F1デビューの角田裕毅の同期がド派手だ。シューマッハJr.の実力は

F1デビューの角田裕毅の同期がド派手だ。シューマッハJr.の実力は

  • Sportiva
  • 更新日:2021/02/22
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日本人としては7年ぶりにF1デビューする角田裕毅

2021年シーズンのF1には3人の新人ドライバーが誕生する。ハースからはミック・シューマッハとニキータ・マゼピン、アルファタウリからは角田裕毅がそれぞれデビューするが、今季の新人は皆が若く、キャラクターが立っている。

21歳のミックはご存じのとおり、7度の世界チャンピオンに輝いたミハエル・シューマッハの息子。父は22歳で臨んだ1991年のベルギーGPで新興のジョーダンから急遽参戦し、予選で大ベテランのチームメイトであるアンドレア・デ・チェザリスを上回る7位に入り、衝撃的なデビューを果たした。それから30年後、伝説のチャンピオンの息子が初陣を迎える。

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ミハエルがフランスのスキー場で転倒し、頭部に深刻なダメージを負ったのは2013年の年末。当時14歳だったミックは、この時父と一緒にスキーをしており、そのショックは計り知れないが、その後モータースポーツで順調にキャリアを重ねてきた。

17年に4輪レースにデビューしたミックは、F3でチャンピオンを獲得すると、19年から父が在籍したフェラーリの育成プログラムのサポートを受けてF2にステップアップ。参戦2年目にチャンピオンを獲得し、F1まで駆け上がってきた。

若い頃からメルセデスの英才教育を受けてきた父ミハエルと同様に「エリート街道」を突き進んできたミックだが、ドライビングスタイルは父親とは大きく異なる。ミハエルは爆発的なスピードでライバルを圧倒していくタイプだが、ミックには一発の速さはない。実際に昨年のF2でもポールポジションを一度も獲得していないが、うまくレースをマネジメントし、いつの間にかトップに上がっているというタイプだ。

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ミハエル・シューマッハの息子、ミック

父との共通点は、学習能力の高さと、献身的に仕事に取り組む姿勢。ミハエルの現役時代は夜遅くまでピットにとどまってエンジニアとミーティングする姿がよく見られたが、ミックも同じアプローチをとっている。マシンづくりに献身的に取り組み、ピットでエンジニアと話し込んでいるという。

スタートが非常に得意で、ロケットスタートを決めて大きくポジションアップするシーンが何度も見られる。またオーバーテイクにも定評があり、マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)が「ミックは才能があり、追い抜き際のドライビングがうまい」とコメントしている。

サーキットでの佇まいも父とは対照的と言っていいだろう。若い頃のミハエルはコース内外でピリピリしている場面が多かったが、ミックはさわやかなナイスガイ。これまで数えきれないほど父と比較され、同じ質問をぶつけられたはずだが、怒ることもなく、どんなメディアにも「父は私のいい手本です。比べられてもまったく気にしない」と丁寧に受け答えしている。

そんな優等生のミックとコンビを組むのは、対照的なキャラクターのマゼピンだ。ロシア人として4人目のF1ドライバーとなるが、久しぶりに誕生した"ヒール"として注目を集めている。

F1界では息子よりも先に、父親でロシアの実業家ドミトリーが有名だった。数年前から息子をF1に参戦させるために、フォース・インディアやウイリアムズ、ルノーなどを買収しようと画策し、その度にニュースになっていた。F1チームの買収は実現しなかったが、そのあり余る資金を元に、息子を資金難に苦しんでいたハースのドライバーにすることには成功した。

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公私ともに振る舞いが注目されているニキータ・マゼピン

マゼピンはF3時代にはライバルを殴って出場停止になったり、F2ではレース中に危険なドライビングをしたとして2度もペナルティを科されたり、サーキット内での振る舞いが度々、問題視されていた。それはサーキットの外でも変わらない。彼はロシアの名門モスクワ大学の学生でもあるのだが、昨年末には自身のインスタグラムに車内で女性の胸を触ろうとする動画を投稿したり、最近は信号無視で罰金を科されたりと、話題に事欠かない。

