日本の不動産取引はアナログすぎる...アメリカでの取引が“合理的かつ透明”と言えるワケ

日本の不動産取引はアナログすぎる...アメリカでの取引が“合理的かつ透明”と言えるワケ

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/05/14
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日本とアメリカで大きく異なる「不動産取引」。アメリカの不動産取引の特徴的な部分のひとつとして“エクスローを介しての取引”が挙げられますが、具体的にはどんなものなのでしょうか。本記事では「日米の不動産取引の違い」について、シアトルで不動産エージェントとして活躍している女性・森田さんとともに、アメリカ不動産コンサルティングを展開する村上年範氏が解説していきます。

日米の「不動産取引」大きく違うのは“時間”と“契約書”

村上年範(以降、村上) 森田さんはもともと日本の不動産業界にも携わっており、取引も経験されていますが「日本の不動産の取引のフローやスケジュール」にはどんな印象がありますか?

森田 日本の不動産売買取引には、「①不動産会社がある②売主と買主が直接不動産会社に行ってサインをする③現金で手付金を不動産会社に預ける」という独特な仕組みがあります。

また、物件を購入したいとなったら物件の買い付け申込書を出しますが、そこから売買契約に到達するまで何日かかかった記憶があります。一つ一つのやり取りで時間がかかるなと感じていました。

村上 それは現在でもそのままですね。日本の特徴として、買い付け申込書から実際の売買契約書をまくまでにまず時間がかかります。売買契約書から決済にもまた時間がかかります。

さらに特徴的なのが取引の最終段階です。売主、買主が銀行に行って、司法書士、銀行員も一緒に支店長室などに集まって、そこでみんなでハンコをついて司法書士が法務局に走るというイメージが昔からあると思いますが、今でもおこなわれています。

さて、一方でアメリカの不動産取引にはどのような特徴があるのでしょうか。まずは大きな特徴のうちの一つ、エスクロー取引(※)について、スケジュールやフローを教えてください。

※ エスクロー…第三者寄託。仲介サービスのこと。

森田 決定的な違いとして、アメリカでは買付証明書はなく、「売買契約書にサインした時点で購入の意思表示が既になされた」として、それが法的な契約書になるという点があります。

物件の申込書(オファー)=売買契約書を売主のエージェントに提出した時点で、その条件で売主がすべて承諾するならば、この時点で契約成立という形になり撤回することができなくなっています。

買い付け申込書=オファー=売買契約書にサイン・提出して相手側が承諾すると、2日後には手付金をエクスローに渡さなくてはいけないというかたちです。

日本だと買い付け申込書の段階で「やっぱりやめます」と辞退する場合もありますが、アメリカではそうはいかないので簡単な気持ちでオファーしない方がいいです。

アメリカの取引が「合理的でスピーディー」なワケ

村上 登記に関してもアメリカは特徴的ですよね。「電子登記」になっているかと思います。

森田 売買契約が成立するとエクスローがオープンしますが、エクスロー側で書類などをすべて預かって、「タイトルカンパニー」という登記をしたり権利関係のサーチなどをする会社に提出します。

アメリカではほとんどの場合、エスクローとタイトルカンパニーは同じ会社の中に分かれた状態であります。そのタイトルカンパニーが一括で登記の手続きを行うので、いちいち集まったり、日にちを合わせて何かをしたりすることは全くありません。

決済の日は普段通りに仕事をしていただいて大丈夫ですし、わざわざ決済のために移動したり予定を開けたりする必要はなく、電話一本の報告で終了となります。

村上 日本にはハンコの文化が残っているので、不動産取引でもハンコを押す場面が非常に多いです。一方でアメリカの場合だと、クラウドサインを活用しているので買主と売主が直接会うことも、エージェントがエスクローに直接会うこともありませんよね。

森田 その通りです。クラウドサインのおかげで合理化が図られて、書類関係はすべてオンラインでやり取りされます。時間の節約にもなっています。

契約書のサインもその後の銀行関係の書類もオンラインでできるので、いちいち契約書のためや決済のためにどこかに出向く必要が全くなく、旅行先や飛行機内ですら、アプリ一つでサインできてしまうほどのスピード感があります。

唯一出向かなければならないのは、売主が「この物件を買主に譲渡します」という書類を提出する際です。この場合は必ず本人がサインをしなくてはなりません。

ローンを組む方もローンの書類には本人が必ずサインをしなければならないのですが、こちらは代理人委任状というものを書けば第三者に委託することができます。その代理人委任状についても、最近では公証人がオンラインの向こう側にいて認証してくれるというシステムができているので、本当にどこにも行かなくてもいい時代になってきています。

村上 だからこそ日本人もアメリカの不動産に関与できる環境なのかなと思います。取引のスピーディーさにもかなり繋がりますよね。

アメリカの不動産取引の場合、MLSに上がってから売れて決済するまでの時間が体感で日本の場合よりも3倍くらい早いような気がします。

ディール(取引)のスピードはどうなっていますか?

