「幻魔大戦」シリーズを全編、徹底解説!名作漫画は今でも面白い!

「幻魔大戦」シリーズを全編、徹底解説!名作漫画は今でも面白い!

  • ホンシェルジュ
  • 更新日:2021/11/25
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本シリーズは1967年から現在まで続く、SF作品。宇宙から地球、そして過去から未来に至るまで、幻魔と呼ばれる宇宙の破壊者的な生命体と、超能力戦士達の果てない戦いの物語です。終末論的な雰囲気に魅了され、多くの作家や漫画家達に影響を与えた作品でもありますが、未完で終わっているものがあるのも特徴です。

今回は、そんな唯一無二の名作の魅力に迫ります。ぜひご覧ください。

漫画「幻魔大戦」シリーズがやっぱり面白い!【あらすじ】

「幻魔大戦」とは、『8マン』や「ウルフガイ」シリーズで有名な作家・平井和正と『サイボーグ009』や「仮面ライダー」シリーズで有名な漫画家・石ノ森章太郎の合同作品。異能の力に目覚めた少年少女が、宇宙の破壊を企む謎の生命体・幻魔と戦うという、SFものです。

小説家の平井と漫画家の石ノ森の共同作品ということで、漫画版と小説版がそれぞれ存在。それぞれ違ったストーリーを描いていますが、パラレルワールドとしてエピソードを繋げています。

連載開始は1967年で、「週刊少年マガジン」にて掲載。地球が滅亡を迎えるかのような絶望的なストーリーに、驚いた読者も多かったはずです。やがて1971年に『新幻魔大戦』として再び連載が開始され、1979年には平井が小説『真幻魔大戦』の連載を始めます。

1970年代はユリ・ゲラー来日に伴い、空前の超能力ブーム。さらに1973年には小松左京のSF小説『日本沈没』、五島勉の『ノストラダムスの大予言』が出版されたため、終末論が注目されるようになっていた時代です。本作のストーリーは終末論的な不安を掻き立てる内容で、超能力者を主人公としているので、この時代の流れとともに絶大な人気を得るようになりました。

幻魔大戦 (秋田文庫 5-39)著者["平井 和正", "石ノ森 章太郎"] 出版日2009-04-10

1980年代になるとオカルトやSFがブームになり、本作はアニメ映画化されました。監督は『銀河鉄道999』で有名なりんたろう、キャラクターデザインは『AKIRA』で有名な大友克洋です。大友は石ノ森の同郷で同高校という縁もあり、彼の作品から多大な影響を受けていました。なかでも本シリーズは、大ヒット作品『AKIRA』の元となっている作品でもあるのです。

本作のストーリーは、アメリカンコミックスでいうところの『X-MEN』に近い内容ですが(この作品にも時間移動やパラレルワールドなどのネタがあります)基本、人間対人間である『X-MEN』に対し、本作は幻魔という謎の生命体との戦いを描いています。

そして、最大の特徴は、なんといっても超能力合戦。主人公たちが超能力で天変地異を起こして戦う描写は、迫力満点です。

また小説版では幻魔だけでなく、宇宙のエネルギー生命体と交信する描写があり、未知なる存在との交流というのも1つの見所となっています。

そんな本作は大友以外にも、多くの作家に影響を与えた作品であると上記しました。そんななかで1990年代にヒットした、七月鏡一が原案、皆川亮二が漫画を担当した、異能を持った少年少女が主人公のSF漫画『ARMS』も忘れてはいけません。

この作品では、主人公は半ば強引に戦いに巻き込まれて、力を覚醒させてしまうという場面があります。これは『幻魔大戦』の主人公・東丈がベガと強引に戦わされて、自分の力を覚醒させるのがルーツになっていると思われます。

七月は平井に大きな影響を受け、『ARMS』以外でも、自身の作品に彼の作品のオマージュを入れているそうです。さらに七月は、本シリーズの最新作『幻魔大戦 Rebirth』の脚本も手掛けています。

平井和正のおすすめ作品を紹介した<平井和正のおすすめ本5選!「幻魔大戦」シリーズなどが有名なSF作家>の記事もおすすめです。

AKIRA(1) (KCデラックス 11)著者大友 克洋 出版日1984-09-14

ARMS 1 (小学館文庫 みD 9)著者皆川 亮二 出版日2014-04-15

登場キャラクター

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出典:『幻魔大戦』1巻

東丈(あずま じょう)

