20代で結婚したいのに、恋人と長続きしない...。27歳商社OLがぶち当たった婚活成就への壁

20代で結婚したいのに、恋人と長続きしない...。27歳商社OLがぶち当たった婚活成就への壁

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  • 更新日:2023/01/29

コインに表と裏があるように、人はみな日常では見せない“もう1人の自分”を隠している。

― 絶対に誰にも知られたくない。

そう強く思っても、心の奥底に潜む“彼ら”は、まるで自分が表であるかのごとく顔を出そうとする。

......そして大抵、その人を蛇の道に誘うのだ。

東カレで人気を博したオムニバス連載が復活!2023年版は、男女それぞれの目線から2話完結で描くストーリーにアップデートしてお届け!

▶前回:今カノじゃ満たされない…。男が「一線は越えない」と自分に誓い、元カノと密会し続けるワケ

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Vol.11 友香(27歳)の場合

「このパスタ、モチモチしていて、うにが超濃厚~」
「どの料理も美味しくって、見た目も映えるし最高!」

金曜日の仕事終わり。私は、彼氏の孝則と『ヤマガタサンダンデロ』でデートをしていた。

このお店は、山形産の新鮮な野菜や旬の食材を使った料理を楽しむことができる。口福感で満たされ、私はいつもより饒舌に彼に話しかける。

2歳上の孝則は、東大法学部卒の4大法律事務所で働く若手弁護士だ。

スーツの上からでもわかる、鍛えられた広い肩幅。人の良さそうなタレ目に、口元からのぞく歯並びの良さ。

社会人になって、周りからいい影響を受けて洗練されたのだろう。スーツの着こなしも板についている。

学歴、年収、社会的ステータス、見た目も申し分ない。

― 20代のうちに結婚して、ハリー・ウィンストンの婚約指輪とリッツ・カールトンでの挙式を手にすること。

それが、総合商社の一般職に内定を勝ち取った時からの私の夢なのだ。

彼との出会いは、同僚が開いたお食事会。初対面の時、中高一貫の男子校出身で奥手だからか、彼からわかりやすいアプローチなどはなかった。

けれど私は、彼から熱い視線を投げかけられている気がしていた。

だから自分から積極的にアプローチし、3回目のデートで孝則の家に行きたいとせがんだことをきっかけに、付き合うことになったのだ。

「ねえ、次のデートどうしよう。温泉とか一緒に行きたいな」

食後の紅茶と茶菓子をつまみながら、私は孝則の目を見つめた。

「ごめん…。しばらくは土日の予定があって…」
「そうなんだ、残念…。落ち着いたら一緒に行こうね」

ずっと行きたかった温泉宿があったので少し残念に思ったが、一方でひとりの時間ができることに喜びを感じる自分もいる。

なぜなら…私には、孝則には言えない週末の楽しみがあるから。

孝則と別れた後、私は足早に中目黒の家へ帰った。リモートワークをするには狭い部屋だが、好きな街でのひとり暮らしを謳歌している。

私はまず、お風呂で1日の疲れを癒す。どんなに疲れていても、メイクを落とさずに寝たことは一度たりともない。

お風呂から上がった後は、洗面所で自分の顔と体をチェックする。

― 昨日、デートに備えてフェイシャルに行ったおかげで肌ツヤがいいな。

私は満足げに、まじまじと自分の顔を見る。

尖ったあごのラインに、ぱっちりした目。鼻は控えめな大きさで、しっかり鼻筋が通っている。

適度に締まりつつも女性らしい、柔らかいラインのウエスト。

― 今日のボディーチェックも、問題なし!

私は2時間の美容メンテナンスを終えて、ようやくベッドへ移動した。

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週に2回はパーソナルトレーニングで体を鍛え、月に数回は痩身エステに通う。

毎月のフェイシャルエステ、ネイルサロンに美容室や眉毛サロンも欠かさない。

そして、定期的なボトックスやハイフなどの美容医療への投資も惜しまない。

― これだけ努力しているのだから、弁護士レベルの男じゃないと割に合わない。

そう、強く思うようになったのは、学生時代に付き合っていた3歳上の商社マンの彼氏に浮気されたのがきっかけだ。

浮気相手の女は、女子大生美女として人気のインスタグラマーだった。

「友香と違って、なんだか守ってあげたくなる存在なんだよね」

元カレは浮気の理由をそう語ったが、私が彼女よりもビジュアルで劣っていたのは明らかだった。

それ以来、私は見た目に執着するようになる。より美しくなって、商社マンの元カレよりハイスペックな男と付き合って、当時の彼氏を見返してやりたかった。

日々の努力が実り、その後付き合った彼氏は、外銀や外コンなどいわゆるエリートぞろい。

しかし、なかなか長続きしない。その理由を、すべてビジュアルのせいだと決めつけ、さらに美に磨きをかけるようになったのだ。

だがどれだけ美を極めても、私の心の中は満たされない思いで黒く渦巻く。

当時の彼氏や友人にどれだけ見た目を褒められても、上には上がいて、まるで終わりがないレースのようだ。

私はゴールが見えずに、さまよい続けていた。

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そんな不遇の時に出会ったのが、コスプレだ。

きっかけは、大学時代のフットサルサークルの飲み会でたまたま先輩に聞いた話だった。

「先輩は、今どんなお仕事をしてるんですか?」
「去年、新卒で入った広告制作の会社を辞めて、今はカメラマンやってるんだ」

男女共に華やかなサークルの中で、先輩は昔から少々浮世離れした存在だった。今はフリーランスのカメラマンとして、グラビアアイドルを撮ることが多いそうだ。

「今一番勢いがあるのが、コスプレイヤーさんでさ」
「コスプレイヤーって、アニメのキャラクターの格好とかをする人たちですか?」
「そう。彼女たち、コロナ禍で会員制のサブスク始めてさ。トップ層だと月に数百万稼いでるんだって。みんな若いのに超高そうなバッグを持ってて、遊び方も派手だから俺なんてついていけないよ~」

― へえ、そんな世界もあるんだ。

その日の夜、私は興味本位でコスプレイヤーのインスタを探してみた。

派手なウイッグに、現実ではあり得ない色のカラコン。アニメキャラそのままの衣装を着た女たちが、様々なポーズをとっている。

彼女たちの写真には、万単位の「いいね」、称賛するコメントが多数付いている。

私は、夢中で画面をスクロールした。

― コスプレイヤーさんって美人でスタイルがいいし、今まで抱いてきたアニメオタクへのイメージとまるで違う!

