経済制裁と政策が、欧州エネルギー危機をさらに悪化させる

経済制裁と政策が、欧州エネルギー危機をさらに悪化させる

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2022/09/23
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欧州連合(EU)を含む欧州各国の政府はいま、経済や人道面で最悪の事態を避けるための窮余の策として、エネルギーのサプライチェーン上のありとあらゆる要素に「上限価格(プライスキャップ)」を課そうと躍起になっている。だが、新たな研究や業界の全体的な傾向を見るかぎり、現在拡大中の危機はさらに悪化しそうだ。

現時点で原油と天然ガスの最大の生産国となっている米国の掘削リグ稼働数は、7月初旬から横ばい状態が続いている。この状況から読み取れるのは、欧州や世界のその他の地域は、米国のシェール業界から早期に追加供給が得られると期待するべきではない、ということだ。

エネルギーサービス企業のベーカー・ヒューズおよび、エネルギー情報企業エンベルス(Enverus)のデータでは、9月第2週に入って、稼働中のリグの数が大幅に減少していることから、少なくとも2023年の掘削予算が使えるようになる同年の初頭までは、リグの稼働数が増加しない可能性が高い。

さらに、その時期になっても、稼働数が減少すると予測するに足る理由は、増えると考える理由と比べて、少なくとも同程度には存在する。

バイデン政権は、米国内で新規採掘を行うための土地のリース契約および掘削活動全般に制約をかける方針を打ち出しており、この取り組みは非常に大きな効果を発揮している。

実際、エネルギー調査会社ライスタッド・エナジーの新たな調査リポートによると、原油およびガスのリース契約を制限するというバイデン政権の方針は全世界に及んでおり、新規区画の掘削権提供および総面積は、20年来の低水準にあるという。

リース契約に関して、調査リポートの執筆者は以下のように書いている。「今年(2022年)に入って現在までに契約が結ばれた面積は32万平方キロメートルと、20年来の低水準にある。

また、今年の全世界のリースラウンド数は44件になるとみられる。これは、2021年より14件少なく、2000年以降では最低の水準だ」

仮に生産量が突如として回復し始めたとしても、全世界で利用可能な精製能力にはますます制限が増えており、原油生産はその影響を受けることになるだろう。

国際エネルギー・フォーラム(IEF)がS&Pグローバルと共同で行った新たな調査リポートによると、全世界の燃料精製能力は、この2年間で日産380万バレル(bpd)まで落ち込んでいる。

このリポートの概要には、以下のような指摘がある。「利用可能な精製能力を持つのは、主にロシアと中国の2カ国だが、ロシアからの輸出に関しては制裁が、中国に関しては国内政策が障害となり、十分に稼働できない状態だ」

さらにこう記されている。「2023年末までに稼働予定の精製能力は、実質で日産200万バレルに達する。だが、過去の例を見ればわかるように、スケジュールの遅延や運用時の問題点により、増強が思うように進まないこともあり得る。

これらの精製所は、新規に建設される、大規模な燃料主体の精製所としては最後のケースになる可能性が高い。エネルギーシフトにより、今後は、従来型の精錬能力への需要が頭打ちになると考えられるからだ」

このような状況は、欧州に大きな影響を及ぼすだろう。欧州各国の政府は、自らが課した制裁により失ったロシア産エネルギーの穴埋めをするため、新たな原油、石油製品、天然ガスの主要な供給源を確保する取り組みを続けている。

政策や制裁がエネルギー不足を引き起こし、エネルギー不足が価格の上昇をもたらし、価格上昇によりさらにエネルギーが不足する状況に陥っているというのが、筆者たちの認識だ。

需要の高いコモディティに、一連の「上限価格」を課すという欧州の計画は、悪循環に陥り、悪化の一途をたどっている危機のなかで、これらのコモディティの不足を深刻化させるものにしかならないだろう。

西側世界の政治家たちが一歩引いて、自分たちの政策が問題の根源であるという認識に至る日が来ない限り、今の危機が一層悪化していくことは避けられないだろう。

forbes.com 原文

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