面会や手紙で「ヘイト」否定も 京都・ウトロ放火被告、記者に語ったことは

面会や手紙で「ヘイト」否定も 京都・ウトロ放火被告、記者に語ったことは

  • 京都新聞
  • 更新日:2022/05/14
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被告が面会で京都新聞社の取材に応じた京都拘置所(京都市伏見区)

京都府宇治市ウトロ地区の空き家など建物7棟が焼けた事件で、非現住建造物等放火などの罪で起訴された無職の男(22)=奈良県=が、16日の初公判を前に、京都拘置所で京都新聞社の取材に応じた。男は面会や手紙で、放火は地区の在日コリアンに対する抗議だと説明し、「差別意識には基づかず、ヘイトクライムとは異なる」と持論を展開した。しかし、専門家は「差別感情を元にした典型的なヘイトクライム」と指摘する。

【記事には、在日コリアンを対象にした民族差別に該当する文言が複数登場します。京都新聞社は、差別の実態を共有するため文言をそのまま報道します。あらゆる憎悪犯罪や憎悪表現を許さない社会をつくる一助とする目的です。】

■きっかけはヤフコメ

男によると、犯行を思いついたのは、事件の10日ほど前。地区の歴史を伝えて多文化共生を目指す「ウトロ平和祈念館」が開館予定という記事を、ヤフーニュースで読んだことだった。

記事のコメント欄に「なぜこういう施設ができるのか」「なぜ日本にこういう人たちがいるのか。日本から出て行け」といった書き込みがあり、賛同を示す「いいね」の反応が数千件ついていたといい、「事件を起こす上で指標の一つとなった」と話す。そこから男は3~4日かけ、ネットでウトロ地区の記事を読んだり、ユーチューブで歴史背景を学んだりして、「ウトロは不法占拠」という考えに至った。

■犯罪だと認識も「在日コリアンに恐怖与えるため」

ウトロ地区を巡っては、過去に土地の明け渡しを求めて所有企業が提訴し、最高裁は住民の立ち退きを命じたが、その後、支援者や韓国政府の出資を得た財団が地区の約3分の1の土地を購入。国や府、宇治市が住環境改善事業を進め、新たな住まいとして市営住宅1期棟が完成している。

しかし、男は、この訴訟中に地区に設置された「立ち退き反対」などの看板が、祈念館に展示されることに問題を覚えるようになった。「展示は、過去の経緯の正当化ととられて当然。不快感を抱く人は何千、何万もいる」として、放火によって抗議の意思を示すことにしたという。

抗議するならスピーチや文書など別の手段があったのではと問うと、言葉による発信では知名度や信頼が求められることから「(発言の内容が)広がるか疑問。賛同者を得るにも時間がかかる」と答えた。さらに、放火を選んだ理由について「犯罪という認識はあったが、何が問題かと言うことを人々に瞬時に判断してもらうため」「展示品を使用できなくすれば、関係者が対応を迫られると考えた」と説明。「在日コリアンに恐怖感を与えることを意識した」と述べた。

■ヘイトクライムには当たらないと主張

男は「ウトロは住民の態度も問題」と語るが、在日コリアンと関わったり、直接話したりした経験はないという。差別意識や偏見に基づき、特定の属性の集団や個人を攻撃することを指すヘイトクライム。今回の事件にそうした指摘があることに対して、「弱い立場の人たちを一方的に差別する行為がヘイトクライム。例えば、若者差別、障害者差別、黒人差別」と持論を述べた上で、「(ウトロは)韓国政府の支援で住居が与えられ、経済的にも社会的にも弱者ではない。ヘイトクライムとは異なる」と強弁した。

■退職で「失うものはない状態だった」

個人的な事情ものぞかせた。2021年4~7月、奈良県内の病院で正職員の試用期間中に退職し、無職となったという。

「コロナで、私を含め、若者の就職が困難となった。自分が、事件を決意するに至ったことと関係があるかというと否定できない」とする。さらに、「もしも仕事をしていたら、仮に犯行を考えても、思いとどまったかも。だが当時は、自分の立場を見たときに、失うものがない状態だった」と話した。

放火は「社会に対するメッセージ」と、独善的な思考をのぞかせる男。自らの行為が社会的に与えた影響について、「そこまで世の中が変わったとは思わないが、人の考え方が変わる一つのきっかけに働いた部分はあるかなとは思っている」と淡々と話した。

◇    ◇

■専門家「在日コリアンを攻撃したい結論ありき」

事件を巡る男の発言や行動を、朝鮮近現代史や外国人差別問題に詳しい同志社大の板垣竜太教授に分析してもらった。

板垣教授は、男が語った事件の動機や、在日コリアンへの認識などについて「根拠が乏しく、(在日コリアンを)攻撃したいという結論ありきにみえる」と指摘。放火を「政治的主張」とする男の姿勢について、「自分の話に聞く耳を持ってもらうため、『在日コリアンへの抗議』を口実としたのでは。住まいを燃やされた側への想像力が欠如している」と批判した。

■都合のいい事実のつまみ食いと、明瞭な差別意識

板垣教授は、ウトロ地区で市営住宅が新設されるなど、国際的な連携で課題解決に向けた動きが進んでいる現状を踏まえた上で、男が問題視する「不法占拠」や「住民は弱者ではない」との見方を、「自分にとって都合のいい事実のつまみ食いだ。住まいや就職で差別され続け、ウトロにしか住む場所がなかったマイノリティーの歴史的な実態も踏まえていない」と批判する。

また、男が「在日コリアンに恐怖感を与えることを意識して放火をした」と明言をしたことについては、「他の在日コリアンにも同じ事ができる、というメッセージとも取れる」と懸念し、「はっきりした差別意識が見て取れる」と断言した。

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