シリーズの多くで主人公を務めています。元々は普通の高校生でしたが、超能力に目覚めて、仲間たちとともに幻魔との戦いに赴きます。高校生だったころは姉・三千子、弟・卓とともに東京で平穏な生活を送っていました。

小柄な体躯ながら努力家で、勉強も、部活の野球も懸命に頑張っていましたが双方ともに報われません。文部両道の卓へ対するコンプレックスから、鬱屈した日々を送ります。そのためか、超能力に目覚めた当初は、力に酔いしれるような一面がありました。

しかし、プリンセス・ルーナやベガ、サンボたちと接するうちに、いつしか戦士としての自覚を持つようになっていくのです。

使用する主な超能力はサイコキネシスで(念力)、潜在力はメンバーでもっとも優れています。

プリンセス・ルーナ

トランシルヴァニア王国の王女で、生まれながらに予知やテレパシーが使用できます。そのためか、恐ろしい悪夢にうなされることも。

地球に落下した異星のサイボーグ戦士ベガと、彼女が乗っていた旅客機がぶつかったために、旅客機が墜落してしまいます。その時、異星人の戦士フロイによって助けられ、意識を宇宙に飛ばされて幻魔の存在を認識。彼らと戦う決心をします。

その後はベガとともに超能力者を探し始めますが、わがままでヒステリックな性格のために、丈やサンボとしばしば衝突。しかし後に戦士としての自覚に目覚めて、一同の司令塔の役割を果たすようになりました。

使用する超能力は、強力なテレパシー。予知や透視能力も持っています。

ベガ

地球に来る前にフロイとともに幻魔と戦っていた、異星のサイボーグ戦士。大柄な体躯で、全身に武器を内蔵しています。

冷静沈着な性格で、生粋の軍人体質であるため、時に冷徹な判断を下すことも。しかし幻魔との戦いによって、恋人のアリエータを失ってしまったために、物語当初は戦いを拒否していました。

しかしルーナに叱責され、再び幻魔と戦う決心をします。 未熟な地球人の心に手を焼きますが、それでも熟練の戦士として、仲間たちを導いていくのです。

サンボ

ニューヨークに住む黒人の少年。超能力を使って、幼いながらにギャングのボスとして君臨していました。

人種差別的な問題から、当初は白人のルーナを嫌って、幻魔との戦いでは自分だけ逃げてしまいます。しかし戦士の自覚に目覚めて、後に和解。

ヤンチャな性格ながら、根は素直で仲間思い。その結果、丈とは兄弟のような間柄になりました。

使用する超能力はテレポートで、他にもテレパシーを使うことができます。シリーズによっては、ソニー・リンクスとも呼ばれます。

フロイ

ベガの戦友で、犬のような姿をしています。元は頭部のみが犬の異星人でした。テレパシーでルーナに使命とメッセージを伝え、101匹の子犬の姿をした息子たちを地球に送って、丈たちを支援していきます。

レオナード・タイガー

元は、超能力を研究していた科学者。興奮すると体に虎のような模様が出てきますが、これはSF小説『虎よ虎よ』が元ではないかと思われます。強力な超能力に目覚め、丈達と接触をはかりますが、傲慢で利己的な性格であるため、一同とは衝突し、特に丈とは険悪な関係に。

結果、丈達と反目し、彼らの妨害工作をおこなって幻魔に地球を売り渡すという、恥知らずなことまでやってのけます。もともと小心者なのか、丈の潜在能力を恐れていたよう。しかし最終的には、幻魔の奴隷にまでに成り下がってしまいます。

催眠能力や四次元移動、そして虎そのものに変身する能力を持っています。シリーズによっては、レオナード・タイガーマンという名前です。

シグ

幻魔の司令官で、自称・戦争芸術家。強大な力を持ち、紳士的な言動の目立つキャラクター。卑劣な手段を使う他の幻魔とは違い、強敵との真っ向勝負を好みます。

『幻魔大戦』あらすじ

ヨーロッパの小国トランシルヴァニア王国の王女であるプリンセス・ルーナは、予知や催眠術などの不思議な力を持っていました。そんな彼女が、アメリカ旅行のために旅客機乗っているとき、旅客機が突如墜落してしまいます。

