発表から発売まで1年って誰得なの? メーカーによる「チラ見せ」戦略の功罪

発表から発売まで1年って誰得なの? メーカーによる「チラ見せ」戦略の功罪

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  • 更新日:2021/11/25
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最近、新型車登場の際に、発表から発売まで、かなり待たされることが多い。

ワンショットのティザー画像が登場したあと、数か月後に正式発表会があり先行予約が開始、そこからさらに数か月後ようやく発売開始……といった具合で、「いよいよ発売開始!!」といわれても、「あれ、まだ売ってなかったの!?」と思ってしまうことがしばしばある。

発表と同時に発売となるクルマもなかにはあるが、このように待たされるパターンが昨今特に増えてきているように思う。自動車メーカーはなぜこのような手法をとるようになったのか。

文/吉川賢一、写真/NISSAN

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■市販型登場から1年4か月経ってもユーザーに届いていない「アリア」

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日産 アリアの発表は2020年7月。コロナ禍などの事情もあるだろうが、1年4ヶ月後の現在(2021年11月16日)もユーザーの元に届いていない

たとえば、日産「ノート」の場合。2020年11月24日に新型が発表となり、同12月23日に発売開始と、このときは同時ではなかったものの、それほどタイムラグがあったわけではなかった。

しかし、ノートオーラは2021年6月15日に発表され、その約2か月後となる8月17日に発売となっている。オーラ発売の際に発表となった「ノートオーラNISMO」は、「今秋発売予定」とされているが、現時点(11月16日)、まだ発売の発表はない。

また、新型BRZ/GR86も2021年4月5日に公開されたあと、BRZが7月29日に正式発表、同時に予約販売を開始、GR86は10月28日に発表即発売となっている。

少し話がそれるが、GR86の発売が遅れたのは、開発のデッドラインを越えたあとに、トヨタ側で足回りの再チューニングを施したことによるもの、とされているが、このハプニングも宣伝に使っているので、あえてやったのではと筆者は勘ぐっている。

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ノートオーラ発売の際に登場をアナウンスされたノートオーラNISMO。今秋発売予定とされているが、11月16日現在で発売の報はない

日産アリアに至っては、2019年10月の東京モーターショーで「ARIYAコンセプト」が初披露された後、2020年7月に、コンセプトカーとほぼ変わらない市販型アリアのデザインを発表。2021年4月にティザー動画を公開し、その2カ月後の6月に限定モデル「Limited」を発表、同時に予約が開始となっている。

デリバリーは66kWhバッテリー搭載車(B6)の2WDが今冬より開始(上級モデルの91kWh車や4WD仕様のデリバリーは未定)されるそうだが、市販型を目にした日から、すでに1年4か月が経過しているのに、まだユーザーの手に届いていないという状況だ。

昨今の新車開発は、昔と比べて時間がかかるようになったのは事実だ。複雑なハイブリッドシステムや、電子制御関連のデバイスが増え、かつてはなかった緊急回避のためのブレーキ制御作り込みなども、何十回と行わないとならない。だが、それならば発表を遅らせればよいこと。

これほど発売までの期間がかかってしまうのは何故だろうか。それには、3つの理由が考えられる。

■発表と発売の間を広げたがる3つの理由

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アリアのワールドプレミアからすでに1年以上が経過している。なんだか遠い昔のことのようにも思える……

1)無駄なコストを削減するため

先に発表をし、予約販売を開始する、もしくはユーザーの反応を見ることで、発売開始前に、おおよその生産台数の見通しを立てたい、ということが大きな要因だろう。

発表から発売までの期間が同時もしくは短いと、当初計画とのずれが生じた場合、「ヒト、モノ、カネ」に多大な無駄が生じてしまう。工場で働く作業員たちが手持無沙汰になることは避けたいし、パーツも、必要な分だけ製造し、無駄の出ないよう使い切りたい。

事前に生産台数の見通しが経ち、必要となる部品数が分かれば、無駄のない生産計画が組めるようになる。無駄が減れば、コスト(主に人件費)が減らせ、会社の利益に貢献ができる。

コロナ禍の影響も少なからずある。昨今は海外でパーツをつくることが多くなっているが、その部品生産地域でロックダウンとなってしまうと、部品調達が不安定になってしまう。事前に必要数を確保し、発売開始してから生産が滞らないよう、安定供給することも狙っているものと考えられる。

メーカーとしては、無駄のない生産計画を立てるため、受注台数に目途をつけたいのだ。

2)何度も話題を投げかけて、マーケットを刺激するため

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アリア発表前は発表までの時間をカウントダウン表示していた(日産アリア ティザーサイトからのスクリーンショット)

ティザー(チラ見せ)、発表、予約開始、発売と、そのたびに新車の情報を小出しにしていくことで、何度も話題を投下することができる。

日産アリアなどは引っ張りすぎ(コロナ禍の影響もあるのかも知れないが)のようにも思えるが、イベントごとに話題になることで、世の中により知ってもらう機会が増えることになる。

また、開発途中の状況などを公開していくことで、商品という「結果」だけでなく、「プロセス」もストーリーの一つとして活用することもできる。

例えば、GRヤリスやGR86、シビックタイプRなどは、耐久レースやタイムアタックなど、途中経過をアピールして、そのクルマのストーリーを伝え、そのクルマのファンに引き込むような戦略をとってきた。

3)「販売好調」のアピールに活用するため

さらには、先に発表し、その後予約販売を始めることで、「初期受注台数」や「発売後一ヶ月の販売台数」などをより引き上げることができる。

「初期受注は2万台、月販目標の5倍!!」といった数字は、販売好調を表す一つの指標として扱われており、他メーカーを牽制する意味でも、とても重要なものとなっている。こうしたことも、理由のひとつだろう。

■販売現場では弊害も

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展示車や試乗車などの現物がない商品を見たことがあるかのように説明して購入を促すディーラーの販売員も大変だ

このように、メーカー側には「旨味」が多いこと、そしてどのメーカーでもやっている、ということもあり、昨今特に多くなってきているのだろう。しかしながら、販売現場では、不評となっている場合もあるという。

予約開始の段階になった段階で、顧客がディーラーに問い合わせても、販売現場には新型車のスペックやカタログがあるだけで、展示車や試乗車もない。

ディーラー側は、まだ見ぬ商品を熟知したように説明し、顧客に納得してもらわなければならないのだ。また、発売まで長期で待たされる場合、顧客からのクレームにもつながりかねない。

この場合、ユーザー側も実物を目にしない状況で予約することにはなるが、一方で、発表から発売に期間があることで、ユーザー側には「発売前にどんなクルマが出るか知ることができる」というメリットもある。

もちろんすべてのクルマがそうではないので一概にはいえないが、ある程度先に新モデルの登場情報を知ることができるのは、ユーザーとしてはうれしいことだ。

メーカーやモデルによってさまざまだが、今後もこの流れは続くと思われる。

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