森田 最近では14日クロージング、最長でも30日決済が一般的です。代金の支払いもオンラインでできますし、エージェントもなるべく面倒な手続きを無くして「パパッとクロージングしちゃいましょう」という様子です。

今はマーケットが激しく売り手市場なので、買主もなるべく早くクロージングさせようとします。クロージング期間が長いと買主側にとっても売主側にとってもリスクが高くなってしまいます。気が変わらないうちにという意味でも、なるべく早く決済したいのです。

村上 となると、イメージとしてはオファーを入れて決済するまで30日くらいということですね。日本だと2~3ヵ月はかかるイメージがあるので、まさに3倍速ですね。

中古不動産、“欠陥”が存在したら売主に責任はある?

村上 では、続いての話題です。日本のマーケットでは新築が7~8割、中古が2~3割と新築不動産が多く、中古不動産はなかなか取引されません。

アメリカは基本的に中古不動産マーケットが中心になりますよね。日本は新築が多いのでビルダーやデベロッパーが瑕疵担保責任を負い、もしもその不動産に何か問題があればビルダーやデベロッパーが責任を持つというルールがありますが、アメリカでも、売主側は不動産の瑕疵担保責任が問われるものですか?

森田 新築の場合は瑕疵担保責任があって、それぞれの設備に年数が細かく決められています。一方、アメリカにてとても活発な中古不動産には、売主に瑕疵担保責任のようなものはないのですが……。

あるとすれば、知っている事実を開示しなかったということに対して罪の責任が課される場合があります。例えば、屋根から水漏れしていることを知っていながら、それを報告しなかった場合、後からその事実が発覚して訴えられるというリスクはあります。

村上 けれど問題がある際でもそれを開示しておけば大丈夫なんですね。結局買主側の権利を行使しなければ売主側の瑕疵担保責任は問われないという認識なのですけれど……。

森田 その通りです! 中古不動産でも、売主側にはディスクロージャーステートメントというものがあります。知っている事実を買主に報告するための書類があり、数十項目に及ぶ細かい質問に対して答えを記載するものです。

法律的にこの書類を出さなくてはいけないということが決まっていて、買主はそれを受け取って「納得する」ことになるので、村上さんの言う通り、“知っていて買う”ということになります。

屋根からの水漏れがあったとしても、それを知っていて購入が成立したのであればまったく問題はない、ということです。

「詐欺」のリスクが少ない?

村上 続いて、日本では有名な大手不動産会社でも“地面師”などに騙されたりする場合があります。大きな損害を被ることもありますが、個人的にはアメリカの不動産取引の仕組みを見ると“地面師”という詐欺が成立しないような仕組みになっていると思います。この点はいかがでしょうか?

森田 そのような詐欺行為は絶対に不可能というわけではないのですが、アメリカにはタイトル会社という不動産の権利関係専門の保険会社があるため難しいでしょう。

まず不動産を売りに出すときにエージェントはタイトル会社にタイトルレポートという書類をオーダーします。このレポートは無料で出してもらえるもので、所有者や抵当権の有無、地上権などを含めた権利関係が書かれており、日本で言う登記簿のようなものにあたります。

そして、タイトル会社はタイトル保険というものを出しています。売主が買主のために保険を買いますが、このタイトル保険には購入した後に権利関係で瑕疵があったりウソの表記があったりして、買った側が損害を受けた場合にはそれを保証してくれる保険になっています。こういった保険やシステムがあるので、その点は保障されています。

日本とアメリカ、不動産取引をおすすめできるのは…

村上 最後に日本でも不動産会社に勤務経験があり、現在はアメリカでもエージェントとして活躍されていますが、不動産取引として、誠実か? 安全か? 安心か?と言った側面で見ると、日本とアメリカ、どちらの不動産取引がおすすめできると思いますか?

森田 もちろんアメリカの方がいいとは思います。そのように考える決定的な理由は情報がオープンだからです。どこへ行っても自分で調べられるし、不動産サイトでも過去の取引履歴が閲覧できます。

なので、その点に関してはエージェントなしに自分で調べられるし、そういったものを使って空室率や周辺の家賃相場などをある程度自分で調べることができます。そのため騙されることもあまりないでしょうし、空室率や物件の値上がり率など、不動産だけを考えてもトータル的にはアメリカ不動産の方がいいと思います。

エージェントを頼りつつ、自分で情報収集して理解を深めることが重要だと思います!

村上 ありがとうございました。今回は日本とアメリカの不動産取引の違いについて解説しました。

アメリカの不動産取引は、決済までの期間も非常にスピーディーなことがよくわかりました。さらに、アメリカの不動産取引は非常に合理的で、アナログな要素があまりないようですね。

不動産情報もオープンにされているため各自で調べることができますし、売買に関わる際にもクラウドサイトを活用でき、必要な書類を確認しながら当事者たちが一堂に介さずとも取引が成立します。さらに、電子登記によって決済完了と同時に登記も完了することで、詐欺に引っかかるようなことも起こりづらいマーケットになっているようですね。

これからアメリカの不動産投資に挑戦しようと考えている方は、スケジュールやフローを理解した上でチャレンジしていただければと思います。

【日米の違い】エスクロー取引が特徴的なアメリカ不動産取引とアナログでしかない日本の不動産取引の違い

※本記事は村上年範氏のYouTubeチャンネル『海外不動産のホントのトコロ』掲載動画を書き起こし、編集したものです。

村上 年範

クレディ・テック株式会社代表取締役

村上 年範

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