事業創造本部 ビジネス開発部 ドローン事業推進G マネージャーの杉田博司氏は「今回の実証で全国各地を飛行するドローンの運航状況を一元的に監視して複数の事業者・機体が連携し、実運用環境での実証に成功した。ただ、飛行現場と運航管理体制の省人化を実現していくため、今後は段階的な自動化が必要となる」と説明した。

各地域における実証の内容と今後の方針

今回の実証では、地域ごとに監視・点検・物流など具体的なユースケースを想定してドローンを飛行させており、実施地域と事業管理機関、ユースケースは下記の通り。

北海道稚内市
事業管理機関がBIRD INITIATIVE、ユースケースは医薬品配送、海獣監視、密漁監視
宮城県仙台市
事業管理機関が佐川急便、綜合警備保障(ALSOK)、長大、イームズロボティクス、ユースケースは中山間地域における物資配送、橋梁点検、有害鳥獣警備、イベント施設警備
福島県南相馬市
事業管理機関が同市、ユースケースは災害時の情報収集、音声による避難誘導、孤立集落などへの緊急支援物資搬送
石川県白山市
事業管理機関がNTTドコモ、ユースケースは鳥獣害調査(赤外/可視光カメラによる熊の監視)、物資輸送、空撮
岐阜県美濃加茂市
事業管理機関が名古屋鉄道、ユースケースは災害初動調査、救援物資輸送
静岡県富士市
事業管理機関がイーシーセンター、ユースケースは物資配送、孤立集落状況・道路状況確認、橋梁点検、液状化が予想される地帯の状況確認
三重県志摩市
事業管理機関が宇宙航空研究開発機構(JAXA)、国際航業、ウェザーニューズ、ユースケースは災害時を想定したインフラ点検、災害把握、物資輸送
兵庫県洲本市・姫路市・上郡町
事業管理機関が日本航空(JAL)、セコム、旭テクノロジー、RedDotDrone Japan、KADO、ユースケースは市街地における医薬品配送、広域施設整備(巡回、侵入警備)、煙突・工場設備点検、スポーツ空撮
高知県四万十町
事業管理機関がA.L.I Technologies、ユースケースは防災・救急用品の輸送、生活必要物資の定期配送、デジタル化の有効性検証(山岳)、山間集落の空撮による現状把握(砂防ダム)
長崎県五島市
事業管理機関がそらや、ユースケースは二次離島への食料品配送、海難捜索・離島調査、海ごみ調査、農地作付け確認
長崎県対馬市
事業管理機関が新明和工業、ユースケースは漂着・漂流ごみ空撮調査
大分県杵築市
事業管理機関がオーイーシー、ユースケースは農作物観察、獣害侵入確認、人命捜索、地域特産物の配送(災害救助用品の配送)、橋梁点検(ダムの破損調査)、施設内測量(災害調査)、農薬散布
宮崎県美郷町
事業管理機関がセレス、ユースケースは再造林地の苗木、獣害防護柵、土砂崩れなどの点検、町有林の森林資源調査としての測量、中山間地域への衣料品や食料品配送、農薬散布

以下は同時運航管理システム実証時の動画。

各者の役割として、NEDOがプロジェクトの全体支援、制度設計と連携するための各省庁などとの調整を行い、KDDIはプロジェクト全体推進、運航管理機能の研究開発、各コンソーシアムへの運航管理システム、機体、通信などのアセット、技術支援、西日本(兵庫県)のユースケースの先行実証運営、災害時(三重県)ユースケースの先行実証運営を担った。

また、パーソルP&Tは地域実証の推進、事務局運営、各地域実証の安全管理、ユースケースでの検証実施管理、中央管理と各事業管理機関との連携推進、ビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの研究開発、東日本(宮城県)ユースケースの先行実証運営を担当した。

パーソルプロセス&テクノロジー(パーソルP&T) 執行役員 ビジネスエンジニアリング事業部 事業部長の前田清史氏は「地域実証で得られたさまざまな検証結果、ノウハウをもとにドローンの社会実装に必要不可欠となる持続可能なビジネスモデルの確立に向けたガイドラインの作成に取り組む」と述べていた。

今後、3者は官民協議会が取りまとめた「空の産業革命に向けたロードマップ2021」に沿って、ドローンのレベル4の実現に欠かせない運航管理システムの社会実装に向けて解決すべき課題の洗い出しを行うほか、持続可能なビジネスモデルの確立に向けた運航管理要件の具体化や、それらを進めるためのガイドライン作成に取り組む。

そして、作成したガイドラインを活用することで業界の発展や課題解決に向けたルールづくりを推進し、レベル4環境下でドローンが安全に飛び交う社会の実現を目指す考えだ。

岩井 健太

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