ダイナミックな成長を実現させるヤマハ発動機のDX

ダイナミックな成長を実現させるヤマハ発動機のDX

  • JBpress
  • 更新日:2021/06/11
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※本コンテンツは、2021年4月23日に開催されたJBpress主催「第2回ものづくりイノベーション」の特別講演Ⅰ「ヤマハ発動機におけるDXの取組み」の内容を採録したものです。

ヤマハ発動機株式会社
執行役員IT本部長
山田 典男氏

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個別最適が足かせに。IT基盤の全体最適化に向けて

「感動創造企業 世界の人々に新たな感動と豊かな生活を提供する」を企業目的とするヤマハ発動機は近年、ブランドスローガン「Revs your Heart(レヴズ ユア ハート)」を掲げ、エンジンの回転を上げるように、顧客の心が躍る瞬間を提供するための変革を進めている。

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連結売上高の6割超をモーターサイクル、四輪バギー、電動アシスト自転車など「ランドモビリティ」が占めており、その後にマリン関連製品、ロボティクス、金融サービス、その他事業が続く。国内ビジネスは連結売上高の10%程度。アジア・北米・欧州などの海外売上比率が高いことも同社の大きな特色だ。

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ヤマハ発動機は近年DXに乗り出し、その取り組みは、経済産業省「DX銘柄2020」に選定されるなど評価されている。DX推進に至った理由について、同社IT本部長の山田典男氏は背景にあった課題意識から説明する。

2010年代以前における同社のビジネスモデルとビジネスプロセスは、「地産地消・大量生産型」だった。完成車部品輸出をはじめとするハブアンドスポーク方式(中心拠点に貨物を集約させて拠点に仕分ける方式)が採られ、意思決定要件は拠点最適・拠点別需給調整。それを支えるIT基盤には、拠点・プロセスに最適化された内製のスクラッチシステムを個別に導入していた。

ところが2010年代、完成車・部品相互調達をはじめとする「グローバルサプライチェーン・多種少量型」にかじを切り、それに伴い意思決定要件も連結最適・連結需給調整へ移行。個別最適にフィットする旧来のIT基盤が“足かせ”となってしまった。

「近年巻き起こっているデジタル化・パーソナライズ化・ライフタイム化、そしてモノ+サービス化といった新たな潮流の中、より機動的かつ事業横断的な経営判断をするために、会社横断的指標の必要性やニーズ変化への迅速な対応が問われています。そこで、IT基盤の全体最適に向けたデジタル革新に取り組んでいくこととなりました」

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最新IT導入は“魔法のつえ”にあらず

同社のDXのスタート当時の合言葉は「新たな領域に踏み出すそう」だった。

山田氏らは「2016-2018 IT中期計画」を策定し、その中では「次中期の事業を支援していくため、ITとしても新たな技術を適用し、最初は正解が分からないテーマ/領域に取り組んでいく必要がある」「そのためには従来型とは別の新たなアプローチも必要である」と明確に宣言された。

また、その具体的な方策として「①デジタル・キーテクノロジーの把握、社内外パートナーシップ活用」「②ソーシャル、ビジネス、IoT、3つのネットワークをつないだバリューチェーン最適化に向けた企画・推進、情報共有、啓蒙活動(経営・事業部門の合議体をIT視点からファシリテート)」「③デジタル活用の基盤・サービス提供(内部・外部のパートナーシップやサービスを適切に活用)」「④新たなデジタルの仕組みと基幹システムを確実に接続・統合」を掲げ、2016年8月にはIT部門の中にデジタル戦略グループを新設。全社横断のデジタル戦略コミッティも立ち上げ、ボトムアップ型でプロジェクトは始動した。

このDXプロジェクトはやがて経営陣を巻き込んだトップダウン型へシフトしていくが、その際のキーマンはインテルからヤマハ発動機にやって来た同社唯一のコーポレートフェローの平野浩介氏だった。平野氏のアプローチは以下の考えのもとで進められ、山田氏は「そのかいがあり、当初から経営陣の“目線”をそろえることができた」と言う。

