今や運動靴という枠組みを飛び越え、1つのカルチャーとしても世界中で愛されているスニーカー。その魅力である軽快な履き心地と個性豊かなデザインは、一流の革靴を日々の相棒とする読者諸氏をも魅了してやまない。ここでは“本物”を知る大人の男が選ぶべきスニーカーを提案する。
写真=青木和也 スタイリング=泉敦夫 文=TOMMY 編集=名知正登

2015年に国連サミットで採択されて以来、様々な業界で取り沙汰されるようになったワード「SDGs」。今更ここで語るまでもないが、頭文字のSは“サステナブル(持続可能な)”を意味し、豊かさを追求しながらも地球環境を守ることは、今や世界が目指す共通の目標となっている。そしてこの流れはスニーカー業界においても同様だ。
これまでの大量消費を前提としたビジネスモデルに警鐘を鳴らし、自然由来の素材やリサイクル素材、環境負荷の少ない生産工程や賃金問題など、労働環境にも配慮された生産背景にシフトするブランドが急増し、新たなスタンダードとなっている。その結果、誰もが知る大手スポーツブランドも次々とリサイクル素材を採用したモデルを発表しているのだが、ここではそれ以外でサステナブルをより強く意識したモデルを取り上げる。
かといってデザイン性や機能性において劣るということはなく、むしろ高感度&ハイクオリティ。“あえて”選ぶ価値のあるニュー・スタンダードな5足がこちら。
1. Veja「V-90」

スニーカー¥29,700/ヴェジャ(シードコーポレーション)
レトロな佇まいの定番×クロムフリーレザーの革新性
高校生のときから友人同士だったというフランソワ・ギラン・モリィヨンとセバスチャン・コップが2004年に設立したヴェジャ。ここで取り上げるのはこの秋から新登場する、洗練されたスタイルと履き心地の良さを備えた「V-90」。そのモノ作りは原材料作りから始まる。アッパーには軽く柔らかく、クロムや重金属、有害な酸を使用しない革新的なレザーを採用。さらにアウトソールに含まれるゴムは南米のアマゾン熱帯雨林から採取した天然ゴム、靴ひもはオーガニックコットンと細部まで追求。
しかも、なめしに用いられた水はリサイクルして、水の使用量を削減する工程で生産する徹底ぶり。スッキリしたシルエットのトゥ部分は、パンチング加工を施して通気性も向上。カジュアルさとモダンな雰囲気の融合により、大人の抜け感を演出してくれるに違いない。
2. Allbirds「Riser」

スニーカー¥18,000/オールバーズ(オールバーズ)
洗濯機洗いも可能なブランド初の異素材ミックスモデル
アメリカの『Time』誌が“世界一快適なシューズ”と紹介したことでここ日本でも認知が広がったオールバーズ。デザイナーで元プロサッカー選手のティム・ブラウンが作り出すのは、華美なデザイン要素を排除し、自然素材にこだわった上質なスニーカーだ。
新作の「ライザー」では、オーガニックコットン、テンセル™ リヨセル リップストップ、ZQメリノウールという地球環境にも優しい3つの天然素材でアッパーを構築。これはブランド初の試みでもある。また肌に触れるヒール部分の裏地に柔らかなメリノウールをあしらうことで、心地良く足首をサポート。ミッドソールにスウィートフォーム、アウトソールには天然ゴムを使用し、優れたクッショニングも楽しめる。
3. CLAE「BRADLEY」

スニーカー¥24,200/クレイ(リーガルコーポレーション)
廃棄リンゴから作られた美しくモダンなレザーアッパー
洗練されたデザイン性と快適な履き心地で人気を誇るアイコンモデルのルックスはそのままに、素材を変えることで新たな価値を付加した本作。モデル名が示すようにアッパーには、イタリアのリンゴジュースの生産工場から出る破棄リンゴをアップサイクルすることで生まれた植物性のヴィーガンレザー“アップルスキン”を採用。食品廃棄問題や環境に配慮しながらも、高い耐水・耐久性を実現している。
これにGRS認定のリサイクルメッシュ、レースとPUフォームインソール、GOTS(オーガニックテキスタイル世界基準)認定のオーガニックコットンの裏地、30%の天然ゴムで作られたアウトソールが組み合わされることで、サステナブルを実現しつつも、美しくモダンな一足が完成した。
4. CAMPER「KARST」

スニーカー¥30,800/カンペール(カンペールジャパン)
ユニークなマルチピース使いに秘めた自然環境への配慮
近年、ユニークな意匠のプロダクトで新たなファン層の獲得に成功しているカンペール。石灰岩などの水に溶解しやすい岩石で構成された大地が、雨水・地表水・土壌水・地下水などによって浸食されて出来た地形から名付けられた「カースト」は、自然石の曲線を思わせる厚く丸みを帯びたプロテクティブ・アウトソールが最大の特徴だ。
人間工学に基づいて設計されたラストは足を包み込むようなフィット感で、着用者に快適な履き心地を提供する。その上、バイオベースの成分を30%含む軽量なEVAアウトソール、リサイクルPETのライニングとシューレース、クッション性の高いリサイクルオーソライトインソールなどを使用し、自然環境への配慮までも抜かりない。
5. ekn「POPLAR」

スニーカー¥35,200/エクン(クオリネスト)
テックな意匠とビーガン&リサイクル素材の融合
最後に紹介するのは、“サスティナビリティをクールに世界に伝えることへの情熱”と、エッジの利いたスタイルへのこだわりを背景とする新進気鋭のブランド、エクン。2015年の設立以来、本国ドイツでは高感度のアーティストやミュージシャンから絶大な支持を得ている。
テックウェアとレーシングカーから着想を得たアウトドアモデル「ポプラ」では、ヴィーガンレザーと使用済みペットボトルを原料とするメッシュ素材を採用したアッパーに、信頼のビブラム社製アウトソールを合体。クッション性と完璧なグリップ力で足元から支える。しかもポルトガルの経験豊富な靴職人によるハンドメイド。正しく手入れをすれば、何年でも履くことができる点においてもじつにサステナブルだ。
TOMMY