日本式の丁稚奉公が、世界で見直されている深すぎるワケ

日本式の丁稚奉公が、世界で見直されている深すぎるワケ

  • JBpress
  • 更新日:2021/02/21
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AIでさまざまな作業を自動化し、より高度な仕事が生まれ人間に要求されるスキルも高くなります。その中で日本式の丁稚奉公が、世界でいま見直されている――そう指摘するのは、元国連職員でイギリス在住の谷本真由美氏だ。

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テレワーク先進国の実態

日本では新型コロナの感染者数が増えたため、テレワークや在宅勤務がグッと増えました。

しかしながらアメリカや欧州では、もう20年以上前から導入している企業も少なくありません。その理由は、就労環境を自由に選択できるよう多様的に整えたほうが従業員の生産性が上がるからです。

特に知識産業ではスキルがある人の取り合いになっているので、多様性かつ柔軟性のある快適な就労環境を用意することは良い人材を獲得するためにも必須です。

シリコンバレーの大手企業に就職した私の大学院の同級生は、1999年に就職した初日から在宅勤務です。上司も同僚も、誰も会社に来ないのです。

別の日本人の友人は、アメリカ系の外資系企業に勤務していますが、やはり新卒で就職した当初からテレワークでの就労方式です。上司や同僚は世界各地にいるため、何年も顔を合わせることがありませんでした。

このように、ずいぶん前からテレワークが進んでいるというイメージの強いアメリカですが、調査会社のピュー研究所が2019年に実施した調査によれば、現在、テレワークの制度を設けている民間企業は全体のたった7%です。つまり、テレワークできる企業はマイノリティなのです。

なぜ、テレワーク先進国であるアメリカで、すでに多くの企業が「テレワーク離れ」をしているのでしょうか。これについてはさまざまな意見がありますが、テレワークは個人で自己完結する仕事には向いているけれど、他者と協調しつつチームで働く業務に向いていないからだという説が目立ちます。

テレワークできる職業は高収入

しかしその一方、「テレワークできる職業かどうか」は、収入の大小に大きく影響しています。アメリカで高収入の上位10%は、25%がテレワーキング可能です。

ところが、収入が下がるにつれてその割合は低くなり、下位25%だとたった1%です。高収入の25%の人の職業は金融、経営、ITで、上位10%の時給は48.28ドル(1ドル106円として約5100円)以上。

テレワークが可能な業種は保険の32%がもっとも高く、ついで専門職と技術職(法律事務所、広告代理店等)の29%、情報の16%。もっとも低いのは小売で1%です。

すなわちテレワークができる職業は限られており、そうした職業はおしなべて高収入である、ということです。現在は新型コロナ対策もあって、この数値も変化しているかもしれません。とはいえテレワークが可能な業種には、さほど変化は起きていないでしょう。

AI時代の本格的幕開け

コロナ禍により、日本でもテレワークが推進されています。まさにAI時代の本格的な幕開けを感じている人も多いことでしょう。

それと同時に、AI時代の到来によりサラリーマンの仕事がなくなることを恐れている人が激増しています。「AIに仕事を奪われないため、今のうち、どんなスキルを身につけたらよいか」と気にしている人も多いようです。

ところが研究者のなかには「AI時代はさまざまな仕事が高度化しているため、人手が余るどころか、十分な訓練を受けた人が足りなくなるだろう」と指摘する人もいます。

AIが導入され、自動化された工程が多い工場では、人間は機械やコンピュータの使用方法だけではなく、かなり複雑なサプライチェーンの仕組みや管理方法、設計などを学ばなければなりません。

AIでさまざまな作業を自動化するからこそ、より高度な仕事が生まれ、人間に要求されるスキルも高くなるのです。こういった高度なスキルは、大学や高校での勉強だけでは身につきません。業務の変化が早く、学校の教育内容が産業界で必要とされるスキルに追いつかないためです。

そこで現在、アメリカや欧州では40年ほど前まで盛んだったアプレンティスシップが見直されています。

AI時代の丁稚奉公

アプレンティスシップとは、働いて給料をもらいながら勉強する仕組みで、日本の丁稚奉公に近いものです。丁稚奉公と違うのは、学ぶ内容がより高度で、知識産業に最適化された形態であるということです。

たとえばスイスのZurich InsuranceやUBS、Mercuriaは、長年スイス国内でアプレンティスシッププログラムを行っています。これは若い人を対象とし、働きながら仕事で必要なスキルを身につけてもらう仕組みです。

このようなアプレンティスシップの効果は非常に高く、職場ですぐに役立つスキルを身につけられるため、とりわけ知識産業やハイテク産業では重宝されます。

アプレンティスシッププログラムは、言葉を変えれば、「修行」です。これはホワイトカラーワーカーに限ったことではなく、職人やスポーツ選手も同様です。職人は、長い時間を費やして特定の動作を繰り返します。

道具の置き場所や寿司の握り方を理屈ではなく、体で覚えるためです。考えなくても体が自然に動けるようにすることで、最適な作業の方法を覚えるのです。スポーツ選手が何回も同じフォームを繰り返すのも同様です。「こういった修行は非効率であり、意味がない」という意見の人もいます。

ところが、2018年と2019年にフランスのリヨン第一大学のルーク・ミラーさんらが行った研究によれば、人間の脳の皮膚感覚を司る部位は、手に持った道具を自分の体の一部のように感じることができるというのです。

ならば、何回も繰り返して道具を触ったり、単純な訓練を繰り返したりすることで、道具をさらに上手に使うこともできるのではないでしょうか。

日本式の丁稚奉公が、世界でいま見直されている──こうした事実は、「苦労を嫌い、ラクが大好き」という日本の若い人たちにこそ、知ってほしいものです。

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