怪談+ポルノ=キワモノに非ず。室田日出男が人間の醜さを突く!――春日太一の木曜邦画劇場

怪談+ポルノ=キワモノに非ず。室田日出男が人間の醜さを突く!――春日太一の木曜邦画劇場

  • 文春オンライン
  • 更新日:2021/07/20
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1975年(81分)/東映/4950円(税込/9月8日発売)/Amazonプライム配信中

この夏は旧作邦画のDVDが豊作なのだが、東映が創立七十周年ということで東映ビデオもこの七月から過去作のリリース攻勢に出ている。

VHS時代も含めた初パッケージ化、既にVHSは出ているが初DVD化、DVDも既に出ているが廉価化――と、さまざまな作品がそのラインナップに並んでおり、せっかくなので本連載でも折に触れて取り上げていこうと思う。

まず今回取り上げるのは『怪猫トルコ風呂』。これが初パッケージ化で、いよいよこれが出るのか――と好事家的な東映ファンには待望だろう。といってもDVDが出るのは九月。なんとも気の早い話だが、いち早くお知らせしたく、ここに紹介しようと思う。ちなみに、既にAmazonプライムでも配信されているので、気になる方は先にそちらでご覧になるという手もある。

本作は、タイトルの通り怪談とポルノとを組み合わせた、キワモノ的な企画だ。「なんでもあり」というカオスの坩堝(るつぼ)にあった一九七〇年代の東映ならではの作品といえる。

売春防止法が施行されて赤線が廃止される前夜の吉原遊郭から物語は始まる。娼婦の雪乃(谷ナオミ)は引退して恋人の鹿内(室田日出男)と新たな人生を歩もうとしていた。が、鹿内はヤクザに借金があり、その返済のため雪乃は「トルコ風呂」(現・ソープランド)と姿を変えた遊郭で再び身体を売ることになる。

とにかく鹿内の極悪非道ぶりが、とんでもない。実は借金もヤクザも雪乃を働かせて金を巻き上げるための芝居。挙句に雪乃の妹を犯した上に、妊娠して働けなくなった雪乃を殺害、店の土蔵の壁に埋め込む。それどころか、そのことに性的な興奮を覚えて情婦との性交に燃えるのだ。

これを演じる室田がまた強烈だ。表の顔は柔和に見せつつ、本性を表すと悪鬼の如き凶暴さを放っていく。特に雪乃を殺すシーン。ここでは書けないくらい酷い殺し方をするのだが、この時の室田の演技の恐ろしさたるや。特殊メイクや小道具などを使わずとも、いかなるホラー映画に出てくる怪物たちも及ばない。

下からライトを当てたり、画面を白黒にしたりと「怖さ」を増幅させる演出も加えられているが、それがむしろ室田の演技の生々しさを和らげる効果にすらなっていた。人間の悪なる部分の塊といえるその姿は、残酷描写に慣れているつもりの身でも思わず目をそむけたくなるほどだ。

もちろん最後は因果応報。怪談らしい復讐が待ち受けている。それでも、幽霊や怪猫よりも室田が遥かに恐ろしい。

キワモノと見せかけて、人間のエゴの醜さを突きつけてくる。練られた作品だった。

(春日 太一/週刊文春 2021年7月22日号)

春日 太一

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