日本と韓国、何がダメなのか? 「関係悪化」を大国に利用されている

日本と韓国、何がダメなのか? 「関係悪化」を大国に利用されている

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2021/01/13
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旧日本軍の元慰安婦が日本政府に慰謝料を求めた訴訟で、韓国の裁判所は日本政府に慰謝料を支払うよう命じた。日本政府は強く反発し、元徴用工問題をきっかけに冷え込む日韓関係をさらに悪化させるのは必至となった。

日韓の関係悪化は、双方の安全保障問題に暗い陰を落している。地政学的に良好な関係の維持が欠かせない日韓の両政府間にまともな対話がなく、連携が困難な現状は米国、ロシア、中国といった軍事大国の思惑がそのまま通る形となっているからだ。

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韓国の文在寅大統領〔PHOTO〕gettyimages

米国の「攻勢」

まず、日韓双方の同盟国の米国は、駐留米軍経費負担をめぐって、日本と韓国に対して攻勢に出ている。その解説をする前に海外の米軍基地についての説明が必要だろう。

米国防総省が公表した2018米会計年度の「基地構造報告書」によると、米国は世界45カ国に米軍基地を置く。そのうちドイツが194基地と最も多く、日本が121基地、韓国が83基地の順だ。

欧州と東アジアに米軍基地が多いのは、米国が第2次世界大戦で欧州戦線と太平洋戦線に参戦したことによる。終戦後、ソ連と対立する冷戦に突入し、駐留を継続した。

冷戦が終わると、米国は海外基地を整理・縮小したが、ロシアによるウクライナ内戦への介入やクリミア半島併合があり、欧州の駐留は継続。東アジアでは、北朝鮮が核・ミサイル開発を進め、また中国が急速に台頭したことにより、在韓米軍、在日米軍の存在意義が薄れることはなかった。

米軍基地は地域経済に貢献する一方で、米政府は基地が所在する各国政府に対し、駐留経費の負担を求めている。

米国防総省が2004年に発表した駐留経費の統計によると、日本の負担額は44億1100万ドルでトップ。駐留経費の実に74.5%を負担している。次いでドイツが15億6400万ドル(32.6%)、韓国が8億4300万ドル(40%)と続く。

日本はドイツ、韓国と比べても、気前よく駐留経費を支払う「スポンサー国」となっていることがわかる。

米国が各国政府と結んだ地位協定をみると、ドイツ、イタリアの米軍基地に当該国の主権が及ぶのに対し、日本の米軍基地は日本側が立ち入れない不可侵領域となり、米兵には日本の法律も及ばない。米軍にとって日本は天国のような国なのだ。

在日米軍の傭兵化?

韓国と米国間の駐留経費負担をめぐる取り決めは「在韓米軍駐留経費負担に関する特別協定(SMA)」と呼ばれ、1991年以降10回締結された。期間は5年で、2019年9月から第11回SMAへ向けた交渉が始まった。

韓国側は、トランプ米大統領が「安保無賃乗車論」や「同盟国の駐留経費100%負担」を主張していたので、米側からの増額要求は覚悟していたものの、蓋を開けてみれば、それまでの負担額の5倍以上となる約50億ドル(5250億円)の要求が突きつけられた。交渉は何度も決裂し、協定は19年末に期限切れとなった。

2020年3月に7回目の協議が開かれ、双方は韓国の19年の負担額(1兆389億ウォン=約980億円)から約13%引き上げる案に暫定合意したが、トランプ米大統領が増額を求めたことから合意には至らなかった。

一方、日本は米国との間で1987年以降、「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」を結び、駐留経費の負担を増額している。特別協定は、基地従業員のボーナス・給料などの労務費、米兵が基地内外で使う光熱水料、沖縄の基地負担軽減などの訓練移転費の3項目で、本年度の負担額は1623億円。これとは別の米軍施設整備費、基地周辺対策費などを含めると在日米軍関係経費の総額は5930億円にのぼる。

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2020年度の在日米軍関係経費=防衛省のホームページより

現行の特別協定は5年間で、今年3月に期限切れを迎える。

トランプ大統領は、日本に対しても、さらなる上乗せを求めていた。ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)は昨年6月に出版した回顧録で、19年7月の訪日時に谷内正太郎国家安全保障局長(当時)に対し、年間80億ドル(8400億円)の駐留経費を求めたことを暴露した。

