スタバから学ぶ、新しい時代のラグジュアリー

スタバから学ぶ、新しい時代のラグジュアリー

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/06/12
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1杯のコーヒーを通して豊かな時間をつくりだす、スターバックス。上質で味わい豊かなコーヒーを楽しめるチェーン店として、ブランドとしての価値を創りながらコーヒー業界を牽引してきた。今回は新しい時代のラグジュアリーとは何かについて、スターバックス コーヒー ジャパンのCEOである水口貴文氏に話を聞いた。

〈前編:スタバ日本上陸25周年 「変わったこと」と「変わらないこと」

──スターバックスはコーヒーブランドのリーディングカンパニーでありながら、ラグジュアリーのトップブランドでもあると思いますが、水口社長はスターバックスブランドをどのように捉えていますか。

水口貴文(以下、水口):スターバックスがラグジュアリーブランドかと言われたら、それは定義次第だなと思います。少し前までは、ラグジュアリーといえば、高価でつくりの良い鞄や洋服ブランド、またはそれを所有することを指していましたが、今では食事や暮らし、体験に対しても使うようになってきました。我々がやっていることは、日常のなかにちょっとした非日常を演出することです。スターバックスコーヒーは今年で日本上陸25周年を迎えますが、この25年間、1杯のコーヒーを通して人と人とのつながりをつくることを大切にしてきました。我々はもちろんコーヒーのブランドなのですが、主役は人です。人を大切にしていることこそスターバックスのブランド価値であり、今はそのような人とのつながりや人の温かさという価値が増しているように感じています。

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写真提供:スターバックス

──以前は鞄や洋服を指していたラグジュアリーが、暮らしや体験にまで領域を広げてきたのは何故だと思いますか。

水口:自己表現の幅が広がったからではないでしょうか。以前は高級なバッグを所有することやそれを他人に見せることで表現していましたが、今はSNSで日常を切り取れるようになりました。レストランでのおいしい食事や優雅なホテルステイの写真をアップすることが、高級なバッグを誰かに見せることと同じ価値を生んでいるのだと思います。また、ラグジュアリーや豊かさの定義自体も変わってきましたよね。以前は高価なものを求めていたけれど、今はその商品の背景にあるストーリーにより注目が集まっているように感じます。サスティナビリティへの取り組みという視点もあるでしょう。ライフスタイルや働き方もどんどん変わってきていますから、当然、求めるものも多様化しています。我々は、ただコーヒーを提供するのではなく、ひとりひとりのお客様に向き合って接客することを大切にしているので、その空間を心地いい、豊かだと感じてくださる方がいるのかもしれません。

──水口社長が考える、ラグジュアリーに必要な要素は何ですか。

水口:時代を超えて引き継がれていく普遍的なものと、時代や人に合わせて変わっていく可変的なものという2つの軸があると思います。昔、イタリアに住んでいた時に女の子の友人がとても素敵なピンクのカーディガンを着ていて、おばあちゃんの代からずっと着ているものだと教えてくれました。それって、まさにラグジュアリーですよね。コーヒー豆も同じで、本当に素晴らしい生産者さんの畑は次の代へと大事に引き継がれていきます。本当に価値あるものは受け継がれていくのだと感じました。

また、基本的にラグジュアリーとは人生を豊かにするものだと思っています。モノであれ体験であれ、その人を幸せにしたり気分を上げたりしてくれるもの。何に豊かさを感じるかは人それぞれですが、先にも言った通り、昔に比べると豊かさのバリエーションは確実に広がっています。

──ラグジュアリーの在り方が多様化するなかで、スターバックスに求められていることは?

水口:今はテクノロジーが発達して、クイックに人と繋がれるようになりました。スマートフォンやSNSが普及し、コミュニケーションのあり方もどんどん変わる一方で、先ほども言った通り、人と人との繋がりは一層価値を高めています。コロナ禍においては尚更です。先日、小さいお子さんと一緒に来店されたお客様にパートナー(店舗スタッフ)がデカフェメニューをご提案したところ、「産休中、どんどん社会から離れているように感じていましたが、私のことをちゃんと見てくれていることが嬉しく、温かい言葉をかけていただき元気が出ました」という感謝のお手紙をいただきました。お客様との繋がりをつくることが求められていると感じます。

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──テクノロジーの発達はたしかに私たちのライフスタイルに大きな影響を与えていますが、スターバックスのブランドにはどのように影響していますか。

水口:我々が大切にしている人と人のつながりは、テクノロジーが邪魔するものではないと思っています。モバイルオーダーが普及してレジ業務が不要になったとしても、違うところで新しいコネクトが生まれるからです。一般的にテクノロジーというと、効率性や利便性を高めるために導入するのでしょうが、スターバックスは少し違います。例えば、スターバックスのアプリには「マイストアパスポート」というデジタル御朱印帳のような機能があり、利用した店舗のスタンプを集めることができます。現在、全国に1,600を超える店舗がありますが、それら全ての店舗にオリジナルのロゴスタンプがあるんです。店舗ごとにスタンプをつくるのは意外と大変なのですが、集める楽しさがありますよね。プリペイドカードも同様に、シーズンごとにデザインを変えているので選ぶ楽しさや集める楽しさがあります。スターバックスにはそういういい意味での無駄が多いんです。テクノロジーやデジタルは、あくまでアナログな繋がりをサポートするものだと思っています。

──水口社長にとってのラグジュアリーとは?

水口:私にとっての究極のラグジュアリーは、土曜日の朝、開店と同時にこのお店(スターバックス リザーブ(R)ロースタリー トウキョウ東京)に来て、ヘーゼルナッツチョコレートクリームの入ったコルネッティコロネとラテを頼み、1番奥の席でひとりゆっくりと過ごすことですね。贅沢な時間だと思います。

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スターバックスリザーブ(R)ロースタリー東京

──自分にとってのラグジュアリーを見つけるには?

水口:これまでは、ラグジュアリーだと与えられたものをある種の思い込みでラグジュアリーと受け取っていた側面があるかもしれませんが、ラグジュアリーの定義が多様化した今、改めて自分にとっての「マイラグジュアリー」を見つける段階にきていると思います。そのためには、自分を見つめ直すこと。ありたい理想の自分というよりは、ありのままの自分を肯定して見ていただきたいです。自分が大切にしてきたものが皆さんの中に必ずあると思います。そこに向き合ってみると、こういうときに心地いいんだなとか、こういうときに人の温かさを感じるなというのが分かります。それがその人にとってのラグジュアリーなのではないでしょうか。私にとっては、それがパンとコーヒーです。現代では、選択肢が多いからこそ「あなたはどうなの?」と問いかけられているような気がします。自分を認め、違いを認めると、自分の中のダイヤモンドが見つかる。それが、自分にとってのラグジュアリーだと思います。

水口貴文◎54歳。1967年1月生まれ。2001年、LVJグループ ルイ・ヴィトン ジャパンカンパニー入社。2010年、同社ロエベ ジャパン カンパニー プレジデント&CEO。2014年9月、スターバックス コーヒー ジャパン入社、最高執行責任者(COO)。2016年6月、同社CEO(代表取締役最高経営責任者)就任。

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