海に投げ出された彼女は、フロイと名乗る謎の存在から言葉をかけられます。そして彼女の精神は彼の力によって、はるか彼方の宇宙へと飛ばされ、そこで幻魔と呼ばれる存在と、奴らと戦って散った異星人たちの宇宙船の残骸を見たのでした。

彼女はフロイにより、超能力を使える貴重な人間として幻魔と戦う戦士に選ばれました。そしてフロイの戦友で、彼の力によって地球へテレポートされたサイボーグ戦士ベガを参謀とし、彼女たちと同じ超能力者を集める旅に出るのです。

幻魔大戦 2 (サンデー・コミックス)著者平井 和正 出版日1986-06-01

一方、日本の東京都に住んでいる高校生の東丈は、志望の大学にも進めず、所属している野球部のレギュラーにもなれず、日々鬱屈した思いで過ごしていました。

そんなある日、彼は突如何者かに襲われます。彼を襲ったのはサイボーグ戦士のベガで、目的は彼を窮地に陥れることによって、超能力を覚醒させることでした。

やがてベガの目論見通り、彼はサイコキネシスを発動。しかし、彼はその強大な力に酔いしれてしまうのでした。

見所をネタバレ解説!

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出典:『幻魔大戦』1巻

作者である石ノ森は、代表作『サイボーグ009』で異能の力を持つ者でチームを組んで、強大な敵と戦う物語を描きました。メンバーの大半がサイボーグでしたが、実はメンバーの1人で、赤ん坊の001だけが超能力者。この点を鑑みると、石ノ森が以前から超能力者に注目していたということがわかります。

『幻魔大戦』の超能力者同士の戦いは、現在の能力者ものやバトル漫画の原型といってもよいのではないでしょうか。その描写は、雷や高熱をはじめ、自然現象の操作によって天変地異を起こすなど迫力のあるものから、平面の世界に行くという4次元的なものまで、実にさまざま。アクションでは、後半の溶岩流で、巨大な火竜の幻魔と戦う場面が特に迫力があります。

もう1つの見所は、東丈やプリンセス・ルーナの思春期特有の不安定な精神と、力への渇望に関するドラマです。

戦う少年少女というと、正義感の強い少年だったり、優しい少女だったりするパターンが多いのですが、本作は十代の少年のリアルな人間描写が魅力的。丈やルーナに感情移入をして、彼らと同じように力を渇望した読者も多かったのではないのでしょうか。

特に丈の文武両道の弟に対するコンプレックスと、物事がうまくいかずに周囲への鬱屈した思い抱いている様子は、大友克洋の『AKIRA』に出てくる超能力に目覚めた少年・鉄雄のルーツともいうべきキャラクターです。

また、SF作品の影響も多く見られます。石ノ森章太郎に限らず、漫画家は映画や小説をよく拝読して、作品を生み出す原動力としているので、何かしらにルーツが見え隠れしているものです。

たとえば冒頭、ルーナの乗る旅客機が流星によって墜落してしまうのは、東宝の特撮映画『三大怪獣 地球最大の決戦』のヒロインである、サルノ王女の乗る旅客機が墜落する場面と似ています。

この後も、サルノ王女は金星人の霊に体を乗っ取られて、予知の力を身につけるという場面があり、これは本作のルーナが、飛行機事故の際、フロイと精神感応をして超能力を覚醒させる場面と似ているのです。

謎の生命体である幻魔は、体を変形させて人間に化けたり動物になったりしますが、これは『遊星よりの物体X』の原作『影が行く』の変身する怪物がモデルではないかと思われます。

そういった影響を受けた・与えた作品は何か、というのを考えながら読んでみるのも、楽しみの1つといえるかもしれません。

『新幻魔大戦』あらすじ

江戸時代の女性・お蝶は、炎に包まれてタイムスリップをしました。彼女はトランシルバニア国のプリンセス・ルーナ(本作中ではクイーン・ルーナと呼ばれています)の娘・ベアトリス王女のもとに招かれます。彼女は時間移動の力を持つ、タイムリーパーだったのです。

一方、時は1998年。女子大生の香川千波は、ESP賦活剤というドラッグを飲んだことから、超能力者として覚醒。そのせいで、世界が滅んでいく予知に悩まされていました。その後、世界に天変地異が起き、彼女の予知通り、文明は破壊されてしまったのです。

