何が変わる? アップル、次期iOSにアプリの不正トラッキング防止を導入

何が変わる? アップル、次期iOSにアプリの不正トラッキング防止を導入

  • ASCII.jp
  • 更新日:2021/04/07
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アップルが次期OSでユーザーのプライバシー保護を目的とした、アプリの開発環境の変更を含むアップデートを実施する

アップルが次期iOS 14.5、およびiPadOS 14.5、tvOS 14.5以降から、デバイスを利用するユーザーのプライバシー保護を目的とする機能を強化する。今後アプリの開発者(デベロッパー)は、アップルが提供する新しいフレームワークである「App Tracking Transparency」に則る形でユーザーの許可を得ることによって初めて、Web上での行動をトラッキングしたり、個人情報にアクセスしてターゲット広告を表示できるようになる。

スマートフォンのユーザーであれば、おそらく誰でも新しいアプリをインストール後、最初に起動した時に位置情報などアクティビティ情報のトラッキング許可を求めるメッセージに遭遇したことがあるのではないだろうか。アプリの中にはユーザーの端末に記録・収集された行動履歴を参照して、自分のアプリの中でターゲット広告を表示したり、ほかのデベロッパーにより開発されたアプリと連係しながらユーザーを繰り返しターゲッティングすることを目的としてトラッキングを利用するものがある。

アップルによると、このトラッキングの仕組みを利用して、過去10年の間に“大きく不透明な業界”が生まれ、ユーザーの許可を得ることなく搾取した個人情報をから約2270億ドル(約24兆円)にもおよぶ利益が生まれている現状があるという。アップルが次期OSに新しいプライバシー機能を搭載する背景には、App Storeに公開されるアプリによるユーザーの個人情報の利用についてさらに透明性を高める狙いがある。

アップルは、ユーザーが自身の手でデータの扱われ方をコントロールできる仕組みがあることが大切だと説明している。

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iOS 14以降、App Storeにはアプリのページ単位でプライバシーラベルが表示され、インストール後にユーザーの個人情報等をアプリがどのように利用するのか確認できるようになった

ユーザーの自己判断により トラッキングをブロックしやすくなる

アップルでは、スマートフォンに代表される「デジタル端末のユーザーのプライバシー」を基本的人権のひとつとして位置付け、今までにもこれを保護するための機能やサービスの拡充に力を入れてきた。一例を挙げるならば2005年からブラウザのSafariに標準搭載されているCookieのブロック機能や、2017年にリリースされたiOS 11、macOS High SierraのSafariに搭載されたインテリジェント・トラッキング防止機能などがこれにあたる。

2020年秋にリリースされたiOS 14とiPadOS 14、tvOS 14には、ユーザー自身が個人情報の利用について自由に意思を決定できるようにするための新しいプライバシー機能が多数導入された。

代表的なものはApp Storeに公開されている各アプリ製品のページにプライバシーポリシーをまとめた「プライバシーラベル」のセクションだ。アップルはこのラベルを「加工食品のパッケージにおける栄養成分表示に当たるもの」に例えている。アップル純正のアプリを含むすべてのアプリにラベル表示を求めることにより、ユーザーがインストール前にアプリの安全性を確かめやすい環境を作った。

App Tracking Transparencyのフレームワークが導入された後には、iPhoneなどのデバイスにインストールしたアプリを起動する際など、端末の画面にトラッキングの許可を求めるメッセージが表示される。ユーザーがふたつの選択肢から「Appにトラッキングしないように要求」を選ぶと、アプリはユーザーの個人情報を取得したり、トラッキングができなくなる仕組みだ。

各アプリごとのトラッキング許可設定、iOS/iPadOSの場合「設定」から「プライバシー」に入り、リストに並ぶ「トラッキング」を選択するとステータスの一覧が見られる。ここから設定を任意に切り換えることも可能だ。

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アプリをインストール後に起動するタイミングなどで、トラッキングの許可をユーザーに選択するようにメッセージが表示される

トラッキングを許可しなくても アプリは不自由なく使えるのか?

