脱マスクを女医が2カ月やってみて 「マスクを着用しなければ」からの解放された生活とは

脱マスクを女医が2カ月やってみて 「マスクを着用しなければ」からの解放された生活とは

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  • 更新日:2023/01/25
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山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師

日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「脱マスク生活」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

【グラフ】米国での新型コロナウイルスの新規感謝数の推移*  *  *

昨年末に報じられた新型コロナウイルス感染症の「5類」引き下げの検討が、ようやく動き出しそうです。今年の1月18日、岸田首相は加藤厚生労働大臣らと新型コロナウイルスにおける感染症法上の分類見直しについて協議し、今年の春を視野に現在の「2類相当」から「5類」へ引き下げる方針を固めたことが報じられました。マスク着用の目安についても緩和の検討を指示する方針であるほか、5類引き下げの際は法律上の根拠がなくなってしまう公費負担については特例的に継続し、段階的に廃止する方針だといいます。

日本のニュースを見ていると必ずと言っていいほど見かけるマスク姿ですが、私は「脱マスク」をしてからもうすぐ2カ月が経とうとしています。理由は単純です。日本を離れているからです。

コロナパンデミック後の渡米は、昨年の春と夏に続き今回が3回目です。昨年の夏の時と比較して、ロサンゼルス国際空港での入国審査を待つ人の数は明らかに増えているような印象を受けました。実際に、入国審査を終える時間も前回の30分であったのに、今回は1時間半もかかってしまいました。審査を待つ人はノーマスクの人も多く、空港で働く人もノーマスク姿が増えていたように感じました。

「もうアメリカは元に戻っているよ。コロナなんかもう気にしていないんじゃないかな……」米国在住の友人からはそう聞いていましたが、今回の長期滞在ではそう肌で感じることが多いです。

例えば、昨年の渡米の際は空港の到着ロビーに設置されていたコロナ検査を促すテントを、今回は見つけることができませんでした。前回はハイウェイ沿いで見かけたコロナワクチン接種を勧める広告や街中に設置されたコロナ検査を行う仮設テントも、現時点で一つもみかけていません。

唯一、コロナワクチン接種をすすめる看板を発見したのは大型薬局の駐車場に立てかけられた看板です。冬のシーズンだからでしょうか。「インフルエンザとコロナワクチンの予防接種を無料提供(多くの場合、被保険者はインフルエンザとコロナワクチンは無料。コロナワクチンは被保険者でなくても無料)」と接種を呼びかけるものでした。

日本では、コロナワクチンやインフルエンザワクチンなどの集団接種や職域接種を除き、基本的に病院やクリニックを受診しないとワクチン接種を受けることができません。「病院に行かなくても薬局で接種できるのはとても便利だわ」とジムで知り合った年配のカリフォルニア州在住の女性が話すように、日本でも街の至る所にある薬局で希望するあらゆるワクチンの接種を受けることができるならば、ワクチン接種のハードルが下がるのではないかと感じました。

マスク姿をほとんど見かけないことも、日本とアメリカのコロナに対する受け止め方の差を痛感することの一つです。私が滞在しているアメリカのカリフォルニア州では、昨年の春に屋内や公共交通機関でのマスクの着用義務が解除されました。そのため、スーパーマーケットやジム、レストランやカフェなど、日々頻繁に訪れる場所でマスク姿を見かけることはほとんどありません。接客業の人がたまにマスクをしているのを見かける程度と言っても過言ではありません。

病院はまだ利用していないので現状はわからないのですが、先月に2回ほど訪問した鍼の治療院の先生も受付のスタッフはノーマスクでした。米国疾病予防管理センター(CDC)は、すでにCOVID-19多発地域でない医療施設は医師や患者などの全員のマスク着用を不用とすることができるとし、アメリカではすでにCOVID-19の多発地域以外の医療施設での一律のマスク義務が廃止されています。そのためなのでしょう。私も施術中にマスクの着用をお願いされることはありませんでした。

日本を離れて間もない頃は、外出時にふと「あれ、マスクを着け忘れたかも……」と不安になりながら自分の顔に触れては「もう(マスクは)いらないんだ」と自問自答することが頻繁にありました。しかし、今ではそんなやりとりを自分自身の心の中ですることもありません。日常生活を送る中で、「コロナ」に関する話題が出ることも目にすることもほとんどないからです。

街を歩いている時や店に入る際に「マスクの着用をお願いできますか?」と言われてしまうこともなければ、「消毒のご協力をお願いします」と入店前に止められてしまうこともありません。「マスクをしないといけない」と周囲の視線を意識することもなくなりました。こちらではハグもすれば、人との距離が近くても遠くてもマスクを着用することなく会話をしています。もちろん、ワクチン接種の有無を確認されることもありません。

ジムやスーパーマーケットでよく見かけるのは、消毒液です。消毒することを強要されたり勧められることは決してありませんが、自主的に使用前や使用後に筋トレマシンを消毒したり、入店時や会計の際に手を消毒する人を頻繁に見かけます。公園では、子どもたちが遊び終わったときなどでしょうか。お母さんが小さいお子さんに消毒するように声をかけている姿もよく目にします。私も今ではマスクを持ち歩くことはなくなりましたが、消毒液や消毒シートをカバンの中に入れていつでも使えるように心がけるようになりました。普段よく訪れるところでは設置されていることが多いため、必ずしも持ち歩く必要はなさそうですが、意識して持ち歩くように自然となっていました。

これまでの滞在期間中、念のためにマスクを持参したことが一度だけあります。昨年12月にミュージカルを観に行った時です。事前にメールで送られてきた案内で「公演中はマスクを着用されることを強くお勧めします。ワクチン接種の証明は必要ありません」と書かれていたからです。残念ながら、出演者の体調不良により鑑賞予定だった日と翌日の上演は見合わせ。少々残念ではありましたが、「次の機会にミュージカルを観に行った際にはマスク着用を勧める案内が送られてこないといいな」なんて思いながら帰宅したのでした。

日本では、コロナの扱いを「5類」へ引き下げるほか、マスク着用の目安についての緩和検討を指示する方針であることが連日報じられています。日本に帰国するころには、「マスク着用をしないといけない」という雰囲気が続いていないことを願っています。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

山本佳奈

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