「YouTubeアニメ」経験者だからこそ、「ウェブトゥーンに勝算あり」と言える納得のワケ

「YouTubeアニメ」経験者だからこそ、「ウェブトゥーンに勝算あり」と言える納得のワケ

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/06/24
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2019年2月に創業し、『女子力高めな獅子原くん』や『でんぢゃらすじーさん』のYouTubeアニメを手がけてきたソラジマは、2021年8月にウェブトゥーンに参入。

また2017年8月に創業し、『テイコウペンギン』『混血のカレコレ』『全力回避フラグちゃん!』など、やはりYouTubeやTikTokでアニメを制作してファンを獲得してきたPlottも2022年中の参入に向けて制作に取り組んでいる。

<【前編】「YouTubeアニメの雄」が、ここにきてウェブトゥーンへを参入を決めたワケ>に引き続き、YouTubeアニメ経験者だからこその戦い方について、両社代表に訊いた。

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Plott公式HPより

企画の精度をいかにして高めるか?

――現状、日本のウェブトゥーン市場はいくつか課題がありますが、ひとつは有望な企画・原作の調達ないし開発におけるスクリーニングです。韓国では誰でも作品を公開できる自由投稿プラットフォームで無数の作品の中から読者に直接評価された作品・作家がフックアップされるか、あるいはやはり何千何万と投稿されるウェブ小説サイトで競争に勝って読者から支持を獲得した作品をスタジオ制作でウェブトゥーン化していることが多い。どちらにしてもテストマーケティングが済んだ人材や企画に投資して大きくしている。一方、日本のウェブトゥーンスタジオはゼロイチで企画から作るケースが少なくなく、ソラジマさん、Plottさんも基本そういう方針ですよね?

ソラジマ共同代表・萩原鼓十郎 われわれはウェブ小説原作もあれば、社内原案もありますし、他社との共同原作開発もやっています。弊社でも小説家以外がウェブトゥーンの原案を作ってヒットさせたケースはすでに出てきていますので、単純に日韓比較できるところではないのかなと。日本はジャンルを問わずクリエイターの層の厚さが圧倒的ですから、そこをウェブトゥーンに活かしていければ韓国式とは違う勝機はあると思っています。

Plott代表取締役・奥野翔太 僕もノベルが原作でないと成功しないという見方には懐疑的ですね。たとえばピクサーは何度も社内で企画やシナリオ、絵コンテなどを作り直しています。たとえ1作しか世の中に出せなくても、10回社内で作り直してから出せば精度は上げられる。僕らはもともとピクサー型の制作を標榜してきましたが、ウェブトゥーンも同じ制作スタイルでチャレンジします。

――もうひとつ、企画のスクリーニングという意味では、ウェブトゥーンには日本のマンガ雑誌のように、読み切りでテストしてから連載を走らせるというリスクヘッジのしくみがありません。LINEマンガやピッコマで配信を望むと最初からそれなりの話数を納品しなければならず、配信されて初めて読者の反応がわかる。そんななかで打率を上げるために、みなさんは作品を世に出す前にどんな工夫をされていますか。

萩原 社内で「この作品はどこがなぜ面白いのか」を一行で説明するというログライン、企画書段階でまず揉み、シナリオでも叩き、ネームはさらに時間をかけてから作画に入っていますね。

奥野 僕らもログライン段階で何度も作り直しています。やはり絵にするとコストが一気に跳ね上がりますから、まずはテキストで入念に詰めてからそのあとの工程に進んでいます。

萩原 書店に納品する話数に関しても、少なくできないかは交渉しています。それから、実は一度配信された作品についても読者の反応を見て内容を描き換えているんですね。

――公開された後に中身を変えている?

