昭和20年創業 新京本店 「闇市から始まりネオン街の住人に愛され続ける老舗の逸品 カレー汁」

昭和20年創業 新京本店 「闇市から始まりネオン街の住人に愛され続ける老舗の逸品 カレー汁」

  • ひろしまリード
  • 更新日:2022/12/01

広島に数年住んだ事のある人ならば、行った事は無くとも、一度はその噂を聞いた事くらいはあるはずと言える老舗有名店・新京本店。初耳という方にも、お店の佇まいはどこか懐かしさを感じさせてくれるに違いない。

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お食事処 新京本店

この昭和の風情を色濃く残したお店は、ネオンひしめく夜の街・流川のこの場所で40年以上営業を続けている。創業は昭和20年、被爆直後の混乱期の中、広島駅前の闇市の辺りに創業者ご夫婦がお店を出したのが新京の始まり。この頃はまだ店の名前も無かったそうだ。その後、立ち退きなどもあって流川に場所を移した。流川に来た当初は、現在のお店の近くにあったそうだが、火事になって現在の場所に移ったそう。

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新京3代目店主 河野憲昭さん

立ち退きになった時期は、記憶が曖昧との事ではっきりと聞けなかったが、今の店になった時期は41年前と教えてくれた。というのも現在のお店になった時、19歳で入店したスタッフの方が今年還暦を迎えたそうで、「これは間違いない」と3代目店主の河野憲昭さんは共に歩んできたスタッフの方の話をしながら笑顔で答えてくれた。

常時40種類の「早い・安い・旨い」お惣菜

お店に入るとカウンター席の前にズラリと並べられたお惣菜に目を奪われる。肉、魚、野菜と色々な食材が、焼かれたり、煮られたり、生の刺身だったり様々な方法で調理されている。季節や、週末か否かなどの要因で多少増減するももの、毎日40種類前後のお惣菜が常備されているという。

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お惣菜がズラリと並んだ店内

新京のお惣菜は、どれも素朴で優しく美味しい。古き良き日本の家庭料理を感じさせてくれる味だ。調理を担当する店主の実姉のともこさんによれば、「昔ながらの家庭料理。飽きがこないシンプルな味付けだから常連さんが通ってくれるのでは」という。

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肉じゃが 430円

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玉子焼きミニサイズ 400円 (ネギ入りも選べます、写真はネギなし)

新京では、このお惣菜とごはんや汁物などを頼んで食事をしたり、たくさんあるお惣菜をつまみにお酒を飲んだりと客のニーズに合わせて楽しめる。営業時間は午後6時から翌朝の6時までの12時間というストロングスタイル。この深夜食堂という表現がピッタリな営業時間の中で、それぞれの時間ごとに客層が変わっていくという。具体には、開店から夜10時くらいまでがサラリーマンなどが多く、午前0時から午前3時くらいまでが飲み屋勤めのお姉さんやそのお客さん、3時過ぎた頃から閉店の午前6時までは自分のお店など商売やってる人という内訳だ。余談だが、店主河野さんによれば、映画・深夜食堂の監督さんも新京に取材に訪れた事があるという。

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この膨大なメニューが様々なお客さんの胃袋と心を満たす

今では様々な職種や年代の常連さんを持つ新京だが、流川に店を開いた当時はお客さんのほとんどが繁華街の店舗で働くボーイさんやタクシーの運転手さんなど、すぐ食べてすぐに戻る必要がある職種のお客さんが多かったという。そこで考えられたのがお惣菜の作り置きを選んで、ごはんや汁物と合わせて定食として提供するやり方。これなら急ぎのお客さんを待たせずにすぐに食事をとってもらえる。これが、現在にもつながる新京スタイルとなっている。

新京を全国区にしたエースメニュー「カレー汁」

たくさんのファンを持つ新京だが、多くのファンがお目当てにしているのがカレー汁。ごはんのお供に良し、酒を飲んだシメに良しという万能メニューだ。

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名物カレー汁(550円)とごはん小(180円)  ほとんどの人が一緒にごはんを注文するという

わざと分かりやすく味を表現すると、カレーを少し薄めて出汁を足した感じ。最初にカレーの風味と出汁の風味が合わさった甘みや旨みが口に広がり、飲み干した後に辛みが追いかけてくる。口当たりは、一般的なカレーのルーより少しシャバシャバ系のイメージだ。

