「佐久間さん、“おもしろい”ってなんですか?」佐久間宣行×テニスコート神谷×ダウ90000蓮見

「佐久間さん、“おもしろい”ってなんですか?」佐久間宣行×テニスコート神谷×ダウ90000蓮見

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  • 更新日:2022/05/21
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『ゴッドタン』(テレビ東京)や『トークサバイバー!』(Netflix)など、お笑いをフックに数々のヒットコンテンツを手がけ、劇団ひとりやおぎやはぎ、東京03などをフックアップしたことでも知られるテレビプロデューサーの佐久間宣行。

佐久間が注目した人やコンテンツがヒットする現象も珍しくはなくなってきたが、ここ数年彼に注目されながらも、今一歩現状の活躍に満足できていない人がいる。コントユニット・テニスコートの神谷圭介だ。

2002年、武蔵野美術大学在学中に吉田正幸、小出圭祐と共にテニスコートを結成した神谷。現在では小劇場だけでなく誌面やテレビまで活躍の場を広げ、俳優としての活動はもちろんのこと、テレビドラマなどの演出・脚本を手がけ、最近では「画餅(えもち)」というソロプロジェクトを立ち上げるなど、マルチに活躍している。

今回は、同じくコントユニットを主宰する蓮見翔(ダウ90000)も迎え、3人で「演劇やコントで売れるには」をテーマに語ってもらった。後編では、『トークサバイバー!』(Netflix)や『ゴッドタン』(テレビ東京)といったヒットコンテンツにも触れながら「おもしろさ」について考える。

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インタビュー前編

「佐久間さん、売れるにはどうしたらいいですか?」佐久間宣行×テニスコート神谷×ダウ90000蓮見

『トークサバイバー!』は「マジ歌」のドラマ版? マジなほうがおもしろいという構造

──演劇好きだけではなく、より幅広い層にリーチするためには、テレビというメディアの可能性はいかがでしょうか。テレビでコントをやろうとするのはやっぱり難しいんですか?

佐久間 うーん、テレビって昔ほど万能じゃないから、いい組み方をしないとあまりメリットにはならない気がする。

──たとえば、テレビではなく配信番組ですが、『トークサバイバー!』は「役者の演技×芸人のトーク」のかけ合わせが見事だったと感じました。あの企画やキャスティングにはどんな意図があったんですか?

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佐久間宣行(さくま・のぶゆき)1975年11月23日、福島県生まれ。テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。『ゴッドタン』、『あちこちオードリー』(いずれもテレビ東京)、『トークサバイバー!』(Netflix)などを手がける

佐久間 実は、あれ「『ゴッドタン マジ歌選手権』のドラマ版」なんだよね。マジでやってるのにツッコめるっていう、「マジ歌」の構図を作るつもりだったから、監督にも「自分のプランの中で一番ダサい、マジを持ってきてもらっていいですか」と伝えて、できたのが『トークサバイバー!』。

そのニュアンスがわかる人に出てほしかったから、お笑い好きの間宮祥太朗くんや東出昌大くん、高橋ひかるちゃんをキャスティングしてる。特に東出くんには、記号として、出てきた瞬間に笑っちゃうような役割も担ってもらってるから、それをシャレとしてわかってくれるセンスも大事で。そうじゃないと、完パケ観たあとに、「笑いものにしてんじゃねえ」って言われちゃうから(笑)。

──「『マジ歌』のドラマ版」っていうのは納得感あります。確かに、役者さんがドラマパートでガチになればなるほど、おもしろくなる構図でしたもんね。それで言うと、佐久間さんは『ゴッドタン』の番組内コントでも、芸人さんではなく劇団所属の役者さんを起用していますね。

佐久間 あれも同じ理由だね。「マジなほうがおもしろい」という構造がわかる人。あと、コントに芸人を起用すると、振りの段階で笑いが欲しくなっちゃうというのもある。小笑いを入れちゃうんだよ。もちろん、役者でも笑いは起きるんだけど、芸人の“欲しがる笑い”とは違うから(笑)。

──役者だと振りに徹することができるってことですか。

佐久間 振りに徹しつつ、笑いを取ってくれる人となると、小劇場でお客さんを笑わせてる役者が一番得意なんだよね。

神谷 その発想で人を呼んでる人、テレビ観ててもあんまいないですよ(笑)。

矢沢や長渕がおもしろい。突き抜けたカッコよさは笑える

蓮見 佐久間さん、ちょっといいですか。自分の話で申し訳ないんですけど、僕、「マジ歌」がすごい好きで。武道館ライブにも行ったことがあって。

(フットボールアワーの)後藤(輝基)さんとかだとダサイ要素もありますけど、カミナリさんのラップはマジでカッコいいじゃないですか。それなのにおもしろいって意味がわからなくて。実はそのときの気持ちから、ダウ90000を始めたところがあります。

『ピーク』というコントが、まさにそれを体現してて。別にボケもツッコミもないけど、本当にいいものを見せたら笑ってもらえるんだ、って思って作ったんです。

ダウ90000 コント「ピーク」

佐久間 へーー!

蓮見 「マジ歌」の発想って、どこから来てるんですか?

