連覇の重圧とイチローのタイムリー、元侍ジャパン・片岡保幸が明かす第2回WBC秘話

連覇の重圧とイチローのタイムリー、元侍ジャパン・片岡保幸が明かす第2回WBC秘話

  • J SPORTS|コラム(野球)
  • 更新日:2023/01/26

2023年3月に開催される「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC」(以下WBC)。今大会の日本代表は「史上最強」とも称され、2009年の第2回大会以来となる優勝にも期待が高まっている。

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その第2回大会では、「侍ジャパン」の愛称が根づき、2006年の第1回大会に続き連覇を成し遂げた。なかでも有名で今も語り草となっているのは、イチロー氏の決勝戦での劇的タイムリーだろう。当時の元侍ジャパンメンバーで、日本を代表するスピードスターの片岡保幸氏に、振り返ってもらった。

◆「大事な場面に代走で使うから」と原監督

片岡氏は日本代表のキャンプを終えた後、原辰徳監督(当時)から「お前さんは、大事な場面に代走で使うから」と告げられたという。「その後は走塁の練習ばっかりしていました」と顔をほころばせるが、代表選手としてその胸中はずっと不安に苛まれていたという。

「周りの選手はすばらしい方々ばかりでしたし、やっぱり『日本が連覇するはず』という空気もあって、プレッシャーしかありませんでした。野球人生で後にも先にも、WBCでの試合ほど緊張したことはないです。だからか、あり得ない走塁ミスもしました…」。

中国代表との初戦でのこと。片岡氏は二塁走者だったが、ショートゴロで飛び出してしまい、三塁でアウトになったのだ。幸いチームは4-0で勝利している。そんな未経験の緊張感と戦いながら、その後は徐々に不安を払拭していった片岡氏。WBCでは計7試合に出場し、13打数4安打3得点、最多4盗塁で打率.308と期待どおりの活躍を見せている。

◆福留孝介と食事中にキューバ戦の先発を伝えられる

守備や走塁でスーパーサブ的な役割を担った片岡氏だが、アメリカで開催されたキューバとの第2ラウンド初戦ではスタメンが命じられた。試合の前夜、福留孝介氏と外で食事していた時のことだ。電話でその命を受けた片岡氏は「すみません!明日スタメンになったので、今すぐ帰らせてください」と大先輩に断って、ホテルへ直帰。データや映像を頭に叩き込んで、ホテルの部屋でイメージトレーニングをしながら素振りに励んだ。

キューバの先発は、当時も160キロ超の剛速球を投げると頭角を現していた左腕のアロルディス・チャップマン(ロイヤルズ)。後にメジャーを代表する大クローザーになる怪腕は、この時も最速163キロを計測したが、制球が定まらず3回に日本が連打でノックアウト。片岡氏も猛攻に加勢し、ヒットと3得点目のホームを踏んだ。結果、日本が6-0で勝利。「食事を中座して準備した甲斐がありました」と胸を張る。

◆イチローの決勝打は「打つとわかっていた」

最後に決勝戦でのイチローの劇的タイムリーについて尋ねた。準決勝までは打率.211と不調にあえいでいたイチローだが、延長10回表、2アウト2・3塁の場面で、2ボール2ストライクから8球目を捉えるとセンター前ヒット。これで2点の勝ち越しとなり、日本を優勝に導いた。ハラハラしながら見守ったという人も多いだろう。

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ただ、片岡氏は「あの場面で打つとわかっていました」とこともなげに語る。「あの場面で回ってくる時点で、ああやっぱりこの大会はイチローさんの大会だったんだって、ベンチから見ていましたから。何球も何球も粘ってワンバウンドの球もファールにしたり。タイミングが合ってる、さすが、ああ打ってくれたという思いでしたね」。

続けて、「さらにすごいのは、あの後もしっかり二塁まで到達していたことです。表情を変えることなく、スキを見せていませんでした」。日本はこの裏、ダルビッシュ有が9回に続いてマウンドへ。無失点に抑えると、選手たちが歓喜の輪を作った。優勝が決まった瞬間に片岡氏が思ったのは、「やった」でも「うれしい」でもなく、「良かった」という安堵だったという。

WBC大会を通じて学んだのは準備の大切さ。あの時のイチローのように、どんな試合のどんな瞬間であろうと、常に準備をしていることの大切さを思い知り、その後の野球人生の礎にもなったという。また、その後で迎えたプロ野球のシーズン開幕戦は、「おかげでまったく緊張しませんでした」と笑顔をのぞかせた。

取材・文:松山ようこ/photo by Keita Yamamoto

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