具は、じゃがいも、玉ねぎ、にんじんと牛肉。肉は、赤身とスジの両方が入っている。汁と名付けられているが、そこそこ食べ応えもある。

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お肉やジャガイモ、にんじんがゴロゴロ

味の秘密を明かせる範囲で教えてもらった。まずカレーのルーは辛口と甘口を半々にミックスして使っているという。これが先述した先に甘み、後から辛みが追いかけてくるにつながっていると思われる。他に特徴とすればウコンはやや強めに効かせている事だという。これは、「飲みのシメにする人が多いから二日酔いに効くからね」という優しい理由だった。

そもそもカレー汁誕生には、河野さんの義理のお兄さんがお酒好きだった事がきっかけだったそうだ。ある飲み過ぎた日に「カレーライスは胃がもたれるから食べたくないけど、カレーのルーが少し食べたいから薄めて欲しい」と言った事が始まり。そこで河野さんのお姉さんのともこさん(現在も調理を担当)が小学校の給食で食べたカレースープを思い出して似たようなものを作る事にした。そのまま水で薄めると美味しくないので出汁で薄め完成。これが40数年前の出来事。後にお店の看板になるとは当時は誰も思わなかっただろう。

あえて薄めるという表現を使うが、薄めるための出汁は、昆布にいりこにカツオなど和風の王道素材にいくつかの隠し味が加えられている。お話を伺っている時、河野さんから「飲んでみる?」と、カレーと合わせる前の自家製出汁を特別に出して頂いた。色々な旨味が混ざり合っているが優しい味わいの出汁だった。ここでも家庭的な和の味を感じさせてもらった。

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カレー汁に使われている自家製出汁

このカレー汁は、1度に25食分作れる大きな鍋で調理されている。平日は鍋3つと予備として1鍋の合計100食分を用意、週末はさらに1鍋分多く作るそうだ。またカレー汁は、ずっと継ぎ足し継ぎ足しで毎日作られているので、味が変わる事は無い。と書きながら、直後に矛盾した事を書くが、開店直後の18時頃と、閉店近くの朝方では若干味が違うという。というのも、ずっと鍋で煮込まれ続けるので、閉店に近づくにつれコクが増していくためだ。河野さん曰く、「朝方の4時~5時くらいが一番良い状態なのでは。ただその時間になると売り切れている事もあるけどね」だそうだ。

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この鍋1つが約25食分

12時間営業と思いきや実は24時間稼働!?

3代目店主の河野さんは定休日の日曜日を除いて毎日12時間お店に立っている。準備の時間を入れると何時間働いているんだろうと思させられる鉄人ぶり。平日の睡眠時間は毎日2~3時間だという。このとんでもない毎日をこなしている河野さんは、生粋の商売人かと思いきや55歳までは銀行に勤めるサラリーマンで、早期退職した後に3代目となったそうだ。しかもご家族は東京暮らしで、単身赴任生活を20年続けている。大変じゃないですか?と当たり前の質問をすると、「もう慣れました。でもお店が休みの日曜日は10時間寝てます。ただその日に伝票整理とかするから完全な休みは無いね。」との事。タフ過ぎて言葉を失ってしまった。

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新京3代目店主 河野憲昭さん (※撮影のためにマスクを外してもらっています)

新京の閉店時間は午前6時、だがその時間になると今度は調理担当の姉・ともこさんがお店に来て仕込みを始めるそうだ。そして夕方までに仕込みを完了して、河野さんにバトンタッチ。定休日を除いて、姉と弟のバトンリレーは24時間続いている。

河野さんは昭和22年5月生まれの75歳。いくらお元気とはいえ、「もっと休めるように、人を増やしたりしないんですか?」とお尋ねすると、「人を増やすのは難しいね。姪が手伝ってくれてるけど継ぐとは言ってくれないねぇ。継がせてほしいという話も何件か来たけど今は考えてないなぁ」との事だった。重ねて「お店を閉めちゃう可能性もあるんですか?」とお尋ねすると、「僕の代で終わりかもね。まぁそのうち考えるよ。」と答え、「せっかく来たんだからたくさん食べてよ」と自慢の料理をたくさん出してくれた。

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新京本店

所在地:広島県広島市中区流川町5-9
TEL:082-241-1406
営業時間:18:00~翌6:00(L.O 5:30)
定休日:日曜日
駐車場:なし(近隣にコインパーキングあり)

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このマッチを広島に行った証明として持ち帰る人もいるらしい

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