佐久間 もともと「マジのほうがおもしろいかも」って気づいたのは、『ゴッドタン』の「キス我慢選手権」。劇団ひとりがマジなセリフを言うのが、なんでおもしろいんだろうなって考えてて。で、それから少しして、オークラさんから「(東京03の)角ちゃんが離婚したばっかなんだけど、離婚を歌にしたやつがあって、それがすげえおもしろい」と教えてもらって。要はブルースなんだけど、これがなんでおもしろいんだろう、とオークラさんと考えたの。

そこで出た結論なんだけど、よく考えると矢沢永吉さんとか長渕剛さんっておもしろいよなと。カッコいいんだけど、あそこまでいくとカッコいいを越えるというか。その人以外がやるとカッコ悪いというレベルになると、おもしろさが生まれる。

神谷 なるほど。

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蓮見翔(はすみ・しょう)1997年4月8日、東京都生まれ。8人組コントユニット・ダウ90000主宰

蓮見 わかります。ロッキンに行ったとき、松任谷由実さんが出てて。「真夏の夜の夢」のイントロが流れて、歌い出しで松任谷さんがパッと袖から出てきたんです。そしたら、すごい短いズボン履いてて、その瞬間、ステージに炎がバンって上がって。これユーミンじゃなかったらとんでもないぞって(笑)。

佐久間 俺は一度、矢沢さんをフェスで観たことがあるんだけど、まだ矢沢さんがステージにいないのに、ヘリの音だけしたんだよ。バリバリバリ!!って。

蓮見 会場は、「おい嘘だろ?(笑)」って感じでしょうね。

佐久間 そういう演出だと思うんだけど、それがおもしろかった。マジは突き詰めるとおもしろいんだよ。

「おもしろい」は一番伝えるのが難しい

「おもしろい」は一番伝えるのが難しい

──少し余談もありましたが、今回いろいろと話を聞いてみて、神谷さんとして道は切り開けましたか?

神谷 本当に、みんながこれだけ考えて戦略を立ててるのに、なんで僕はいい歳して気づいてなかったんだろうって不安になりました。でもだからこそ、画餅はなんかおもしろいぞと思ってもらえるように、今日の意見を参考にさせてもらいます。

佐久間 俺は「おもしろさ」が、一番伝えるの難しいなと思ってて。だから、基本的にはおもしろさは伝わらないものとして、しっかり宣伝しないとダメだよ。あの『M-1グランプリ』で優勝したって、半分くらいの人は「あいつらつまんねえじゃん」とか言うじゃん。めちゃくちゃおもしろいのに。

神谷 あー、「何がいいの?」とか言いますよね。

佐久間 そうそう。結局「つまらない」は言いやすいのよ。「おもしろい」が一番伝わらないっていうのはそういう意味。「おもしろい」には力があるけど、不安定だから。「おもしろい」に辿り着かせるには、けっこういろいろな準備をしておかないとすぐに「つまんない」っていう人たちが出てきて、観に行かない理由とかを組み立てられたりするからね。

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神谷圭介(かみや・けいすけ)7月30日、千葉県出身。コントユニット・テニスコートのメンバー。演劇やコントの出演・演出・脚本だけでなく、構成作家やイラストレーターなど、活躍の場は多岐にわたる

神谷 確かになあ。今回、画餅をやってみて気づいたことがあって。なんか、別に演劇で90分やらなくてもいいかと思って、短編集のような世界観で作ってみたんです。このスタイルで、ひとつずつクオリティを上げた短編をつづけていけるなら、楽しいなって。

佐久間 あ、それはめちゃくちゃいいと思う。

神谷 でもその入口をどう広げていこうかなあ。

佐久間 まあ、でも一番の問題は、テニスコートはおもしろいのにジャンルがなんだかわからないことじゃないかな(笑)。

神谷 僕の中では、テニスコートはテニスコートだと思ってて。あれで売れたいというよりは、芸術活動になってしまったような。だからこそ、画餅では個人としていろいろやっていきたいんですよね。

蓮見 なんか、ちょっと思ったんですけど、「表現したい人」として見られると、売れにくいんじゃないかなと思うんですよね。画餅のフライヤーって、めちゃくちゃいいんですけど、「売れたい人」には見えなかったというか。きっと、お客さんは「何かを伝えたい人の作品を観に行く場所なんだな」と思って行く。僕にとっては、演劇全体のイメージがそれです。

佐久間 それはあるかもしれないな。だから、この人は「メッセージを伝えたいんだな」って思われると。

神谷 ちょっと敷居を高く感じてしまう。

蓮見 ダウ90000は若いので、普通に公演打ったら「明るく楽しくやります!」みたいになるんですけど、神谷さんぐらいの年代だともう絶対に表現しに来てる人たちだと思われると思うんで、そこは難しいかもしれないですね。

神谷 もっとライトな入口の作り方ってことですよね。

佐久間 それかもうどっちかよ。楽しいほうにするか、神谷くんがロックスターになるか。

神谷 ロックスター?

佐久間 いや、ごめん。ロックスターっていうたとえをしちゃったけど(笑)。つまりは、チームを背負って、自分が矢面に立って活動するってこと。蓮見くんは、そういう部分も自覚的にやってると思うんだよね。根本宗子さんとかもそうで。

お客さんを連れてくるっていうときには、やっぱり誰かがランドマークとして腹をくくって、ロックスターみたいにならないと、新規の客は呼び込みにくいと思う。

神谷 なるほど。その覚悟が必要なんですね。

佐久間 ただ、その覚悟を持つのはちょっと怖いよね。

神谷 怖いです。でも、画餅を始めたときに、それはやろうと思ってました。だから……よし、僕はロックスターになるぞ。

早川大輝

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