井上科学技術相の「軍事研究強要」で見えた学術会議の任命拒否理由

井上科学技術相の「軍事研究強要」で見えた学術会議の任命拒否理由

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  • 更新日:2020/11/20
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未だくすぶりつづけている、菅義偉首相による日本学術会議の「6人任命拒否」問題。その本質ともいえるのが「軍事研究」にあると説くのは、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんです。内田さんは、参院内閣委員会で井上科学技術担当相が「軍民両用技術(デュアルユース)」という防衛用にも民生用にも使える技術について否定的な日本学術会議に再考を求めた答弁内容から透けてみえた、「任命拒否」と「軍事研究の否定」の因果関係を東京新聞の記事を元に炙り出しています。

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日本学術会議問題から浮上した「軍民両用」を新聞はどう報じてきたか?

きょうは《東京》です。菅総理が日本学術会議の会員候補のうち6名の任命を拒否した問題を巡り、3面に記事がありました。そのなかに「軍民両用」という重要な言葉が出てきます。この「軍民両用」で検索を掛けると、5年分の記事のなかから14件にヒットしました。

まずは3面の記事。見出しから。

学術会議に「軍民両用」検討求める井上担当相 見直し議論絡め転換促す

井上信治科学技術担当相が参院内閣委員会での答弁で、軍民両用(デュアルユース)について、「時代の変化に合わせて冷静に考えていかないといけない課題だ」と述べ、軍事・安全保障分野の研究に否定的な日本学術会議に再考を求めていることを明らかにしたという。

これについて《東京》の記者は「菅義偉首相が進める組織の見直し論議に絡め、学術会議に方針転換を促した格好」と評している。

●uttiiの眼

井上氏の答弁を引き出したのは自民党の山谷えり子議員。インターネットやGPSを例に挙げて「現代は民生技術と安保技術の境界がなくなってきている。学術会議が学問の自由をむしろ阻んでいるのではという声もたくさん上がっている」として、学術会議が軍事目的の研究と一貫して距離を置いてきたことを批判。

井上氏は先月、学術会議の梶田会長と会談し、「さまざまな問題意識」を伝え、学術会議側は「提言機能」について検証し、年内に政府への報告をまとめるものと既に報じられているが、その「さまざまな問題意識」のなかに、「軍民両用技術の研究」を巡る問題も含まれていたことは、これまで公表されていなかった。

記事の中でも紹介されているとおり、学術会議は太平洋戦争に協力した反省から1949年に創立され、軍事研究に反対する声明を60年と67年に出し、防衛省が軍事研究に転用可能な研究への助成制度を拡充した後の2017年3月にも、2つの声明を継承する旨、公表している。そしてこの声明の前後から、「政府による会員人事への介入」が始まっている。

私は10月初旬に「任命拒否」が明らかになった直後から、「軍事研究」の問題が任命拒否につながっていると感じてきた。当メルマガでも、2016年当時の状況について「学術会議内の議論が1年の長期に及び、しかも、玉虫色ともいえる声明が幹部会で承認されたことは、学術会議内の軍事研究に対する見方が真っ二つに割れ、否定派と容認派が拮抗している」と書いている。

任命を拒否された6人は間違いなく「軍事研究否定派」なので、この任命拒否は、学術会議内の軍事研究(軍民両用を含む)に関する諾否に決定的な影響を与えることになるだろう。

【サーチ&リサーチ】

2016年3月20日付
「「軍学共同にノーの声」九条科学者の会が明大でシンポ開催」の記事中、前年に防衛装備庁が新設され、デュアルユース技術開発のための助成制度ができたことと念頭に、「『デュアル』という言葉を隠れみのに、民生技術に応用できるよと、科学者の心理的負担を少なくして軍事技術に取り込もうとしている。大学の自治、学問の自由に関わる問題だ」という角度からの批判。

*同年4月の記事には、国産ステルス戦闘機X2に利用できる民生技術を取り込もうと防衛装備庁が躍起になっている姿が浮かんでいる。だが、専門家は「軍事で求められる技術と民間で求められる技術は根本的に違う」として。「軍産複合体が巨大化した米国をみると、民間企業による軍事技術の強化は、民生技術の発展を阻害する可能性があり、必ずしも経済効果を高めるとは言えない」とも。

*翌年には内閣府が動き出す。

2017年2月5日付
「軍学共同 防衛省以外も推進、技術開発へ「研究会」内閣府、月内にも設置」の記事。政府は有識者会議を組織し、軍民両用技術の推進を唱える政策研究大学院大学の角南(すなみ)篤教授や、大手防衛企業幹部、日本学術会議の大西隆会長などに参加を打診してい
るというもの。内閣府の目的は「軍事に転用できる大学や民間研究機関などの技術(軍民両用技術)開発を推進」することであり、「研究会は防衛省だけでなく、他省庁も巻き込んで軍民両用技術の開発を進める方策を探る」という。

「軍民両用」の技術開発の体制を造り上げようと、安倍政権がシャカリキになっていた様子が見て取れる。そして、この翌月、日本学術会議は、創立以来2回出した軍事研究を否定する宣言を踏襲する、つまり、改めて、軍事研究否定の宣言を出す(当時の大西隆会長はむしろ「軍民両用」推進派だったが、学術会議としては否定の結論を出した)。

●uttiiの眼

2017年2月の政府の動きと3月の学術会議の動きを見れば、政府の学術会議会員人事への介入の“動機”がクリアーに見えてくるではないか。

*因みに、その後の記事は、米輸出管理法の抜け穴を利用した軍民両用技術の対中輸出…というような内容がほとんど。「軍民両用」の問題は、日本にケース限らず、世界中で軍事技術開発に伴う問題であることが分かる。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

菅政権は、任命拒否問題を誤魔化すために「学術会議の見直し」を言い出したというのも本当のことでしょうが、実は、それこそが任命拒否の目的でもあるというのが真相なのだと思います。ただし見直しの要点は、「提言機能の検証」ではなく、学術会議に「軍民両用」を含む軍事技術開発研究へのゴーサインを出させたい、そのような学術会議に変質させたいということなのでしょう。

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image by:English: U.S. Marine Corps Photo by Cpl. Thor J. Larson/Released, Public domain, via Wikimedia Commons

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