日本が要求通りに負担するとなれば、米軍が必要とする駐留経費を上回り、米政府が差額を懐に入れることになる。在日米軍の傭兵化である。

トランプ氏は初当選した16年の大統領選のときから、日米安保体制を批判。駐留経費を日本が全額負担しなければ、米軍の撤退もありうると牽制しており、特別協定をめぐる日米交渉の難航は必至だった。

特別協定をめぐる日米協議は昨年11月から始まった。本来、夏ごろ始まるはずだったが、コロナ禍と米大統領選により、スタートがずれ込んだ。日本側は、2021年度予算案編成の関係から12月にはまとめたい意向だったが、米側が示したのは現行特別協定の2倍以上の金額だったとされる。飲めない話だった。

トランプ大統領という狂気が去り、バイデン新大統領という別の難物が現れた形だ。

特別協定をめぐる対米交渉が先行した韓国に対し、後発の日本。日韓両国の連携が取れていれば、「米国の出方」を共有し、日韓双方の利益になる知恵が出せるのではないだろうか。

ロシアと中国の「軍事的挑発」

次にロシアと中国による日韓両国に向けられた軍事的挑発について見てみる。

防衛省によると、2019年7月23日朝、中国の爆撃機2機が東シナ海から日本海にかけて飛行して日本の防空識別圏に入り、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した。

その後、ロシアの爆撃機2機が中国機に合流、すると近くにいたロシアの早期警戒機1機が、竹島東側を南下して同日午前9時9分から約3分間にわたって領空を侵犯した。

この領空侵犯に対し、竹島の領有権を主張する韓国は、韓国空軍の戦闘機を緊急発進させ、機銃360発余りの警告射撃を行ったと発表した。

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ロシア機が領空侵犯したルート=統合幕僚監部のホームページより

ちなみに日本政府は、日本の離島のうち、竹島と北方領土の2カ所について、韓国、ロシアとの偶発的な衝突を避けるため、緊急発進の対象から外している。

一連の事案について、日本の外務省はロシアと韓国に対し、抗議した。

抗議の理由について、当時、河野太郎外相は「竹島は我が国の領土なので、領空侵犯をしたロシアに対しては我が国が対応するものだ。韓国が措置を行うのは、我が国の立場と相いれない」と述べた。

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竹島上空の領空を侵犯したロシア機=統合幕僚監部のホームページより

一方、韓国はロシアに抗議するとともに、日本からの抗議について韓国外交省関係者が「主張は受け入れられない」と語ったと伝えられる。

ロシアと中国が協力して、日本と韓国の防空態勢を揺さぶった異例の事態。当時、日韓の間では元徴用工問題をめぐって対立が深まり、軍事面の協力関係も韓国海軍による海上自衛隊のP1哨戒機への火器管制レーダー照射問題によって冷え込んでいた。

ロシアと中国は、日韓の関係が悪化した間隙を突き、双方の対処能力にどのような変化があるのか見極めようとしたのではないだろうか。正常な関係が維持されていれば、情報の共有をはじめとして、連携して対処することも考えられるが、この事案では一切、協力することはなかった。まんまと挑発に乗せられ、互いに反目を強めただけである。

ロシアと中国による挑発は昨年12月にもあった。

両国国防省の発表によると、両国の爆撃機6機による日本海と東シナ海の合同飛行は10時間以上に及んだ。昨年7月に続く2回目の実施だ。

中国軍は西太平洋からの米軍の排除を目指しており、対米けん制でロシアと連携する意味は大きい。合同飛行は定例化しつつあり、規模も拡大するとの見方もある。

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ロシア機(TU-95)と中国機(H-6)の合同飛行ルート=統合幕僚監部のホームページより

国民に少しでも安全安心を…

米国をハブとする日米、米韓の協力態勢は、日韓の連携が成立して、初めて効果を発揮する。ご近所のいがみ合いが不毛な消耗戦となり、強欲な第三者の利益を拡大するようでは、お話にならない。

大統領の任期を1年4カ月残し、レームダック化しつつある韓国の文在寅大統領。新型コロナをめぐり、まともな対策を打ち出すことができず、内閣支持率がガタ落ちする菅義偉首相。ともに両国関係の改善に汗を流し、それぞれの国民に少しでも安全安心を提供してはどうか。

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