目標を決める組織と決めない組織に出る4つの差

目標を決める組織と決めない組織に出る4つの差

  • 東洋経済オンライン
  • 更新日:2022/05/14
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目標設定はなぜ重要なのでしょうか?(写真:takeuchi masato/PIXTA)

未来の予測が難しくなるVUCA時代には、これまでの延長や過去の成功体験で仕事をしていても、成果を出すことが難しくなっています。成果創出のためには、従来のやり方にとらわれず、その仕事を“何のために”やるのか、つまり「目的」から考えることができる能力が必要です。目的が疎かだと、具体的に何を目指して(=目標)、何をすればいいか(=手段)がわからなくなり、望む成果につながらないのです。

しかし、その重要性に反して、目的の役割や設定の仕方がわからないという人は少なくありません。『目的ドリブンの思考法』を一部抜粋し再構成のうえ、戦略コンサルタントである著者が、成果創出のための思考の「型」をお教えします。

成果創出を左右する「目標」の4つの効能

「目的」と「目標」はしばしば混同して使われる。こうした言葉遣いの混乱は、意思決定の混乱にもつながりかねない。そこで、改めて両者の違いを明らかにしておこう。

端的にいって、目的が“到達点”であるのに対し、目標は“中継地点(マイルストーン)”を意味する。目的とは「新たな価値を実現するために目指す未来の到達点」だということを思い出すと、目標はそこへたどり着くために通過しなければならない〝途中の目印〞と位置づけられる。

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(画像)『目的ドリブンの思考法』

では、なぜ目標を設定することが必要なのだろうか?

それは、目標が組織やチームの実行力とモチベーションを左右するきわめて重要な要因だからだ。具体的には、目標は組織やチームに対して次の4つの効能を与える。

①抽象度の高い目的を実務に落とし込める
②有効な対応策を体系的に洗い出せる
③リソースの無駄遣いがなくなる
④達成と成長が実感できモチベーションが高まる

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(画像)『目的ドリブンの思考法』

1つめは、目的と目標の違いを思い出せば理解がしやすい。目的は目指したい将来像を示したものだが、その反面どうしても手触りのない抽象的なものになりがちだ。「事業の筋肉質化を実現する」と目的を掲げても、実際に実務としてどう動けばいいか、そのHowの部分を目的は直接示してはくれない。

しかし、例えばその目的に「低収益製品を3年以内に廃止する」といった具体的な目標を伴わせれば、目的は現実での動き方のイメージを伴って実務に落ちてくる。ビジョナリーな世界で描いていた目的が、目標の設定によってリアルな実務に落ちてくるというわけだ。

目標が必要な理由ほか3つは?

2つめは、目標とその達成に必要な対応策の関係を示している。目標があれば、それをターゲットとして打ち手の洗い出しを体系的に行うことができる。抜け漏れを防ぎながら、目標の達成に有効な策を考えやすくなるということだ。もし目標がなければ、施策の打ち方は散発的なものになってしまう。そのやり方では有効な施策を見落とすこともあるし、そもそも施策自体が有効かどうかの判定もできなくなるだろう。

3つめは、目標があればそれを目印として、組織のリソース、いわゆるヒト・モノ・カネを集中できるようになるということだ。例えば「欧州における販売拠点数を3倍に増やす」という目標を設定したなら、欧州に営業人員を集中投入して販路開拓を行わせる、という判断ができるようになる。逆に、明確な目標がなければリソース配分はその目印を失って、総花的なばらまき政策に陥ってしまう。

最後に4つめは、目標はチームをモチベートし、成長を促すということだ。目標という中継地点を置きそれを達成していくことで、チームは仕事の成果や成長をそのつど実感できる。これから1年がかりの仕事を任せると言われると少し気も遠くなるが、1カ月おきに目標を刻むことで、それに取りかかるチームのモチベーションはずいぶんと変わるだろう。

リアルな実務の遂行、的確な打ち手の策定、最適なリソースの配分、チームの士気向上─これらはいずれも仕事の成果創出に欠かせない。そしてこれらの条件が満たせるかどうかは、適切な目標が設定されているかどうかにかかっている。目標を設定すべき必然性は、ここにある。

目標を設定することの意義がこれでわかった。

では、目標を設定するにはどうすればいいのか?