すべての原因は、宇宙より飛来せし幻魔の仕業でした。

新幻魔大戦 (秋田文庫 5-42)2009年10月09日["平井 和正", "石ノ森 章太郎"]秋田書店

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やがて世界が猛吹雪に包まれ、文明も社会もなくした人々は、人が人を食う、文字通りの弱肉強食の恐ろしい世界で生きることとなりました。そこでは、ただ破滅を待つしかありません。

千波は、人の心を操る超能力でどうにか生き延びていましたが、この地獄を変える手立てはありませんでした。 そんな時、彼女の前にベアトリス王女が、超能力戦団を伴って現れます。王女とともにいる女性は江戸時代からタイムワープした超能力者・お蝶。彼女の力によって、千波は使命を与えられます。

ベアトリス女王は千波の精神を肉体から切り離して、お蝶に移植。過去の時代に行って、超能力者の一族を生み出すことになるのです。

見所をネタバレ解説!

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出典:『新幻魔大戦』1巻

前作の『幻魔大戦』が、宇宙をはじめ地球の各地を巡るといった内容で、空間的に壮大な物語となっていますが、本作は時間を巡る物語となっています。

千波が暮らしていた1990年代後半は、本作の発表された1980年代からすると、近未来に該当する時代でです。本作は未来から過去へとタイムワープして時間改変をおこなう、タイムスリップもの。そして主人公が丈から千波へ交代。これは本作が『幻魔大戦』のパラレルワールドを描いており、幻魔との戦いがおこなわれなかったエピソードであることを意味しています。

ストーリーは、千波が超能力を持つ人間を生み出すために過去へ飛ぶというものでありますが、彼女はそこで東丈と関係した人物と出会うことになります。他のSF作品のタイムスリップものとは違い、タイムマシンを使うのではなく、時間移動の能力者の精神に心を宿らせてタイムスリップするというのは、本作ならではの発想です。

そんな本作の1番の見所は、女性陣のキャラクター性です。主人公・千波はいかにもな気の強い現代っ子であるのに、お蝶の精神と融合して「お時」という女性になると、穏やかかつ気丈な女性になってしまうのが面白い点。

また、ベアトリス王女の母親こそ、前作に登場したプリンセス・ルーナなのですが、ルーナが我が儘でナイーブであるのに対し、ベアトリス王女は気品があって誇り高い性格。この母娘2人のキャラクターの性格の違いも面白いところです。

超能力描写では、お時が超能力を発動させると、周囲に蝶が飛び交うなど斬新な演出がほどこされています。後に紹介する『幻魔大戦』(リュウ版)では、さらに斬新な描写へと進化するので、こちらも注目してみたいところです。

ちなみに、お時は『真幻魔大戦』にも登場するので、ぜひチェックしてみてください。

『真幻魔大戦』あらすじ

トランシルヴァニア王国のリア王女が、多国籍企業クェ―サーの社長・カトーの元に行くために、アメリカ行きのジェット機に乗っていました。そこで彼女は、かつて酒におぼれて若くして亡くなった姉・ルーナ王女の霊に憑かれます。

それは宇宙の意識体・フロイの仕業であり、彼女に姉のルナ、そしてベガの過去を見せつけて、彼女の使命を伝えたのでした。

そんななか彼女はそのままレオナード・タイガーマンに拉致され、凌辱されそうになります。しかしその危機を助けてくれたのは、やはりルナの霊でした。

真幻魔大戦1 超意識との邂逅平井和正e文庫

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一方、小説家の東丈は、秘書をしている姉・三千子とともにクエイサーの幹部であるムーンライトにインタビューをすることになりましたが、そこで彼女は、丈にクェイサーの内部情報を渡します。

その後、三千子が急に高熱を出して寝込んでしまいます。その時、丈は寝ているはずの彼女の幽体が、庭に出ているのを目撃するのです。

見所をネタバレ解説!

