化石を見つけたいなら地層がむき出しの「崖」を探そう

化石を見つけたいなら地層がむき出しの「崖」を探そう

  • WANI BOOKS NewsCrunch
  • 更新日:2020/11/26
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自然科学系の博物館において、メインとして扱われることの多い化石。博物館に展示されるぐらいだから、発掘には途方もない作業が必要になることは容易に想像できるが、実際にはどのようにして予測し、掘り当てているのだろうか。サイエンスライターの土屋健氏が、その過程のごく一部を紹介する。

※本記事は、土屋健:著/ロバート・ジェンキンズ:監修/ツク之助:イラスト『化石の探偵術』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

自宅の庭を掘れば化石が出てくる?

たとえば、あなたの家の庭を掘ったとしよう。庭から恐竜の化石が出るだろうか。

残念ながら、日本において「家の庭から恐竜化石がみつかる可能性」は極めて低い。日本の宅地のほとんどは造成された人工のものであるし、仮に造成された土地ではなくても、日本における恐竜の化石がみつかる地層がある地域は、かなり限られているからだ。

では、仮に三葉虫の化石がみつかる地層があったとしよう。その地層をくまなく探せば、恐竜化石がみつかるのだろうか。

こちらも、否だ。

三葉虫は、古生代の生物。その化石があるということは、地層は古生代のものだ。一方、恐竜は中生代の生物である。古生代の地層から、中生代の生物の化石はみつからない。恐竜化石を探すには、中生代の地層を探す必要がある。

恐竜の化石がみつかる地層があったとしよう。その地層を探せば、同じ中生代の生物であるアンモナイトの化石はみつかるのか。

これも、その可能性は低いといえる。

恐竜は陸の生物だ。……ということは、その地層は陸でできたものだ。一方、アンモナイトは海の生物である。陸でつくられた地層からアンモナイトの化石はみつからない。

ただし、海の地層から陸の生物である恐竜の化石がみつかることはある。それは海に恐竜が生息していたわけではなく、陸から海へ流されてきた遺骸が海底に沈んで化石になった例があるからだ。

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▲自宅の庭を掘れば化石が出てくる? イメージ:PIXTA

あなたの足の下にある地層が、いつ・いかなる場所でつくられたのか? その情報を示す“特殊な地図”が「地質図」だ。

地質図は、研究者や技術者が各地を歩き、調べ、そしてまとめた研究成果であり、“特定の時代”の“特定の環境”に生きていた生物の化石を探すことにおいて、まさに「宝の地図」であるといえる。

つまり、地質図がなければ化石を探せない。精度の高い地質図があれば、自分の足下の地層が、いつ、どこで、つくられたものなのかを知ることができる。

なお、産業技術総合研究所地質調査総合センターが運営するウェブサイト「地質図Navi」では、50万分の1、20万分の1、7.5万分の1、5万分の1などの各種の日本の地質図が無料公開されている。自分の家の周辺を調べてみると意外な発見があるかもしれない。

〇地質図Navi(https://gbank.gsj.jp/geonavi/)

地質図Navi ―産総研の地質図表示システム―

「地質図Navi」は、地質図など様々な国内の地質情報を閲覧することのできる高速地質図表示システムです。[産業技術総合研究所 地質調査総合センター]

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狙い目は地層がむき出しになっている沢や川

多くの地質図は「地形図」をベースにつくられている。したがって、地質図を解読するためには、地形図を読み解く能力も必要となる。

地形図は、現実世界における3次元の地形情報を、2次元の紙の上にまとめた地図だ。地形図において“マイナス1次元”の役割を担うのは「等高線」という線。文字通り高さが等しい場所を結んだ線だ。

日本における最も基本的な地形図の縮尺は、2万5000分の1である。この縮尺は、現実世界における250メートルが1センチメートルで描かれていることを意味している。およそ10両編成の新幹線が、あなたの親指の爪の幅よりも短く描かれている……と考えれば、そのスケール感が伝わるだろうか。なお、この2万5000分の1地形図における等高線は、高さ10メートル間隔が基準である。

化石を、というよりは、化石が含まれている可能性がある地層を探すときには、等高線と等高線の間隔が狭い場所で、そして、沢や川沿いを狙うことが多い。等高線の間隔が狭いということは、その場所が急角度の地形(たとえば、崖など)になっていることを示している。

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▲狙い目は地層がむき出しになっている沢や川 イメージ:PIXTA

とくに日本における土地の大部分は、土壌に覆われている。土壌は一般的には「土」と呼ばれるものだ。土は有機物などの栄養分と水分をよく含み、植物が根をはるもので、基本的に土壌には化石は含まれない。そもそも地層はその土壌の下にある。「地層」と「土」は別物なのだ。

沢や川では、その岸と底が水の流れで削られている。そのため、土壌の下にある地層がむき出しになっていることが多い。地層がむき出しの崖こそ、化石を探しやすい場所なのだ。だから、地形図において沢や川沿いにあり、等高線の間隔の狭い場所がまず狙い目となる。

土屋 健

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