●経営・ビジネスの在り方を十分な時間を使ってディスカッションする(目的意識を合わせる)
●経営課題・戦略に対しデジタル・ITが成し得るインパクトを共有する
●「ITはコスト」から「ITは投資」へ(リターンを説明)
●スタートアップにはない資産を活用

「これに加えてもう一つ重要だった視点は『DXの目的は何か』ということでした。こうしたプロジェクトにおいては、日々さまざまなデジタルテクノロジーが現れ、経営陣・社内ともその期待の大きさから、最新IT導入を『魔法のつえ』のように思い、時として“(一時だけの)バズワード化”しがちです。

しかし、われわれの目的はIT導入ではなく、あくまで先に来るビジネスの成長であり、経営課題の解決。そして長期ビジョン“ART for Human Possibilities”の実現でした。その後に想定されるビジネス変化を十分に見据えた上で、『今のビジネス』と『新たなビジネス』とを照らし合わせながら、今後求められるITシステムの要件を想定し、成長戦略に向けたデジタル・IT戦略を設計・検討しました」

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エンタープライズ領域とデジタル領域の両輪でIT基盤整備

ここまでの議論を重ね、ヤマハ発動機のDXはデザイン・実装段階へと移行した。同社が「エンタープライズ領域とデジタル領域の両輪で行っている」というIT基盤整備の方向性は、次のようなものだった。

●エンタープライズ領域
業務拠点において業務プロセスごとにサイロ化していたシステムとデータを、ERPを適用して標準化。それとともに、ビジネストランザクションと会計をひも付け、データを一元化・可視化。各拠点の会計・ビジネスデータを「基幹系グローバル統合データベース」に集め、経営判断、事業遂行のインフラを構築。構築に当たっては(ビジネス上の)ものさし、ルール・制度を合わせたデータインフラとした。

●デジタル領域
コネクティッドビークル、デジタルマーケティング/SNS、スマート工場といった新たな取り組みを進めると同時に、それらデジタルデータ活用の基盤として、デジタルデータ蓄積・分析基盤を構築している。
「エンタープライズ領域とデジタル領域、2つの基盤にデータ統合・活用することで、経営・事業においては迅速な意思決定、データ分析とフィードバックが可能になり、他方、業務部門・現場においても迅速な業務オペレーションや改善活動、データ分析とフィードバック、お客さまへの新たなサービス・価値提供が可能になります」

3つの取り組みで実現する「ヤマハ発動機ならでは」のDX

ヤマハ発動機のDXの全体像を整理すると、以下3つの取り組みになる。

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●Y-DX1:「経営基盤改革」による予知型経営の実現
ヤマハ発動機のマネジメント基盤を刷新。「①徹底的な『見える化』と『一元化』により意思決定をスピードアップ」「②“間接業務”を効率化し、リソースを成長領域にシフト」「③“新しい情報”を活用して『お客様を見える化』し、予知型経営を実現」の3つの目的を実現する。

●Y-DX2:「今を強くする」による既存事業の競争力強化
デジタルマーケティング、コネクテッド、スマートオペレーション、データ分析というデジタル重点4領域の取り組みで、お客さまに新たな感動を提供していく。中でもコネクテッドの取り組みとしては、インドネシア市場で展開するコネクテッドモーターサイクル「NMAX」と「Y-Connect」アプリを開発。その他コロナ禍では、インド市場向けにバーチャルストアもローンチしている。

●Y-DX3:「未来を創る」により新たなお客さまとつながり、継続的イノベーションサイクルを創出
従来の延長線上にないチャネルやコラボレーションで、新たなお客さまとつながる。新たな気付きやシナジーを得て、新たな価値・新たな未来を創造。また社内における継続的イノベーションサイクルを構築し、ヤマハ発動機らしい発想でチャレンジしていく。
「これら3つのDX実行に向け、今後も成長戦略投資・基盤投資を行うとともに、コストダウン、キャッシュ創出、リソースシフト、売り上げ・利益増、シェアアップ、そして継続的成長を実現していきます」

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山田 典男(ヤマハ発動機 執行役員IT本部長)

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