彼氏がいる社長令嬢と見合い結婚した朝鮮労働党幹部の息子の末路

彼氏がいる社長令嬢と見合い結婚した朝鮮労働党幹部の息子の末路

  • JBpress
  • 更新日:2021/10/15
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かつては日本でもお見合いによる結婚が一般的だった(写真:アフロ)

「マダンパル」は広場を意味する「マダン」と足を意味する「パル」を組み合わせた語で、顔が広い人を指している。「クモの手」も足が多いクモのように広い人脈がある人を指す言葉だ。

マダンパルとクモの手は、北朝鮮で男女の結婚を専門に紹介する仲人として、近年力をつけている。マダンパルやクモの手と呼ばれる北朝鮮の仲人たちは、どのようにして力を強めているのだろうか。

(過去分は以下をご覧ください)
◎「北朝鮮25時」(https://jbpress.ismedia.jp/search?fulltext=%E9%83%AD+%E6%96%87%E5%AE%8C%EF%BC%9A)

(郭 文完:大韓フィルム映画製作社代表)

かつて北朝鮮の結婚は、見合いが7、恋愛が3という割合だったが、最近は恋愛結婚の比率が高まり、見合い結婚が3、恋愛結婚が7に変わった。もっとも、見合い結婚の比率は低くなったが、一方で自由恋愛の許されない特権階級の子供が残されたことで、見合いにおける相手の水準は格段に上がっている。

そこに目をつけたのが、韓国の結婚仲介業を真似れば商売になると踏んだ北朝鮮のブローカーである。中には10年以上前から結婚仲介業に乗り出し、有名になったマダンパルやクモの手もいる。

マダンパルは平壌の主要権力層を顧客とし、クモの手は地方の金主を相手にしていたが、今では権力と金のために、互いに手を取り合うようになった。資本主義で言う政経癒着のためである。

権力に金が比例する国は少なくないが、北朝鮮の権力層は職責が上がっても経済力はそれほどではない。基本的に最も資金力に恵まれているのは企業人で、中堅幹部は賄賂をもらう機会が多い労働党の中堅幹部はまだマシだが、上位の幹部が賄賂を受け取れば即死罪になるため、中堅幹部ほどの経済力は持っていない。金正恩総書記から与えられる「プレゼント」に頼ってビジネスを維持しているのが現状だ。

金正恩総書記は金を誇示する人々を最も軽蔑する。これは金日成主席と金正日総書記の持論で、金を好む人々は首領に対する忠誠心よりも金に忠誠を誓うため、近づいてはならないという金氏一家の人事鉄則である。

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“成金”と政権幹部の子供を結びつけるマダンパル

北朝鮮の最高位層は高い地位を長く維持できる一方、権力に経済力が追いつかない。だが、彼らより下位の中級幹部は利権事業に手を染めやすく、裏金を手にしている。それゆえに、北朝鮮の権力層は子供の結婚相手を選ぶ際に、経済力を求める人が少なくない。

それに対して、新興経済勢力の方は権力がある家系との政略的な姻戚関係を望んでいる。金を守り、呼び込むためだ。

このような政経癒着の需要に目をつけたのが、結婚仲介業者たちである。平壌のマダンパルは地方の有名なクモの手と組み、多くの結婚相手を紹介して金を受け取り、利権を獲得している。

北朝鮮の権力層に、金に無頓着でいられる家門はない。表向きは金正恩総書記だけを信じて忠誠を尽くすが、親戚や姻戚に金主がいる。その政経結婚を成功させているのがマダンパルとクモの手である。

2018年頃、朝鮮労働党・組織指導部副部長の息子と平安北道新義州市のチョンソン貿易会社社長の娘の結婚式が執り行なわれた。

別名「ソ・ジェガク結婚式」と呼ばれる超豪華な結婚式だった。ソ・ジェカクは、平壌市普通江(ポトンガン)区域に位置する護衛司令部招待所の外貨食堂で、料理と接客サービス係、料理人は一般的な者たちではなく、護衛司令部料理大学所属の政府料理人と接客員が担っている。