萩原 はい。そのあとでプロモーションをかけることで結果も出ています。あとは自社でできることとしては、書店さんの許諾は必要になるでしょうが、公開される前に冒頭の1〜3話をTwitterなりにアップして検証していくのはアリかなと考えています。

奥野 質を担保するためのしくみは、いずれプラットフォームなりコンテンツメイカーなりが誰かしら作ると思っています。結局、大ヒットを産んだもの勝ちで、たとえばにじさんじ(ANYCOLOR)さんのライバー事業にしても、始まったときにあのやり方があそこまでうまくいくなんて誰にもわからなかった。だから各社制約があり、どのやり方が本当にいいのかが見えないなかで「これが正しい」と信じるものに取り組んで、結果を出した人が「正解」になっていく。そういう順番なのかなと。

萩原 現場は執念でやるしかなくて、成功したあとで誰かが分析してくれる。

奥野 日本のコンテンツ業界に勝ち筋は十分あると思いますよ。みんなとんでもなく危機感を持っていて、会う人会う人「世界に行かないといけない」と言いますから。そういう本気の熱量が、最後の最後まで考え切れるか、クリエイティブにこだわれるかに関わってくる。

ウェブトゥーンプラットフォームの外側からの流入も作っていく

――日本のウェブトゥーン市場は作品の認知・販売フェーズにも課題があります。前半でも話がありましたが、現状、ピッコマやLINEマンガなどの書店が外部に打つプロモーション(ウェブ広告、動画広告など)が売上に対する変数として大きい。一方でマンガでは存在するニュースメディアもないし、レビューや紹介記事も少なく、マーケットに影響力のある「このマンガがすごい!」のようなアワードもなければインフルエンサーもなかなかいない。そういう中で「売り方」、プロモーション施策については両社どう考えていますか。

萩原 1つは書店でプッシュされる作品として選ばれるようにまずは結果を出すことですね。それから、書店が広告を作るときに向こうで作る場合とこちらが作ったものを作る場合とがありますが、そこで選ばれる、より売れることにつながるクリエイティブを作れるようにしていく。

2つめは、編集者や作家のインフルエンサーとしてのアカウントパワーを中期的に育てて流入を作り出していくこと。

3つめはひとつのプラットフォームにこだわらず、良い作品ができたらKindleでもなんでもさまざまに展開して入口を増やしていくことですね。

奥野 僕らは「広告」「既存SNS」「作品自体のSNS」の3つで考えています。

「広告」に関しては萩原さんが言うように、プラットフォーマーが「この作品、広告を打ちたいね」と思える作品かどうかが重要ですよね。僕らはYouTubeでも跳ねるためのサムネイルづくりとタイトル付けを死ぬほどやってきていますから、そういうデジタルマーケティングの経験を活かし、売り方を見据えた作品づくりをしています。

「既存SNS」というのは、Plottは各チャンネルの登録者数を合計すると約360万、ユニークユーザー数はもう少し多いですが、その1%でもウェブトゥーンに流入させたい。僕らは個別の作品を好きになってもらうだけでなく「Plottのファン」を作ることを考えて相互送客の実績を作ってきましたから、ウェブトゥーンでもそれを実現したい。

「作品自体のSNS」は、たとえば中国の快看漫画の作品がTikTok運用もしているのと同様のイメージです。

YouTubeアニメではキャラクターを好きになってくれた人がハッシュタグをつけて発信したりファンアートを投稿したりといったことが起きていますが、SNS活用を通じてウェブトゥーンにもそういうカルチャーを持ち込めればと。

映像化以外のメディア展開も仕掛けていく

――これも広い意味での売り方に関わる話ですが、YouTubeやTikTokアニメのノウハウがある会社がウェブトゥーンに取り組むと、両方作れるのは強みですよね。マンガ/ウェブトゥーンが当たったときに次の展開が映像化、ということになると予算もかかるし放映・配信まで時間がかかる。だからその「あいだ」にあるような手段を自社で用意できることは大きい。

萩原 コルクさんがLINEマンガで連載している作品をYouTubeアニメにしていますが、けっこうな再生数が出ていておそらく一定数返ってきていると見ています。また、peepさんは自社のチャット小説をYouTube動画として自前で映像化していますよね。そんなふうにこれまでのテレビや映画での映像化ではないやりかたが今では成立する。われわれもたとえばイケメンキャラが出てくる作品はボイスドラマにするとか、動画に限らずいろいろトライしていきたいと考えています。

奥野 僕らはウェブトゥーンとYouTube、TikTokとを並行してよりライブなコンテンツを提供し、ウェブトゥーンは週1、2回更新だとしても「あ、これTikTokでよく見るやつだ」みたいに親しみやすいキャラクターだと思ってもらえるようにしていくつもりです。

また、Plottは『混血のカレコレ』でTikTokクリエイターのmeiyoさんとコラボをしたり、『全力回避フラグちゃん!』はKADOKAWAさんからラノベを出したりしてきました。自社でできることはもちろん、外部のご協力もいただきながら、作品をずっと楽しんでもらえるしくみづくりに取り組んでいきます。

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――テレビアニメ化が視野に入ってきたら、製作への出資は?

