去年6月、金沢市内で赤信号を無視して交差点に進入し横断していた男性を車ではね死亡させたとして、運転手の長谷川玲子被告(47)と、長谷川被告に信号無視を指示したとして助手席に乗っていた寺崎太尊被告(31)が危険運転致死の罪に問われている裁判員裁判。
25日は長谷川被告の被告人質問が行われ、被告自ら当時の状況などを語りました。
プライベートの送迎もしていた長谷川被告「断ると言い合いになるのが疲れてしまう」
長谷川被告は寺崎被告と同じ建設会社に勤めていて、上司である寺崎被告の運転手をしていました。運転は仕事だけでなく習い事などのプライベートの用事でもしていた長谷川被告。事件が起きる前から一方的な口調の寺崎被告の指示になるべく応えていたと話します。
長谷川被告
「断ると言い合いになるのが疲れてしまうので、とりあえずいうことを聞いて。太尊が急いでほしい時とか、早く飛ばしてと言われたら早く飛ばしたりとか。断るとため息つかれたり、馬鹿にされた口調で言われる。内面ではすごく傷つくが、冗談で笑ったり、冗談で返したりしていた」
不眠症と不安神経症の症状がある長谷川被告は、寺崎被告の指示にもストレスを感じていて、事件の前の日の夜も薬を服用して眠りにつきました。
赤信号前に減速始めるも「止まらんでいいから」と助手席から指示か
事件当日、金沢市の繁華街・片町に寺崎被告を迎えに行った長谷川被告は、野町広小路交差点を右折して事件現場の白菊町交差点のある通りに出ました。
長谷川被告は右折してすぐに白菊町交差点の信号が赤だと確認し、その手前で減速を始めたと言います。すると…
長谷川被告
「太尊に止まらんでいいからと言われました」
寺崎被告からの信号無視の指示に驚くも、長谷川被告は「無理無理無理」などと拒否します。しかし、「早く急いで、時間ないから」「ここから来んから、ここから」などと急かされ、混乱していたところ車は自転車に乗っていた男性をはねました。
長谷川被告
「それまで自転車が来たことにも気づいていませんでした」
長谷川被告はこの時、信号機の色も周囲の車の状況も見ておらず、さらにはブレーキやアクセルを踏んだ覚えもなかったと話します。
被害者の安否確認することなく…寺崎被告「やっちまったね」
男性をはねた後、近くに車を止めようとする長谷川被告に寺崎被告は「行こ行こ」と声をかけました。「もう!」と声を荒げる長谷川被告に寺崎被告は「やっちまったね」と続けました。
車から降りて倒れている男性のもとに駆け寄った長谷川被告は「ごめんなさいごめんなさい」と謝りながら救急車が来るのを待ちましたが、この間、寺崎被告が車から降りてくることはなかったと言います。
免許証を取りに車に戻った長谷川被告に寺崎被告は「現場行かんなん」と話すことはありましたが、被害者の安否を確認することはありませんでした。
「ありのままに言おうと思って…」取り調べで長谷川被告が話した内容は
その後、警察の調べに対し長谷川被告は信号機を見ていなかったことを「赤信号を無視した」と説明し逮捕されたと言います。検察庁には「寺崎被告の指示を受けてブレーキを踏まなかった」という当時の長谷川被告の発言記録が残っていました。
長谷川被告(取り調べ時)
「太尊をはじめかばったんです。私が悪いんですから、正直にありのままに言おうと思って、現場検証で言いました」
「捕まらなければいいと思うのもありました」スマホ操作して運転も
一方で長谷川被告は普段から道路の状況によって制限速度を超えたスピードを出していて、20キロ以上飛ばすこともあったということです。危ない運転を寺崎被告に注意されることもありました。
長谷川被告
「スマートフォンを私ハンドルに装着できるようにしていて、触ってしまったりとか…わき見はないですから。スマホ操作危ないよと言われたことがある」
そして、裁判員から交通ルールについて問われると次のように答えました。
長谷川被告
「スピード出すときもあったが、事故らんようにって思ったり、捕まらなければいいと思うのもありました、スピードの時とか」
検察官
Q・事故の原因は?
A.私の日々のストレス溜めていることが原因かなって。
Q.全く悪いと思っていない?
A.(首を大きく横に振る)
Q.ブレーキを踏めば何言われても回避できたのでは?
A.運転の指図の…指示のストレスが無かったら、事故は…ブレーキを踏めていたかもしれません。
遺族に充てた手紙「心の病からきて 死亡事故を起こしてしまった」
長谷川被告は事件の後、遺族にあてた手紙を出していました。
被害者参加弁護士に手紙の意図を問われると「今回の事故は飲酒運転でもなく、私の心の病から来て、運転できる状況になくなったので死亡事故を起こしてしまった。申し訳ないと思いました」と説明しました。
5月29日には寺崎被告の被告人質問が予定されています。