香取慎吾“ビジネスアイドル”歴35年にして初めて“デビュー”した日

香取慎吾“ビジネスアイドル”歴35年にして初めて“デビュー”した日

  • NEWSポストセブン
  • 更新日:2023/01/25
No image

「みんなの笑顔を見ることができて、幸せです」

香取慎吾……自他ともに認める「パーフェクトビジネスアイドル」だ。10才からステージに立ち、それから35年間、昭和・平成・令和と3つの時代をアイドルとして大きな笑顔で世に希望を与え続けてきた。

【写真】タキシードの似合うしぼられた体形に。

そしてこのたび、ソロアーティストとしては初のアリーナライブ『香取慎吾LIVE「Black Rabbit」』(東京・有明アリーナ)を開催し、2万人を動員。

走り続けるうちに抱える葛藤、怒り、不安などは、人だからこそ抱えてきたはずだ。それを表現にぶつけてきたのだろう。香取の歌、ダンス、舞台表現は明るく楽しいのに、魂に訴えるほどの「凄み」がある。

このライブ時は、画家として3年ぶりの個展『WHO AM I-SHINGO KATORI ART JAPAN TOUR- 』の期間中だった。絵画作品でも、光と闇のコントラストに救済が見え隠れし、心に訴えかけてくる。Black Rabbit=黒うさぎは、そんな彼の内面から生まれた表現なのだろう。

キャリアを積み続け、走り続けてきた香取は、どのようなパフォーマンスで観客を魅了するのだろうか。『沼にはまる人々』(ポプラ社)などの著書がある、ライター・沢木文がレポートした。

* * *

会場には、香取がプロデュースするアパレルブランド『JANTJE_ONTEMBAAR』(ヤンチェオンテンバール)を身にまとったNAKAMA(ファン)が多数。ファッションへの深い愛と造詣で知られる香取が作る服は、大人の気持ちをワクワクさせてくれる。

観客のメイン層は香取と同世代の40代、50代の女性。それでも“男性アイドル”のライブにしては、男性の割合もかなり多いし、親子、3世代と思われる姿も。

コンサート開始前から会場全体に「楽しい!」という気持ちが膨れ上がっていることがわかる。それがやがてアリーナの屋根を吹き飛ばすような熱気になり、待ちきれないファンたちは、開幕前から手拍子やペンライトで盛り上がりはじめた。

それが最高潮に達したタイミングで、ライブが始まる。オープニングのモノクロ映像には香取が生み出したキャラクターBlack Rabbitと本人が登場。そして、舞台奥の巨大なLEDビジョンが、香取の姿を照らし出す。輝くばかりの笑顔と純白の美しい衣装まとった彼が現れた。まさにパーフェクトアイドル。

まず、オリコン1位を獲得したファーストソロアルバム『20200101』の曲から熱唱。ラップやダンスなど切れ味も鋭く、1万人の目線は香取にくぎ付けに。

はじけるような笑顔で、「ハロー、東京!」と叫び、一気呵成に6曲を歌った。曲ごとに表情をガラリと変え、ダンサーチーム「SNG DANCERS」とともに、華麗なパフォーマンスで観客を香取が生み出すライブの世界に引き込んでいく。

曲もポップ、ジャズ、ロック、ヒップホップ、ソウル、テクノ、歌謡曲……数々の要素を含んでいることがわかる。香取の曲を知らなくても、圧倒的に楽しく、体が動き出す。会場には「みんな、仲間だよ!」というエネルギーがすみずみまでいきわたっていく。

これが、アイドルとして走り続けてきた彼の圧倒的な力だ。会場にいる誰一人として置いて行かないのだ。スタンドマイクを使った力強いヴォーカルもあり、歌手としての香取の底力を感じた。

水も飲まず、息もつかず6曲を全力疾走した香取に、ファンたちは万雷の拍手を送る。曲の間は軽々と歌っているように見えたが、MCに入ると肩で息をしており、なかなか整わない。それでも時間を惜しむかのように「ようこそ!」と声をかける。

なかなか落ち着かない呼吸に会場からは笑い声が。すると香取は「みんな笑っているけれど、久々のスタンディング(ライブ)で、みんな同じでしょ?」と話しかけ、その親しみあふれることばに、会場は笑いと一体感に包まれた。会場全体と目線を合わせる。このときに、観客全体の手がつながれて輪になったことを感じた。

「楽しい! 最高! こんな大きなところでライブする日が来るとは……」と、感無量といった様子で語りかける。長引くコロナ禍、ここにくるまでの香取のキャリアと人生……成功までの努力や理不尽との戦いなど、さまざまな経験を乗り越えてきた重みが伝わって来た。

