コロナワクチン接種「受けていない人々」が常に危険にさらされるという「厳しすぎる現実」

コロナワクチン接種「受けていない人々」が常に危険にさらされるという「厳しすぎる現実」

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/02/21
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コロナ感染が判明してから約1年。昨年末から一部の国でワクチン接種が始まり、ワクチンの普及が「平常に戻る第一歩」と期待は大きい。

目下、各国政府はワクチンの確保に伴い、管理や運搬、国民への接種をどのように進めるか、躍起になっている。

すでに世界70ヵ国で始まったワクチン接種。急ピッチで進められるワクチン接種で、世界のコロナ対策はどう変わるのだろうか。

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〔PHOTO〕gettyimages

国民の40%がワクチン接種を受けたイスラエル

現在、ワクチン接種で先頭をきっているのがイスラエルだ。

いち早くワクチンを大量に入手することに成功したイスラエルは、昨年12月から接種をはじめ、2月16日までに400万人以上、国民の40%ほどがワクチン接種を受けた。

イスラエルは高齢者と疾患のあるリスクグループ、医療関係者に優先的に接種し、2月初めから16歳以上の若者にも接種を始め、50歳以上の77%がワクチンを受けたという。

イスラエルが大量のワクチンを確保できた背景には、リアルタイムでデータを公表するという契約を製造元のファイザー社と結んだことにある。

これまでのところ、2回ワクチンを受けたグループでは、ワクチン接種の1週間後にわずか0.04%がコロナに感染し、わずか0.002%が入院治療を要したというから、医療体制への負担は大幅に軽減されつつある。

イスラエルでは、ワクチンを始めてから最初の3週間だけで60歳以上の新規感染者数が41%も減ったというから今のところワクチンの効果は大きい。

「ワクチン・パスポート」は参考になる?

「ワクチン接種」でフロント・ランナーであるイスラエルでは、1月初めから早くも「ワクチン(グリーン)・パスポート」アプリが「発行」されはじめた。

これはワクチン接種を受けた人に発行されるもので、限定期間中、国内での旅行規制が緩和される。

今後はコンサートやイベント、会合や旅行に行っても「重症化しない」ということで、接種を受けた人に限り、小規模の人数の集まりに参加することを許可するものだ。

イスラエルのほかに、現在、イギリス、エストニア、イタリア、デンマーク、スウェーデン、アイスランドなども同様の「ワクチン・パスポート」の発行を考えており、各政府はワクチン接種をした人々に対して検疫や規制を緩めたいと検討している。

観光産業が重要な産業であるギリシャとイスラエル間では、2月9日、ワクチン接種を受けた人々が二国間を制約なく旅行できるよう、協定が結ばれた。イスラルはキプロスともワクチン接種を受けた入国者に対して、4月以降、PCR検査と入国に際して隔離を免除する二国間協定を結んだ。

もっとも、入国規制を緩和することで、万が一、感染が広がった場合、小国同士であれば状況を把握しやすいとして、そう安易に特権としての「ワクチン証明書」のようなものを発行してよいものかどうか。

「ワクチン・パスポート」の発行は、まだワクチンの効力がどのくらいの期間、持続するのか、判明していないことを考えると時期尚早であると世界保健機関(WHO)は警告している。

また、ワクチン接種を受けたとしても、コロナに感染した場合、他の人々にどう感染させるかどうかもわかっていない。

そしてワクチンがかなりの一般人に行きわたった数ヵ月後、最初の時期に接種を受けた人々の免疫効果は保持されているのだろうか。それとも1年に何回もワクチン接種を受けなければならなくなるのだろうか。

まだまだわからないことだらけである。

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ワクチンには、はしかや小児麻痺の予防接種のように、疫病を防ぎ、感染を防止しようとするものと、コロナ・ワクチンのように、「症状を抑えられても感染を完全に防げるものではない」ものと、大きくわけて二種類ある。

コロナをめぐるワクチンはウイルスに対する免疫力をアップさせても完全に免疫力がつくわけではなく、あくまでも「感染しても重症化しない」ことを目指すものである。

さらに、「症状を抑える」という点では、「無症状感染者」が増える可能性があると仮定する数理モデルもある。

一方、EUも近い将来、「ワクチン・パスポート」の発行について検討しはじめたが、加盟国27ヵ国の共通の水準を設けることは容易ではない。

特にEU圏内で人口の多いフランスとドイツは、慎重な姿勢を見せている。スペインやギリシャなど、観光産業が重要な南欧諸国は、バカンスがたけなわとなる夏までに発行を実現し、国外からの旅行規制を緩和したい意向だ。