端的にいえば、目標は目的をいくつかの部分に分けて具体化したものだ。言いかえれば、「目標の設定」とは「目的の切り分け」にほかならない。そのときに基本となる切り口が次の2つだ。

1、構成要素への切り分け
2、時間軸での切り分け

構成要素への切り分けとは?

身近な例を題材にとりながら理解してみよう。まず「構成要素への切り分け」とはどういうことか。

例えば、「英語を身につけ海外顧客と商談ができるようになる」という目的を定めたとする。このとき、英語はリスニング・スピーキング・リーディング・ライティング、それらのベースとなる文法・語彙力という「構成要素」に分けることができる。すると、目的に対して次のような目標が切り出せる。

①リスニング:海外ドラマのナチュラルな英語を聴きとれるようになる
②スピーキング:自社事業の要点を英語で説明できるようになる
③リーディング:英字新聞・ニュース記事を読みこなせるようになる
④ライティング:英語での資料づくり・メール作成ができるようになる
⑤文法・語彙力:ビジネスで用いる単語・語法を含む例文を300 文暗記する

①〜④の目標は目的を成し遂げるために「達成が必要な条件」を定性的に切り出したもので、⑤の目標には定量的な水準値が設定されている。このように、目的を定性的な条件・定量的な水準値に分解すれば、具体的な手触りのある目標が見えてくることがわかる。

目標設定のもう1つの視点は、「時間軸」での切り分けだ。これは、「いつまでに」という期限を目標に与えるものだ。例えば、先の例ではいずれの目標も「いつまでに」という期限が与えられていない。10年後でいいのか、半年以内にどうにかしないといけないのか、期限の違いで取り組みの切迫度はまったく変わる。

それどころか、期限のない目標は「いつまでとか決まっていないし、今はやらなくていいか」といった調子で知らず知らずのうちに立ち消えてしまうことさえある。

このように、「どのような状態・水準」を「いつまでに」実現するか、それを切り出すことが目標設定の基本だ。一見して遠い彼方にある目的を具体的に分解し、その到達に向けた中継地点を段階化すること。それがマイルストーンとしての目標の役割だ。それによって、彼方にあった目的を手元に引き寄せ、具体的かつリアルな対処を打つことができるようになる。

「困難は分割せよ」

目的を目標に分解する理由は、もう1つある。それは、16世紀フランスの哲学者ルネ・デカルトが遺した次の言葉が意味することだ。

「困難は分割せよ」

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大きな問題は、それを構成するより小さな問題に分けること。その小さな問題は、もとの大きなカタマリよりもずいぶんと対処が容易なものになっているはずだ。その切り分けられた小さな問題をつぶしていくことで、いつしかもとの大きな問題をも解消することができる─そのことを、デカルトの言葉は教えている。

この原則は、目標設定においても例外ではない。一見して困難な目標もより小さな目標に分解することで、目標達成の実行性・実現可能性を高めることができる。それによって当然として、目的の成就=仕事における成果創出の確度も高まる。

このことを、先ほどの英語の例で見てみよう。目標の1つである「リスニング:海外ドラマのナチュラルな英語を聴きとれるようになる」ことの実際の難しさは、洋画で字幕をオフにするとよくわ かる。そんなときは、この「大目標」をさらに「小目標」に分けてみよう。たとえば次のように分解してみると、どうか。

●1年後:海外ドラマのナチュラルな英語が聴きとれる(=大目標)
●9カ月後:ネイティブが発信する英語学習動画が聴きとれる
●6カ月後:児童向けの童話が聴きとれる
●3カ月後:教科書の例文・短文が聴きとれる
●1カ月後:紛らわしいアルファベットや基本的な英単語を聴き分けられる

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(画像)『目的ドリブンの思考法』

これなら、なんとなく「できるかも」という気持ちが湧いてこないだろうか。いきなり海外ドラマとなるとハードルが高いが、「light」と「right」の聞き分けくらいなら取り組めそうだ。

大きな目標も、このように小さく切り分けてあげることで、遠くに見えていた目標をもっと手元に手繰り寄せることができる。大きな目標を前にして途方に暮れる前に、それを小さな目標に分解して対処できないか考える─この原則は、これから大きな問題に立ち向かおうとする僕らを、きっと勇気づけてくれるはずだ。

(望月 安迪:デロイト トーマツ コンサルティング テクノロジー・メディア・通信(TMT Division) シニアマネジャー)

望月 安迪

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