そう、氷河期世代の私達は彼とともに成長してきた。彼の笑顔に元気をもらうだけでなく、自分を投影し、鼓舞し続けててきた。

大河ドラマ『新選組!』(2004年)で初主演したこと、“慎吾ママ”のキャラで老若男女をとりこにしたこと、2021年に紺綬褒章を受勲したこと……常に自らを超えていく香取の姿を見ながら、社会で生き延びる気力を得ていた人も多いはずだ。

このアリーナコンサートは、香取がソロになってからの、ひとつの大きな目標だったのだ。それを達成した瞬間、同じ空間にいて彼を応援していることに、腹の底から気力がわいてきた。

ライブの中盤は50年代アメリカを思わせる、大人の雰囲気に。ジャズ要素が強いセカンドアルバム『東京SNG』の曲をメインに、タキシードを着た香取が熱唱。

華麗な演奏は「SNG BAND」のメンバーたち。きらめくような音が、香取ののびやかで表情豊か、そしてカラフルな歌声とシンクロしている。1万人規模のアリーナでありながら、どこかのジャズクラブにいるような親密さもあり、音楽そのものを堪能。

それにつけても、観客のペンライトパフォーマンスにも舌を巻いた。曲のカラーに合わせて、ライトの色を切り替えて、リズムに合わせて振っている。魂がこもる技巧的な音楽に身を委ねつつ、光の洪水が動く様子、会場の一体感にも包まれる。「アイドルのコンサート」でありながら、一流ミュージシャンの演奏も楽しむという、贅沢な時間を味わった。

MCでも観客の心をつかむ。稲垣吾郎が前日来てくれたこと、そして、めったに電話をしない稲垣なのに、「“あの曲で泣けたよ”と言ってくれたの。うれしかった」と語り、「今日はつよぽん(草なぎ剛)が来て……いないんです」と笑いをとった。

草なぎは、現在放送中の主演ドラマ『罠の戦争』(フジテレビ系、月曜夜10時)の撮影中。復讐をテーマにしたこの話題作の主題歌は、新曲『BETTING』(香取慎吾×SEVENTEENによるコラボレーション楽曲)だ。1月17日に配信したばかりのこの曲もアンコールで初披露した。

ライブ後半は、「今っぽい新しい音楽」と誰もが思う楽曲が次々と登場した。そのバリエーションがあまりにも豊かなので、アルバムのライナーノーツを詳しく見る。するとそこには「feat.○○」とあった。これは、フィーチャリングの略で、メインのミュージシャンのほかにゲスト参加する人を指している。

後半で参加したのは、ミュージシャン・田島貴男、ポップバンド・yahyel、ラッパー・KREVA、ソウルバンド・WONKなど。時代の先端を走る彼らと作った個性あふれる曲を、香取は華やかで切れ味あるダンス、パワフルで優しい歌声で表現していく。

ロック、ソウルなどの音楽のジャンルの「いいところ」を香取がくっきりと表現。曲ごとにジャンルは変わっているのに、調和している。これは彼のライブでないと体験できないことだと感じだ。

舞台演出も細部まで技巧を凝らされていた。照明、映像、ファイヤー演出も舞台をダイナミックに引っ張って行った。闇と光と優しさと……まさに香取の絵の世界が、この舞台にあったのだ。

ライブの最後には、「こんなに大きな場所で皆さんと楽しい時間を過ごせているのが、信じられない」と喜びを語る。

さらに、小学生の頃、マイケル・ジャクソンの東京ドーム公演に行き、彼と目が合った気がしたこと。その後、自身が東京ドームでライブを行った時、ステージに手をつき「マイケル、やっとここまで来たよ」と言ったという、自らの思い出を語った。

幼いころからステージに立ち、アイドルでありアーティストとして前進し続け、常に喜びと光を私たちに見せてきた香取。マイケルと重なるところがあるような気がした。

ライブの間、「大好きな歌とダンス」、「みんなの笑顔を見ることができて、幸せです」「とても楽しい」「ありがとう」という言葉を何度も繰り返し、「一緒に明日を生きましょう!」「また一緒に遊ぼうね」という言葉で締めくくった。

鳴りやまない拍手と、繰り返されるアンコール。彼が希望を歌うアーティストなのだ。誰もが香取を好きになってしまう……その強烈な陽の力は魂に温かかった。

文・沢木文

NEWSポストセブン

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加