本作は、平井和正の書いた小説版で、最初のマガジン版の『幻魔大戦』が起こらなったパターンのパラレルワールドを描いています。

丈は大人として登場し、小説家になっています。黒人の少年・サンボの名前がサニー・リンクスに変わっていたり、次元の異なる世界ということでキャラクターがいろいろと改変されているのです。

プリンセス・ルーナは超能力を弱めるために酒におぼれてしまい、早くに亡くなってしまいます。そんな彼女の妹・リアが登場しますが、ルーナは彼女に宿って、霊体として登場。そして漫画では犬の姿だった歴戦の戦士・フロイは、宇宙エネルギーで構成された生命体となっています。

ちなみにリアは、ルーナに輪をかけたわがままな性格。対してルーナは、霊体になっているものの誇り高い性格になっています。

ルーナの境遇でわかる通り、『幻魔大戦』では超能力というとてつもない力に酔って、好き勝手なことをする者が出てくる一方、彼女のように繊細な感受性を持ったがために、神経をすり減らしてしまい、酒で弱めようとしてアルコール中毒になってしまう場合もあり、超能力が必ずしもありがたいものではない、ということを暗示しているようです。

つまり本作は、力と心を巡るドラマでもあるのです。

またリア王女がフロイの思念によって、ベガの過去を知る貴重なエピソードもありますが、ここで描かれるキャラクターの細かい背景や内面は、小説ならではの面白さといえるでしょう。

また『新幻魔大戦』で繋がりのあるキャラクターがいるので、そちらの方を照らし合わせて読んでみるというのも、本作の楽しみ方の1つではないかと思われます。

『幻魔大戦』(リュウ版)あらすじ

幻魔によって世界が滅ぼされた後の世界。そこでは人間はヒト族、幻魔はマ族と呼ばれています。

そんななか、1人のヒト族の母親が、双子の赤ん坊を産みました。しかし双子のうち1人は、眼が光っていたのです。その子を、1匹のオオカミが連れ去りました。オオカミはこの地を統治する幻魔のボスの元へと赤ん坊を届け、さらにボスから、母親の元にいるもう片方の子供を見張る使命を受けました。

双子の赤ん坊は、幻魔のボスと人との間に生まれた子供だったのです。

幻魔大戦(リュウ掲載版) 神話前夜の章 前編 (石ノ森章太郎デジタル大全)石ノ森章太郎講談社

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母親とともにヒト族の元で育った赤ん坊はジン、マ族として育てられた赤ん坊はルーフという名前を付けられ、やがて赤ん坊から少年へと成長しました。

しかし、父親がいないジンは他のヒト族から迫害を受け、ルーフはマ族の義母と義父からぞんざいに扱われることとなります。

やがてルーフは親に追い出され、ジンはマ族との戦いで死んだ母親の仇を取るために、それぞれ外の世界に旅に出るようになるのです。

見所をネタバレ解説!

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出典:『幻魔大戦(リュウ版)』1巻

最初の『幻魔大戦』の続きのような作品が、『幻魔大戦(リュウ版)』です。幻魔が支配する世界で、人間の文明が原始時代のような暮らしにまで後退し、幻魔の手下である獣人が、人間を家畜のように管理しています。

荒廃した悪夢のような未来を描くディストピアものになっていますが、動物が人間を管理しているこの設定は『猿の惑星』と似ています(実際ヒト族を管理しているのは、猿そっくりのエン族という種族)。

物語はマ族(幻魔)の血を引く子供として生まれた双子ルーフとジンが主人公で、貴種流離譚(きしゅりゅうりたん:若き英雄的存在の人物が、試練を乗り越えて立派に成長するもの)的な話の構造です。

お互い正反対の境遇でありながら、ルーフはマ族から、ジンはヒト族から迫害されるという、似たような運命を背負うのです。この双子がいかなる運命をたどり、どうやって出会っていくのかが本作の見所でもあります。

また幻想絵画のような未来の地球の描写が素晴らしく、SFというよりは退廃的なムードのファンタジー作品の場面に見えます。

超能力バトルも見所で、「幻魔大戦」シリーズでは1番迫力があるといえるかもしれません。

たとえば第2巻。ルーフが海辺で出会った、老人の姿をしたマ族と対峙した際の場面では、老人の体が炎になって燃え上がり、火の玉となってルーフに突撃します。

それに対してルーフは、超能力を使って火の玉を防御。その際、体から稲妻を発して、巨大な光で周囲を包みこみます。そして竜巻や津波を起こして、マ族を倒すのです。その光景は幻想的で、大変美しいものでした。精神的なパワーの戦いを絵画的に、そして漫画的に描写しているわけです。

小説では平井テイスト、漫画は石ノ森テイストでそれぞれ違っているのが魅力でもある本作。石ノ森版は幻想的かつ正統派のSFもの、平井版はオカルトよりの内容です。この違いを楽しむのも、1つの楽しみ方ではないでしょうか。

蔵無(ぞうむ)

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