結婚式や還暦祝いなどの会場としても使われており、半日のレンタル費用は5万ドル。料理やカラオケ、祝賀公演といったフルオプションだと10万ドルを下らない超豪華な宴会場だ。

政経癒着の力を誇示して執り行なわれた結婚式が話題となり、最高指導部にも報告された。政治的に問題になりかねない式だったが、労働党組織指導部の金与正副部長とそのマダンパルに親交があったことから軽い警告で済んだ。ただ、その後に問題が発生した。

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北朝鮮で有数の外貨食堂ソ・ジェカクのある平壌市普通江(ポトンガン)区域(Christophe95,CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons)

チョンソン貿易社長令嬢の驚くべき過去

「仲立ちがうまければ酒三杯、下手なら頬三殴」ということわざがある。うまくいって当たり前で、下手をすると、一生恨まれるのが仲人という意味だ。

見合いの歴史は人類の歴史といってもよい。

血縁の人脈で、結婚ほど重要なものはない。マダンパルとクモの手は誇りをもって結婚を仲介するが、長く事業を営んでいると鉄と木をくっつけなければならないこともある。朝鮮労働党・組職指導部副部長の息子とチョンソン貿易会社社長の娘の見合いがその例だ。

貿易会社社長の娘には恋人がいた。

妊娠までしていたが、組織指導部副部長の力を求めたチョンソン貿易会社の社長は、娘の希望を無視して強制的に堕胎させ、組織指導部副部長の息子と結婚させた。

その時に、決定的な役割を果たしたのがクモの手だった。

彼は妊娠の事実を隠して結婚を進めた。組織指導部副部長も、金主として有名なチョンソン貿易会社社長の娘を嫁にもらうことをためらわず、クモの手と連携したマダンパルを信用して結婚を快諾した。

平壌のマダンパルと地方のクモの手によって捏造された見合いだったのだ。

クモの手はチョンソン貿易会社社長から少なからぬ金を受け取り、マダンパルは組職指導部副部長から重要な人事で特別な計らいをしてもらう助力を得た。

ところがある日、新婚生活中の夫婦がマンションの20階から一緒に落ちて死ぬ事件が発生した。調査の結果、夫が妻の首を絞めてベランダから落とした後、自分も落ちたことがわかった。捜査機関は夫婦喧嘩を調べる過程で、彼らがマダンパルとクモの手の仲介で結婚した点に注目した。

マダンパルとクモの手を呼んで尋問し、新婦に恋人がいて堕胎したという供述を得た。親の強要と仲人の紹介で強制的に結婚をした新婦が、夫に事実を知らせて離婚を申し出たのだ。夫は妻を説得したが、腹立ちまぎれに首を絞めてベランダの下に投げ、自殺したという。

お見合い業者の粛正を提案した捜査機関

この事実が最高指導部に報告されると、北朝鮮最高指導部はマダンパルとクモの手に対する検閲を指示し、また、彼らを通じて見合い結婚を行った党幹部や行政・経済幹部の調査を並行した。

その結果、相当数の党幹部と行政・経済幹部が平壌や地方の金主と姻戚関係を結んでいたことが明らかになった。北朝鮮政府はマダンパルやクモの手が、韓国の結婚仲介業を見習って大々的な仲人業を行ったことを問題視した。

その後、捜査機関が粛清を提案したが、最高指導部は「見合いは昔からある慣習で、非社会主義だとして粛清するのは行き過ぎだ」として「注意警告」で決着した。

金与正氏が組織指導部副部長のために善処したという噂も一部であるが、北朝鮮の人々が依然として見合いを肯定的に見ていることは間違いないようだ。やはりどの国でも政略結婚に本当の幸せはないのかもしれない。

郭 文完

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