新聞は報じない...日銀副総裁が語った「コロナ後の日本経済」に起きるスゴいこと

新聞は報じない...日銀副総裁が語った「コロナ後の日本経済」に起きるスゴいこと

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2020/08/01
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日経新聞が16行のベタ記事のみ、他紙は一切報道せず

久しぶりに東京・内幸町の日本プレスセンターを訪れた。7月29日午後2時30分から同センター最上階で日本記者クラブ主催の雨宮正佳日本銀行副総裁の講演があったからだ。事前の案内にコロナ禍で会場内のソーシャルディスタンス厳守のため「申し込み先着40人限定」とあったことが、行く気となり、足を運んだ理由である。

日銀最高の理論派である雨宮氏の約45分の講演に耳を傾けてメモを取り、その後の質疑応答も聞いてからオフィスに戻った。事務方が用意した「最近の金融経済情勢と金融政策運営」と題した資料(A4版8枚)はもちろん、持ち帰った。

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雨宮正佳日本銀行副総裁

司会は同クラブ企画委員の日本経済新聞の藤井彰夫論説委員長であり、共同通信記者(日銀クラブ?)や朝日新聞の原真人編集委員らが鋭い質問をしていたので、どのような記事になるのかと翌日の各紙朝刊を楽しみにしていた。

驚いた。日経新聞が金融経済面に「日銀・雨宮副総裁、2%物価目標が市場安定に寄与」の見出しで僅か16行のベタ記事で報じただけで、他紙は一切報道しなかったのだ。チャートや図表紹介のプロジェクターと資料も用意して臨んだ日銀の事務方も拍子抜けしたに違いない。

筆者も合点が行かなかった。なぜならば、15日の日銀の金融政策決定会合後に開かれた記者会見での黒田東彦総裁発言が各紙(16日付朝刊)で大きく取り上げられていたので、今後の金融政策運営の理解を深掘りするために、この雨宮講演が恰好の機会となると判断した筆者は、新聞・通信社の記事を是非とも読みたいと思い、期待していたからだ。

消費活動が4月に底入れしたことを示唆

では、雨宮講演は報道に値しない内容だったのか。政治を主たるテーマとしてきた筆者は金融政策や金融経済情勢分析について門外漢である。それにしても、講演中、しっかりとメモを取ったということは記録に残す必要があると判断したからである。

黒田総裁は記者会見で「新型コロナの影響を注視し、必要があれば躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる」と述べた(「日経」掲載会見要旨から)。それは、会見当日に日銀がホームページに「経済・物価情勢の展望(2020年7月)」と題したレポート(A4版48枚)をアップしているが、同レポート7頁に<当面、新型コロナウイルス感染症の影響を注視し、必要があれば、躊躇なく追加的な金融緩和措置を講じる。政策金利については、現在の長短期金利の水準、または、それを下回る水準で推移することを想定している。>と記述されているので、当然のことだが、そのままの発言だった。

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日本銀行「経済・物価情勢の展望(2020年7月)」より

ここで指摘したいのが、雨宮講演なのだ。配布された資料(図表5)にある「日本銀行の経済・物価見通し」を見ると、実質GDPと消費者物価指数の2020年度(4月見通し)、21年度(同)、22年度(同)の数値が記載されている。実質GDP:20年度-4.7、21年度+3.3、22年度+1.5、消費者物価指数:20年度-0.5、21年度+0.3、22年度+0.7――とある。

コロナ禍は個人消費にリーマン・ショック時以上のダメージを与えたが、このGDP成長率数値は消費活動が4月に底入れしたことを示唆している。消費活動指数は3~4月に急落したが、5月に反転している。雨宮氏も講演で<コロナ第2波という不確実性があるが、と断りながら成長率の好転と指数の上昇率が高くなる。>と言明した。

リーマン・ショック時とは違う

加えて、資料(図表6)の「企業金融」を参照にして、CP(無担保約束手形)発行残高、社債発行残高、民間銀行貸出残高のチャートを使って説明し、<今般は、金融システムが安定的に推移しており、リーマン・ショック時とは違う。>と指摘した。

もちろん、実体経済の不振が続くと、先行きは不透明となり、金融面からの下支えが必要となる、と“逃げ”は打っている。それにしても、「躊躇なく追加緩和を講じる」(黒田発言)は、業況判断DI(6月の日銀短観)を見ても(図表2)、底打ち感が出始めているとした雨宮講演できちんと担保されたのだ。

僅かこれだけを見ても分かると思うが、雨宮講演を記事化しなかったことに疑念を抱いた筆者の方がおかしいのだろうか。雨宮氏はこの他にも、企業等への資金繰り支援(総枠約120兆円+α)、金融市場の安定確保(円貨及び外貨を潤沢かつ弾力的に供給=80兆円/年の規制枠を撤廃)、資産市場におけるリスク・プレミアムの抑制(ETF・上場投資信託=J-REIT・不動産投資信託の買い入れ)などについても語った。

いずれにしても、最近の各紙経済・金融面の記事量そのものが減っているし、際立った解説記事が少ないことを憂いているのは筆者だけではないはずだ。

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