警察庁が敢えて入国させたテロ組織「ヒズボラ」メンバーの危ない行動記録 元公安警察官の証言

警察庁が敢えて入国させたテロ組織「ヒズボラ」メンバーの危ない行動記録 元公安警察官の証言

  • デイリー新潮
  • 更新日:2022/09/26

日本の公安警察は、アメリカのCIA(中央情報局)やFBI(連邦捜査局)のように華々しくドラマや映画に登場することもなく、その諜報活動は一般にはほとんど知られていない。警視庁に入庁以後、公安畑を十数年歩き、数年前に退職。昨年9月に『警視庁公安部外事課』(光文社)を出版した勝丸円覚氏に、日本にやって来た“ヒズボラの男”について聞いた。

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公安調査庁HPより

【写真】CIAでスパイを養成した日本人女性教官

2000年代、勝丸氏が外務省に出向し、アフリカのある国の日本大使館に警備担当の外交官として赴任していた時の話である。

「日頃から親しくしていた現地の情報機関の関係者から、テロ組織のヒズボラの協力者が日本へ渡航する計画を立てているという情報が寄せられました」

と語るのは、勝丸氏。

「ヒズボラの協力者はレバノン人で、アフリカのその国に帰化していました。貿易商を営み、かなり裕福な男でした。ヒズボラの信奉者で資金を援助していたそうです」

CIAから情報を入手

シーア派イスラム主義のヒズボラはレバノン内戦中の1982年、イスラエル国防軍に抵抗するために生まれた武装組織である。イランとシリアから支援を受け、反欧米の立場を取り、イスラエルの殲滅を目的にしている。日本や欧州連合、アメリカ、イギリス、オランダ、オーストラリア、カナダ、エジプト、バーレーンからテロ組織に指定されている。

「日本大使館にある渡航ファイルを見ると、その男は過去に2回、日本に入国していました。彼に関する情報をさらに集めることにしました。ただし、この国の閣僚や情報機関、警察の中にはヒズボラにシンパシーを抱いている人がいるので、公的機関の関係者からこれ以上の情報は入手できません」

勝丸氏は、そこで現地のアメリカ大使館に勤務するCIA関係者に接触した。

「彼によると、その男はヒズボラの協力者ではなく、ヒズボラのメンバーだというのです。ヒズボラの拠点であるレバノンに頻繁に渡航していて、貿易の仕事もかなり大掛かりにやっていることがわかりました。日本へ行く目的は、日本にいるパキスタン人の中古車業者と取引をするためでした」

しばらくすると、その男が日本大使館にやってきた。

「領事として、私が応対しました。ビザを申請する際、日本滞在の行程表を提出させます。立ち寄り先と宿泊先を記入させるのです。成田から入国し、1カ月弱のうちに埼玉、群馬、岐阜などを移動し、関空から帰国することになっていました」

勝丸氏は、日本の外務省と警察庁にこの男を入国させて良いかお伺いを立てたという。

「外務省は日本のビジネスのためであれば入国は断れないという立場ですが、最終的には私の判断に任せるということでした。警察庁は、治安維持の立場から入国を断ってくると思ったのですが、『入国させろと』と指示してきました」

パキスタン人のヤード

なぜ警察庁は入国を拒否しなかったのか。

「その男がテロを起こす可能性がないと判断したからです。CIAなどの情報から、きちんと家庭を持ちながらビジネスをしているし、パキスタン人と組んで日本でテロを行うという情報もありませんでした。むしろ、警察庁は、男がどこに寄って誰と会うのか。何をするのか知りたかったんです」

結局、警視庁公安部外事3課の捜査員が男を監視することになった。

「成田空港からずっと尾行したそうです。4、5人でチームを組んで、数チームで尾行、監視を行ったのです。立ち寄り先の県警の外事課にも応援をお願いしたといいます」

男の立ち寄り先には、予定通りパキスタン人が営む中古車会社のヤードがあった。

「ヤードというのは、四方を高い塀で囲った作業場で、そこで中古車を解体して部品を海外へ輸出するのです。男は、行程表に記載した地域のヤードに立ち寄り、商取引を行っていました」

外事3課の捜査員は、何かあった時のために、男が立ち寄ったヤードをすべて調査した。

「男が行程表通りに移動し、関空から帰国した。ですが、数年後、彼が立ち寄った中部地方のヤードが盗難車を扱っていたことが発覚、摘発されました。日本の中古車が、ヒズボラの資金源になっていた可能性もあったのです」

勝丸円覚
1990年代半ばに警視庁に入庁。2000年代初めに公安に配属されてから公安・外事畑を歩む。数年間外国の日本大使館にも勤務した経験を持ち数年前に退職。現在はセキュリティコンサルタントとして国内外で活躍中。「元公安警察 勝丸事務所のHP」https://katsumaru-office.tokyo/

デイリー新潮編集部

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