中高の時のクラスメイトにいたアニメオタクは、さえない子たちばかり。

小さい頃に『ドラえもん』や『ちびまるこちゃん』を見ていた程度で、アニメとは無縁の人生を歩んできた。

ポジティブなイメージがなかっただけに、私は、世界が180度変わった気がした。

「私にだってできるかもしれない」

新たな世界に魅せられた私は、兄におすすめのキャラクターを聞き、衣装とウイッグを早速注文した。

そのキャラクターは、肩やお腹を出したデザインだったので、初めてのコスプレにはハードルが高い気もした。が、案外ウイッグを被ってしまえば違和感もない。

それに、ジムと痩身サロンの合わせ技で磨いている体には、ある程度の自信がある。

普段見慣れない自分の姿を見た瞬間、私は今まで味わったことのないような高揚を感じた。

すぐに、コスプレ専用のTwitterとInstagramもスタート。のめり込むように投稿を続けた。

すると半年後には、固定のファンもつくほど人気のコスプレイヤーとして、ちまたで有名になったのだった。

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ある土曜の朝。私はモーニングルーティンの筋トレを終えた後、新しく届いた淡いピンク色のうさぎの水着をおろした。

全身鏡の前でくるくると、色々な角度から自分の体を写真に収める。

正直、会社のくだらない飲み会や、足の引っ張りあいの女子会には飽き飽きしている。

家で称賛のコメントと美しい自分の写真を見ながら、チーズとワインを楽しむほうが、よっぽど幸せな時間だ。

けれど今日の私は、何百枚と写真を撮ってもベストショットが決まらない。どのカットも表情に覇気がないのだ。

その原因は、1週間前に孝則との間に起きた“ある事件”がきっかけだった。

夜の有楽町で、孝則が知らない女と手をつないで歩いている姿を、偶然見かけてしまったのだ。

飲み会終わり、酔いざましに銀座から有楽町まで歩いていた時に、ふと何気なく目に入ったカップルがそうだった。

「えっ、孝則…」

思った時には、声に出ていた。

相手の女の顔は、マスクをしているうえに暗くてよく見えなかったけれど、上質そうな黒のロングコートを着こなすその佇まいは、どう見ても私よりずっと歳上に見えた。

孝則は一瞬驚いた顔をしたが、走り去る私を追いかけることはしなかった。

― こんなに努力して、美しくあり続けようと頑張ってるのに…最低!

私のプライドはもうズタズタだった。

あの後、数日間は孝則から何度も電話や謝罪のLINEが届いていた。しかし、彼を許すことができなかった私は、無視を決め込んだ。

すると、パタっと孝則からの連絡は途切れたのだった。

またしても交際が短命に終わったことから、私は今もまだ立ち直り切れていない。

なんとか今日の分の写真を撮り終え、いつものようにコーヒーをいれてSNSを巡回する。

画像修正でごまかしている人もいるが、トップクラスのコスプレイヤーは、実際に会ってみてもモデルのように美しい。

― もっと私も綺麗になって、さらにいいねをもらわないと…。

私は何かにすがりつくかのように、痩身エステの予約を取った。

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週明けの月曜日の朝。私が出社すると、不機嫌そうな顔でお局がデスクの前に仁王立ちしてきた。

「長井さん、先週出してもらった書類、いくつか不備があるから確認しておいて」

彼女は顔立ちはクール系で整っているが、いつも眉間に皺が寄っていて、マスクの上からでも不機嫌さがわかる。

私は謝りながらも心の中で舌打ちをする。そして、すぐにお手洗いに立ち、SNSのいいね欄を眺めることで平静を取り戻そうとした。

― 週末に撮った水着の写真も、順調にいいねが増えてる!お局の言うことなんて気にせず、元気ださないと。

手を洗っていると、奥の個室から夏美が出てきた。

彼女は同期で、顔はアイドル系でかわいいが、高飛車な女だ。気に入らない相手がいると、すぐに根も葉もないうわさを振りまく。

以前、お食事会で夏美が狙っていた外銀の男とデートをしたことがある。それを知った彼女が、陰で「友香はすぐにお持ち帰りされる女だ」と言いふらしていることを知ってから、距離を置いている。

「おはよ」と一応声をかけておく。いつもは朝からテンションが高い彼女が、今日は一言だけ「お疲れ」とぼそっとつぶやいただけだった。

そんな彼女を気にも留めず、私は席に戻ろうとしたが、後ろから「ねえ」と声をかけられた。

「友香、このアカウント知ってる?」

そう言って渡されたスマホの画面には、よく知っているアカウント名と、真っ白なレースのほぼ裸に近い下着を身につけた女が写っていた。

「えっ」

驚きと焦りが入り混じって一瞬、身動きが取れなくなった。

思わずこわばった私の表情を見て、彼女の目元が意地悪そうに歪んだ。

▶前回:今カノじゃ満たされない…。男が「一線は越えない」と自分に誓い、元カノと密会し続けるワケ

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28歳のOLの“もう1人の私”とは…?

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