「仕事に向かう途中、事故に!」通勤・就労中のけが・病気・障害を保障する〈労災保険〉の全容

「仕事に向かう途中、事故に!」通勤・就労中のけが・病気・障害を保障する〈労災保険〉の全容

  • 幻冬舎ゴールドオンライン
  • 更新日:2022/11/25
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業務上にケガをして働けなくなってしまっては大変です。今回は、業務上のケガや病気、通勤時のケガや病気を補償してくれる、労災保険について見ていきます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

「労働者災害補償保険」って、どんな制度?

労働者災害補償保険は、労働者が、業務上の事由または通勤によって、けが・病気・障害になってしまい、介護が求められる・死亡してしまう場合に保険給付がおこなわれる制度です。

一般に「労災保険」と呼ばれます。

労災保険の保険者は国、その窓口は各都道府県の労働基準監督署となっています。

★労災保険の加入義務

労働者とは有償で他人に使用される者のことをいい、労働者を1人でも使用する事業は、原則として、労災保険に加入しなければなりません。これを労災保険の強制適用事業といいます。

労災保険の対象者は、パート・タイマ一、アルバイト、日雇労働者、外国人も含めて、すべての労働者です。

それに対して、個人事業主とその家族、法人の役員は、使用者となるため、労災保険は適用されません。

★労災保険の保険料

労災保険の保険料率は、事業主や会社が全額負担することになっています(事業の危険度などによって異なる)。

労災保険の大分類…「業務災害」「通勤災害」とは

労働災害の認定は、労働基準監督署がおこないますが、それには業務災害と通勤災害があります。

★【業務災害】業務中での災害

業務上の事由による災害を業務災害といいます。通常の業務中だけでなく、業務命令による出張中の事故もすべて業務災害となります。

★【通勤災害】通勤中での災害

通勤災害とは、通常の経路で自宅と会社との間を往復する途中に遭遇するものをいいます。

◆CASE STUDY

①通勤途中、経路から離れたコンビニに立ち寄って日用品を購入した際に災害

→通勤経路から逸脱した後の事故は、原則として通勤災害の扱いにならない

②コンビニに立寄ったあとに、通常の通勤経路に戻ってから災害

→通勤経路での事故となるため、通勤災害の扱いになる

上記のケースのように、通勤災害を認定するための判断基準は難しいものとなります。

一般的には、「業務遂行性」と「業務起因性」の2つの基準によって判断がなされます。業務遂行性とは、事業主の支配下で仕事をしている状態にあったということです。一方、業務起因性は、業務と傷病との間に因果関係があるということです。

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[図表1]労災保険の通勤災害

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[図表2]労災保険の概要まとめ

労災保険給付には、3つの種類がある

労災保険給付には「療養給付」「休業給付」「傷病年金」の3つがあります。

それぞれについて解説します。

①療養給付と療養補償給付 ~ケガや病気の療養~

Ⅰ 療養給付

業務上の事由によるけがまたは病気により療養が必要となる場合には、労災病院などで療養を受けることができます。これを療養給付といいます。労働者の自己負担はありません。ただし、通勤災害のみ、初診時に200円だけ自己負担があります。

Ⅱ 療養補償給付

最寄りの地域に労災病院がないなど、療養給付を受けることが困難な場合は、療養に必要な費用の全額が支給されます。これを療養補償給付といいます。

②休業補償給付 ~療養中の賃金補償~

労働者が、業務上のケガまたは病気を療養するために休業して、賃金が支払われない場合、収入を保障する制度があります。これを休業補償給付といいます。

賃金の支払いを受けない休業4日目から、給付基礎日額の60%が休業補償給付として支給されます。

3日目までは事業主が補償します。ここで、給付基礎日額とは、保険事故が発生した日以前3ヵ月間の平均賃金日額のことをいいます。

◆給付基礎日額の計算方法

給付基礎日額

=過去3ヵ月間の賃金総額(賞与は除く)÷その3ヵ月間の総日数(日・祝日含む暦日)

※年齢別に上限・下限あり

例:3ヵ月の月額が40万円、日数が91日の場合

40万円 × 3ヵ月 ÷ 91日 = 13,187円

③傷病/障害補償年金 ~傷病等級や障害に応じた年金~

ケガや病気が重度であったり、障害が残る場合は、年金や一時金を受け取ることができる制度があります。

Ⅰ 傷病補償年金

業務上のケガや病気が、1年6ヵ月を経過しても治らないほど重い場合には、傷病等級に応じて、年金が支払われます。これを傷病補償年金といいます。傷病補償年金が給付される場合には、休業補償給付は給付されません。

Ⅱ 障害補償年金

業務上のケガや病気が治ったあと、一定の障害が残っている場合には、障害等級に応じた年金または一時金が支払われます。これを障害補償給付といいます。障害補償給付には、年金払いと一時金払いがあります。障害等級1級から7級までは年金が支給され、8級から14級までは一時金が支給されます。通勤災害にも同様の給付があり、障害給付といいます。

災害で介護が必要となった場合に支給…介護補償給付

傷病補償年金や障害補償年金の受給者に介護が必要となった場合、その費用が支給されます。これを介護補償給付といいます。

通勤災害にも同様の給付があり、介護給付といいます。

災害で労働者が亡くなった場合に支給…遺族補償給付

業務上の事由により労働者が死亡した場合、その遺族に対して年金が支給されます。

これを遺族補償給付といいます。

遺族補償給付にも、年金払いと一時金払いがあります。

遺族補償の年金払いは、給付基礎日額の153日分から245日分までの年金が支払われます。

年金を受け取ることができる遺族には年齢制限と受給順位がありますが、受給順位は、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹の順番となっています。

遺族補償の一時金は、年金を受け取ることができる遺族がいない場合に支払われます。

通勤災害にも同様の給付があり、遺族給付といいます。

労働者の葬祭費用を補償…葬祭料と葬祭給付

業務上の事由により死亡した労働者の葬祭に要する費用を補償するため、葬祭をおこなう人に葬祭料が支払われます。

なお、通勤災害にも同様の給付があり、葬祭給付といいます。

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

岸田 康雄

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