萩原 自分たちが「いける」と信じる作品にはどんどん資金を投じていきたいですし、そうできるよう財務状況を整えていくのが経営者の仕事だと思っています。

奥野 具体的なお話はまだできませんが、映像化は基本的に展開する前提で考えています。今の時代、NetflixをはじめとするVODで配信される映像コンテンツなしで世界を狙うのは難しいですから。早く座組を整え、強いメンバーを拡充していきたいと思っています。

集団制作するプロダクトの人材採用ではカルチャーフィットが最重要

――ウェブトゥーン制作のスタッフを集めていくにあたって、何が大変ですか。

萩原 特定のポジションのクリエイターが集めにくいというよりも、今は僕らも学んでいる段階なんですね。「2打席目、3打席目でホームランを打つために、まず1打席目はマーケットインのやり方でトライする」という考えで作っていますので、「自分が作りたいものをとにかく作りたい!」というタイプの方とは目下のフェーズでは組むのが難しい。他のジャンルでの実績がめちゃくちゃすごい方でも、ウェブトゥーンの文法を理解してもらえずに組めなかったことも正直あります。価値観が合わない人とではフィードバックし合っても空気が悪くなってしまいますから、そこはかなり見ています。

YouTubeアニメ時代からずっと仕事をしている方とはお互い信頼関係があって、ウェブトゥーンでも相性の良さを感じています。コミュニケーションがうまくいく人と長く組むことが、おそらく将来的に効いてくる。

奥野 僕らも重視しているのはカルチャーフィットですね。優れているクリエイターをただ集めればいいものができるわけではないですから。社内ではPlottのやり方を「分かち合い」と言っていますが、ボトムアップでもトップダウンでもない共創型の作り方を楽しいと思える人かどうか。

あとは僕が感じているのは、本当に心から「大ヒット作を作りたい!」と思っている人とは出会いづらい、ということです。たとえば、本気で大ヒットを作りたいなら全体を俯瞰して自分のこだわりのパーセンテージを下げることも厭わないだろうと思うのですが、そこまで視座が高い人に出会うのは難しい。しかし価値観がマッチした人が長くいる組織の方が再現性は高くなると思っていますから、妥協せず「天才が集まってシナジーを生む組織」を目指しています。

萩原 僕らは編集者も未経験者を積極的に採用していますが、それはマンガ編集者に憧れがあったけれども新卒では出版業界に入れなかったから見返してやろう、新しいことにトライして逆転してやる、みたいなパワーを持つ人を期待してのことです。実際そういう人が集まってきています。

――最後に、改めて意気込みをお願いします。

萩原 ウェブトゥーン事業の勝ち筋は100社100通りあると思いますが、われわれはその中で自分たちに合うものをやるだけだなと思っています。今年来年で約30本出して一周目を回しますが、たとえ29打席ダメでも、ビビって30打席目で「制作費を下げよう」なんてことをやり始めると負けると思っています。恐れず打席に立ち続け、中長期的にはホームランを必ず打ちます。

奥野 僕らは「とりあえず最低限リクープをめざす」ということはまったく考えていません。トップオブトップで売れた作品と二番手三番手以降では収益的にも知名度でも大きな差が出ますから、圧倒的な一番を目指した作品づくりをやりきります。いろいろなジャンルの作品の歴史を見ても、作品史に名前が残るものには何かしらチャレンジがある。だからPlottも大ヒットするか大コケするかという攻めた作品で勝負します。楽しみにしていてください。

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ソラジマのウェブトゥーンはこちらから読めます/https://sorajima.jp/

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