ただ、通信社のAFPによると、2月上旬でEU圏内の550万人がワクチン接種を二回受けているが、約4億5千万人の人口を考えるとまだほんの一部で、道のりは長い。

WHOは各国がばらばらな水準で「ワクチン認証」を発行し始めるまえに、一定の水準で信頼できる「共通の証明書」を発行することを目標に、検討を進めている。

しかし、「一定の水準」を設けるためには、より多くの人々がワクチン接種を受け、より多くのデータが集められない限り、実現しそうにない。

研究者たちが最も懸念していること

ワクチン接種が現実化するとともに、ロシア、中国、イタリアなど一部の国々を除き、「ワクチンを急いで受けたい」という人は、昨年の秋ごろよりむしろ減っているという意識調査がある。

いずれにしても世界的なワクチン不足もあり、ワクチンが大多数の一般人に行きわたるまであと半年はかかりそうだ。ただ、なんらかの持病のためにワクチンを受けられない、もう少し様子をみよう、という人も多数、存在するだろう。

積極的に接種を受けるよう促すため、それなりの「報奨」を与えようとする各国政府の動きは理解できる。とにかくワクチン接種を増やしてみないかぎり、わからないことだらけなのだから。

筆者の住むドイツでも、新聞の全面広告で「ドイツのためのワクチン」(#腕をまくり上げよう!キャンペーン)で「正しい情報」として現在、認可されたワクチンがどういうもので、それが感染の際、どう作用し、ワクチン接種後の一般的な副反応がどのようなもので、2021年のワクチン接種計画がどのように進められるか、段階ごとにわかりやすいグラフで表している。

ワクチンのおかげで「感染しても症状があまりないが、他者を感染させる」人が増えるとすれば、そういう人々が自由に移動し、人の集まる場所へ行くということで、「受けていない人々」が常に危険にさらされることにもなる。

研究者たちは、この点を最も懸念しているが、詳細なデータが判明するまでに少なくとも数ヵ月かかるというのが大方の見方だ。

さらに今年の1月から各国で認められている変異ウイルスに対して認可されている複数のワクチンがどの程度有効であるのか、変異ウイルスで感染状況がこれからどのように変わるかも見とどける必要がある。

ただ今後、ワクチン接種を受ける人が増えることで、より詳しいデータがわかるとして、「ワクチンを受けていない人々」はまだ当分、外出制限や会合の自由を奪われることになりかねない。

今年は、「ワクチン接種を受けた人々」と、「受けていない人々」が混在することを考えると、これまで以上に対処が難しくなるのかもしれない。

まず地域ごとに非常事態宣言をするとか、国ごとにロックダウンするとかといった医療ではない行動制限に訴えることがより難しくなりそうだ。

もっともワクチン接種はこういった対処を回避し、「平常時」へ戻るための策なのであるから喜ぶべきなのかもしれない。ワクチンを受けた人々がより多くの「自由」を求めることも理解できるし、そうでないかぎりワクチンを受けようという意欲が減退してしまう。

一方で、「ワクチンを受けていない人々」はより厳しい自粛を自己責任で強いられ、行動制限をされ、外出することに対してさえ恐怖を感じるようになるかもしれない。
「ワクチン接種を受けた人々に特権を与える」ということは、「受けていない人への規制が緩和されない」ということでもある。

この流れを想像するだけでも「ワクチン接種普及」という新たな局面は、受けた人と受けていない人を「二つの階級」に分けることにつながるのではないかと危惧される。

「受けていない人々」はコンサート、映画館、レストランなどの入場を拒否され、飛行機に乗ることも制限され、国によっては入国を拒否されることも考えられる。

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疑問はさらに続く。

ワクチンが国民の大多数にいきわたり、いわゆる「ハード・イミュニティ」(集団免疫)はいつ達成されるのか。世界人口の大多数が感染すれば、ウイルスは広がらなくなるという「ハード・イミュニティ」ははたしてありうるのか。

ともかくは通常、5年から10年はかかるといわれるワクチン開発が1年未満で成果を上げはじめたということは快挙である。

しかしながら、ワクチンが普及してもウイルスが消えるわけではないし、ワクチンは「オール・マイティ」ではない。あくまで「感染しても重症化することを防ぎ、医療崩壊させない方法のひとつ」であることを忘れてはならないのかもしれない。

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