社説[性的少数者差別も禁止]条例を人権守る一歩に

  • 沖縄タイムス+プラス
  • 更新日:2023/01/25

学生5人で始めたオンライン署名が、県を動かした。

県が制定を進める「差別のない人権尊重社会づくり条例」案で、性的指向、性自認を理由にした差別的取り扱いが禁止される見通しになった。

「LGBTQ+だけを軽く扱うのをやめてください」と訴えた琉球大学法科大学院の学生の呼びかけは、交流サイトで拡散。人権条例の骨子案へのパブリックコメント(意見募集)が締め切られる1月6日までのわずか5日間で1万3927筆が集まった。

県が昨年12月に公表した骨子案は「人種、国籍、信条、性別、社会的身分その他の事由」を理由にした差別的取り扱いを禁止。性的指向と性自認は含まれていなかった。

また、外国ルーツの人々に対する差別的言動の「解消に向けた取り組み」をうたう一方、性の多様性は「理解の増進」にとどまる。署名は性的少数者に対する差別的言動も同様に規定することを求めた。

署名には、当事者から「強く賛同します」という声も寄せられたという。体の性と自らが認識する性が一致しなかったり、同性に恋愛感情を抱いたりする性的少数者への理解は、少しずつ広がっているとはいえ、生きづらさに悩む当事者は、少なくない。

県の担当課長は「参考にして、思いに応えられるよう条例案を作成したい」と前向きな姿勢を示す。

2022年度中を目指す条例制定に向けての差別的言動の規定や、解消に向けた具体的な施策が課題となる。

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玉城デニー知事は、21年3月、性の多様性尊重宣言を発表した。多様な性のありようを人権として尊重して、誰もが自分らしく幸せに生きられる沖縄を目指す。

ただ、宣言は「多様な性を理由とする偏見・差別やあらゆる種類の暴力を許さない」などと抽象的で、具体的な行為は示されていない。

三重県は、性的指向や性自認を第三者に暴露する「アウティング」と、カミングアウトの強制を「してはならない」と明示し、禁止する条例を21年4月、全国に先駆けて施行した。自治体や教育者、県民、事業者それぞれに役割を定める。研修や人権教育、職場環境の措置などを通じて、性の多様性に関して理解を深め、地域社会全体で取り組むとしている。

県は人権条例案の中で対応を進めているが、パートナーシップ制度を含めて、多様性の尊重を図る包括的な条例制定も今後の課題だ。

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人権条例案に対する懸念は他にもある。外国ルーツの人々に対するヘイトスピーチでは、県が発言者の氏名公表やネット上の拡散防止措置を講じるとする一方、県民に対しては、こうした対処はなく、救済は難しい。いずれの属性でも罰則がないため、実効性に欠けるという指摘も多い。

沖縄の人々、性的少数者への差別をなくすためには、もう一歩踏み込んだ対応が求められる。

県には、寄せられた意見を踏まえ、全ての人の人権が尊重される差別のない社会をつくるという趣旨に沿った先進的な条例の作成を求めたい。

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