【シャーマンキング30周年への情熱(51)】恐山の戦いでぶつかり合った「強い思い」の正体

【シャーマンキング30周年への情熱(51)】恐山の戦いでぶつかり合った「強い思い」の正体

  • マグミクス
  • 更新日:2021/11/25
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「恐山ル・ヴォワール」編を通して、葉の価値観の原点も明らかになっていく。アニメ『シャーマンキング』33話より (C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京

マタムネが伝え、葉とアンナが胸に刻んだ「愛」とは?

2021年11月25日(木)放送のTVアニメ『シャーマンキング』第33話。今回で「恐山ル・ヴォワール」編も終了となりました。次回からまた本編に戻って話が続きますが、しばらくは余韻に浸っていたい気持ちですね……。

【画像】荒ぶる大鬼、止まらぬ涙…「恐山ル・ヴォワール」編のクライマックス(6枚)

振り返ってみると、マタムネが最期に語った言葉のなかに、とても趣深いものがありました。要約すれば「相手がどうかではない、見返りも期待しない、信じると決めたら信じる自分の気持ち、それが愛である」というものですが、これが「自分の進むべき道は心で決める」ことの本質だというのです。

つまり、葉のなかに芽生えたアンナへの「愛」と、それを受けてアンナが気付いた葉への「愛」とは、何があっても信じ抜くことであり、この出来事をきっかけに余計なものに惑わされず、そうすることがふたりの生き方になった……そう解釈できるのではないでしょうか。

アンナがあれだけ葉に一途なのも、葉がなんだかんだ言いながらアンナの厳しさを丸々受け入れるのも、すべてこの「愛」によるものなんですね! そして葉は、誰に対しても見返りを期待せずに、まずは信じます。それが自分にマイナスをもたらしても恨みません。全然ブレていません。相手の言動で評価を変えるわけではないから、冷静に相手にも言い分があることを受け入れられます。

『シャーマンキング』という作品が分かりやすいヒーローものになっていないのは、葉の根底にこの「愛」があるからだということに気づかされるエピソードでした。

一方で設定面から見ると、恐山での戦いは例外中の例外どうしの熱い激突でした。大鬼の正体は恐山に散らばる1080個の数珠で、アンナの強いウラミの念が無数の鬼となってそこに宿り、膨大な巫力によってオーバーソウルしたものでした。大鬼の服装は原作とは違うのですが、これは「原色魂図鑑」(講談社)に準拠したからです。

マタムネは1000年前からのオーバーソウルで、霊なのに自分でもオーバーソウルを使う存在です。その原動力となる麻倉葉王の巫力は凄まじく、多少減ったぐらいでは休めば回復できるような描写もありました。このあたりについて順番に考察してみたいと思います。まずはマタムネについてです。

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恐山で葉たちを待ち構える大鬼。『シャーマンキング』33話より (C)武井宏之・講談社/SHAMAN KING Project.・テレビ東京

「恐山ル・ヴォワール」編の随所に込められた「強い想い」

劇中ではマタムネもオーバーソウルを使うと説明されているのですが、筆者は、正確には「オーバーソウルらしきもの」だと考えています。

というのも、マタムネが媒介とするキセルは実体ではないし、持霊がいないので何を刀に入れているのか不明だからです。描写から推測すると「霊体のキセルに、自分自身の一部を押し込め、巫力を流してオーバーソウルする」ようです。これはオーバーソウルと原理は同じですが、そのものではありません。筆者は、これは御霊神となったマタムネが葉王や都を守るために身につけた技で、葉王から教えられた、もしくは真似たのではないかと推測しています。葉王に対する強い想いを感じます。

そして彼の本当のオーバーソウルは、「憑依合体!!! さらばマタムネ!!!」で見せた巨大な刀、「鬼殺し」です。考えてみるとこれも凄い技で、この時の葉はまだまだオーバーソウルを使えるようなシャーマンではなかったので、憑依合体も、熊のツメの飾りへのオーバーソウルも、巫力コントロールも、全部彼ひとりでやったと解釈できます。この一世一代の大技を成功させられたのは、ひとえに普段から「キセルを使ったオーバーソウルらしきもの」を使ってきたからでしょう。ここでは葉とアンナを救いたいという強い想いがうかがえます。

次に大鬼ですが、これはアンナの存在は当然として、恐山という特殊な地域性が生み出したものだと考えられます。前回の記事で、「ぐまくら」を破壊した鬼は恐らくオーバーソウルではないと書きましたが、それは媒介がなかったからです。鬼という霊がいて、アンナの巫力もある、しかし霊を入れる媒介がない……それで生まれた鬼が店を破壊したのですから、特殊な事例だと思います。

では大鬼はどうかというと、数珠という媒介、鬼という霊、アンナの巫力……条件は揃っています。ところが今度は、アンナから離れすぎています。これは多くの霊が集まる恐山だったからこそ、アンナのウラミが生んだ鬼がそこに集中し、オーバーソウルできたのではないかと考えられます。マイナス感情ではありますが、これもまたアンナの強い想いによるものです。

夜の雪景色の美しさが繊細な彩りを添えていた「恐山ル・ヴォワール」編ですが、こうして見ると、共通するものは「強い想い」のように思えるのでした。

このお知らせも最後になりますが……本連載では、「恐山ル・ヴォワール」編の舞台となった青森市~恐山を取材したレポートを2020年末に掲載しています(第19回~22回)。こちらもあわせてぜひ! ご覧いただければと思います。それでは今回はこの辺で。また次回よろしくお願いします!

●タシロハヤト
美少女ゲームブランド「age(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。

(タシロハヤト)

タシロハヤト

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