ユーザーとしては端末の機能やサービスを快適に利用するために、トラッキング設定をどのように選択すれば「正解」なのかが気になるところかもしれない。例えばトラッキングを許可しないと、一部使えなくなるアプリの機能やサービスが発生することはないのだろうか。この点についてアップルは独自の「App Store Reviewガイドライン」の中で、「Appにトラッキングしないように要求」を選んでもアプリの機能を制限なく使えるようにするよう規定を設けている。

ソーシャルメディアのアカウントを使ってアプリにサインインした場合、そのソーシャルメディアの企業はアプリ内でユーザーの行動を自由にトラッキングできてしまうのだろうか。この場合も、ユーザーがアプリのプライバシー設定から「Appにトラッキングしないように要求」を選択していれば、アプリは広告のために他社のアプリやウェブサイトを横断してユーザーをトラッキングしたり、情報を外部の第三者に共有することができないようになっているようだ。

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後からでもトラッキングの許可について設定を変更できる

アプリのデベロッパーは、ユーザーに「トラッキングを許可してほしい理由」をメッセージ画面等に表示して丁寧に説明することもできる。ただし、この場合もデータの使用方法をユーザーに対して明確に伝えることが求められる。

次期OSをインストールすると、以前からよく使っているアプリがデベロッパーのApp Tracking Transparencyへの対応が遅れることにより使えなくなるような不便はないのだろうか。アップルはOSのアップデート後は、デベロッパーがユーザーの許可を得ることなくトラッキングができなくなるというだけで、ユーザーがアプリを使えなくなる心配はないと説明している。

そもそもApp Storeの製品ページに記載されているプライバシー情報が正確なものであると信頼を寄せても大丈夫なのだろうか。

アップルはApp Storeの年齢制限指定と同様に、プライバシーに関する方針はデベロッパーが自主的に報告しているものだとしつつ、デベロッパーの提出した情報が不正確であることが判明した場合は、即座に正確な情報を記載するように働きかけるとしている。

また、ユーザーがいったん「Appにトラッキングしないように要求」を選んだ後は、本当にトラッキングされていない保証はあるのだろうか。アップルはデベロッパーがアプリを提出する際に同意するポリシーによってこれを義務付けており、不正なトラッキングが判明した場合はデベロッパーに是正を促し、それでも従わない場合はアプリをApp Storeから削除する対処を取るという。

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個人情報をアプリに提供する際の安全性についてユーザー自身がより意識を高めて考える必要もありそうだ

ユーザーをトラッキングしなくても広告の効果測定は可能

SNSサービスなどを閲覧中、自分の趣味趣向に合致する情報やサービスを記載した広告を目にすることが便利に感じられることもあるはずだ。これまでApp Storeとアプリをプラットフォームとしてビジネスを展開してきた広告主にとって、ユーザーに有益な広告を届けるため、あるいは広告の効果測定を行うためのトラッキングが使いづらくなることは大きな痛手になり得るのではないだろうか。

アップルでは、広告主がユーザーを追跡せずにプライバシーを守りながら広告の効果測定を可能にするツールを開発、無償でデベロッパーに提供するとしている。そのひとつは広告の表示後にそのアプリがインストールされた回数を広告主に知らせる「SKAdNetwork」と呼ばれる機能。もうひとつがiOS 14.5とiPadOS 14.5のアプリを搭載するデバイス上で最小限のデータ収集と処理を行いながら、ユーザーをウェブサイトへ誘導する広告の効果を広告主が測定できるようにする「Private Click Measurement」だ。

アップルでは2020年6月に開催した世界開発者会議「WWDC20」でApp Tracking Transparencyのフレームワークを発表し、以後同年の9月以降からデベロッパーがこれを開発環境で試せるツールを提供してきた。次期OSのローンチまでに十分な対応期間を設けたことで、新たな環境への移行はスムーズに行えるだろうという見解をアップルは示している。

アップルはまた、次期OSのローンチ後もデベロッパーに向けて継続的にApp Tracking Transparencyのフレームワークの有用性を伝えていく考えだという。新しい広告効果測定のためのツールは無償でデベロッパーに提供されるものだが、とはいえアプリの開発を外部デベロッパーに委託する形でコストをかけてユーザーにサービスを提供する企業も多くあるだろう。このような場合、企業とデベロッパーがそれぞれの負担を上手に分け合いながら新しい環境へスムーズに移行するための知恵も求められる。

iPhoneなどアップルの端末を利用するユーザーの中には、これまで何となく個人情報の利用やトラッキングをアプリに許可してきたという方も多くいるのではないだろうか。自身の個人情報が不透明な形で利用されると、万一の際ユーザーにどのような不利益がもたらされるのかなど自身が生むデータの大切さにもう真剣に目を向ける必要がありそうだ。アップルのサイトに公開されているレポート「あなたのデータの一日」も資料として参考になるだろう。

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筆者紹介――山本 敦  オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

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山本 敦 編集●飯島恵里子/ASCII

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