
犬の心拍から気持ちを読み取り、光の色で表す世界初のデバイスが開発された。動物の気持ちがわかったら社会はどう変わるのか。
私たちにとって家族同然とも言えるペットの存在。「もしも、気持ちがわかったら…」という飼い主もいるだろう。そんな中、あるデバイスに注目が集まっている。

「都内のドッグラン施設にやってきました!こちら、愛犬のギフトです!」
ニュース番組『ABEMAヒルズ』の楪望キャスターが愛犬のギフトを連れ、デバイスを開発した企業の担当者に会いに行った。
犬の気持ちを心拍から読み解き、光で表して愛犬の健康管理に生かすという、世界初のデバイス「イヌパシー」。早速、ギフトに着けてみることに。イヌパシーはハーネス型と首輪型の2種類があり、装着も簡単だ。独自の解析方法によって、センサーで読み取った心拍と感情を関連付けた、リアルタイムな解析を実現しているという。開発したラングレスの代表・山入端佳那氏に使い方を聞いた。

背中のライトは「リラックス」や「興奮」など、感情によって5色のパターンに変化する。犬のキモチは、遊んでいるときにも刻一刻と変わる。
「今、白色に光っている。白色は『集中』で、何かに関心を持っている、気になっていることがある状態。今、水を飲んでいると集中に変わった」(山入端氏)
水を飲んでいるときには、「集中」を示す白、ボールやフリスビーで遊んでいるときは「興奮」を示すオレンジに変わった。犬の気持ちや心拍数は記録され、後から確認することもできる。
その後も、遊ばせること10分。すると意外な発見があった。

「耳の下、好きなの?あなた」(楪)
ギフトの耳の下をなでていると、だんだんと眠たげな目になり、イヌパシーには「ハッピー」や「リラックス」状態を示す色が現れた。
「『今この色が光っているからこうみたいだよ』とか、データを見ると今日ずっと退屈していたから『何か言いたいことがあるみたい』とか。なんでその子がそうなったのか、家族みんなで考えるきっかけになる」(山入端氏)

また、11月24日に麻布台ヒルズにオープンする「GREEN DOG SALON ILOA」は、イヌパシーを使ったサービスを提供するグルーミングサロンだ。首輪型のイヌパシーを装着し、施術中の犬の気持ちを表示する。その時々の気持ちに合わせてケアを調整するのに役立てる。

「犬にも気持ちがあるので、『その子たちの気持ちを大切にしながらお手入れができたらな』と思ってこの形を選択している」(ストアマネージャー・島田真衣さん)
ギフトもグルーミングを体験。最初はやや興奮気味だったが、抱っこしながら施術してもらうと「リラックス」の表示が。
「本当に抱っこが好きなんだろうなと思っていたが、抱っこして「ハッピー」と出ると、今まで自分がやっていたことが正解だったんだと、改めて感じて自信にもなった」(楪)
約10年かけイヌパシーを開発したという山入端氏は、犬の平均寿命が伸びるなどペットと過ごす時間が増える中、その気持ちを知ることには大きな意味があると話す。

「犬やペットたちは、言葉がないからこそ良い関係、良い友達になれると思う。感情が具体的にわからなくとも大事なその瞬間、その瞬間の気持ちを受けとることで、飼い主としても自信を持てる。その犬のプロフェッショナルになるのは、犬も飼い主も楽しい人生を送れる大事なポイントだと思う」(山入端氏)
目指す未来は、人間と動物が言語に頼ることのない新しいコミュニケーションが実現した社会。今後、犬以外の動物にも、この技術を応用していきたいと話す。
「犬や猫の気持ちがわかったら、もう少しここの都市計画をこうしようなど、人間の課題だけでなく、彼らのことも含めて考えられるようになると思う。人と動物の“共生”する未来が実現したら嬉しい」

動物との共生について、自身も介助犬の支援をしているという精神科医の木村好珠氏に話を聞いた。
━━犬の気持ちがわかるとどんなことができる?
「介助犬や盲導犬が人と一緒に暮らすときに、人間側としては、『仕事をしてもらっている』とか、『私と一緒に暮らして、普通のペットとして生きるよりも幸せなのか』と不安に思ってしまう人がいる。しかし、犬も人と暮らすことはとても嬉しいし、保護犬などなかなか行く場所がない犬にとっては命の面でもプラスになる。共生するうえで、人の不安を取り除くのにもこのツールは役立つと思う」
━━介助犬たちのような、おとなしい犬の状態を知るのにもいい?
「人間でもなかなか言えない人がいるように、頑張り屋な犬ほどわかりづらいと思うので、『ちょっと疲れたよ』というサインに気付けるかもしれない」
━━よくペットはメンタルに良いというのはなぜ?
「メンタルだけではなく、体にも良い。ストレス軽減、リラックス効果のほか、散歩などで運動量が上がることで生活習慣病の予防になる。また、ペットの世話をすることで色々考えるため脳にも良く、認知症の予防になると言われている」
「日本だと、精神科やメンタル治療となると、薬のイメージがかなり強い気がするが、海外では運動療法、音楽セラピーなど、あらゆるものがある。その中の1つでペットセラピーは非常に有効だ」
(『ABEMAヒルズ』より)