現代のF1は自動車メーカーの育成選手がグリッドの大半を占め、彼らは若い頃からドライビングのほか、メディアやスポンサーへの対応などもしっかりと教育されて、スマートで洗練されている。そのなかで、マゼピンは異彩をはなっている。

マゼピンとミックが同じチーム内でうまくやっていけるのか、そう心配する人がいるかもしれないが、すでにふたりはレーシングカート時代に2年間、イタリアの名門チーム「Tony Kart(トニーカート)」でチームメイトとして活動している。お互いを尊重し、関係も悪くなかったという。

マゼピン自身は所属するハースのマシンの力を冷静に分析しており、デビューイヤーは難しいシーズンになることを覚悟しているようだ。「おそらく僕は誰とも戦うことはないだろう」とさえ語っている。とはいえ、同じ年齢のチームメイトには絶対に負けたくないはずだ。

マゼピンのハートにいったん火がついたら、止めるのは容易ではないだろう。ハースのギュンター・シュタイナー代表にかかる責任は重大だが、彼も非常に難しい立場にある。チームの財政を支えるマゼピンがチームを去ることになれば、ハースは存亡の危機に立たされる。その一方でパワーユニットの供給を受けるフェラーリだけでなく、世界中から注目を集める"金の卵"ミックをしっかりと育てなければならないという使命もある。シュタイナー代表は難しい舵取りを強いられることになるだろう。

いずれにせよ、好対照なキャラクターを持つミックとマゼピンの対決は今シーズンの大きな見どころのひとつになる。

このハースのふたりと昨年F2で激しく争った角田裕毅は今シーズン参戦するF1ドライバーの中で最年少の20歳。ホンダとレッドブルの育成プログラムのサポートを受け、アルファタウリから参戦する。チームの角田に対する期待は大きく、3月12〜14日の公式テストの前に旧型マシンを使って2度のプライベートテストを実施している。

角田の実力は今さら説明する必要はないが、昨年、国際自動車連盟(FIA)が主催する全カテゴリーの新人ドライバーを対象とした「FIAルーキー・オブ・ザ・イヤー」を日本人として初受賞したことでも証明されている。この賞を過去に受賞したのは、ダニール・クビアト、マックス・フェルスタッペン、シャルル・ルクレール、アレックス・アルボンといった才能あるドライバーばかりだ。

角田が過去の日本人ドライバーと異なる点は、メンタル面の強さだろう。角田が在籍した鈴鹿サーキットレーシングスクール・フォーミュラを現在、佐藤琢磨とともに指揮する中野信治も「角田はいい意味でのふてぶてしさがあります。海外で仕事をする際には、図太くないとやっていけません。角田は日本よりも海外で仕事をするほうが向いているかもしれません」と評していた。

そんな角田の性格の一端を垣間見たのが、昨年末に行なわれたメディア会見だった。未来の自分はどうなっているかと問われた角田は「自分の野望としては、ルイス・ハミルトン選手が2020年に実現した7回目のワールドチャンピオンを抜きたいと思っています。2035年までにそれが実現できればうれしいです」と話していた。

オンラインでのインタビューとはいえ、大勢のメディアを前にして、一切の照れやリップサービスもなく、これほど堂々と語れる日本人ドライバーがいただろうか。角田にはこれまでの日本人ドライバーにはなかった才能と可能性を感じる。

ファンの間では早くも日本人としての初めての優勝、そしてチャンピオン獲得を期待する声が高まっているが、現実的にはアルファタウリでは優勝は難しいかもしれない。しかし、レッドブルに新加入したセルジオ・ペレスが前任者のアルボンのように力を発揮できず、シーズン中に角田がトップチームのレッドブルに昇格するチャンスがあれば、日本人初の優勝もあり得る。それだけに、夢が大きく広がっていく。

ただし、目の前にあるのは夢ばかりではない。忘れてはならないのは、角田はレッドブルの育成プログラム「レッドブル・ジュニアチーム」の一員としてアルファタウリのシートを得たということだ。レッドブルの育成プログラムの責任者を務めるヘルムート・マルコ博士は才能のある選手には惜しみないサポートとチャンスを与えるが、「コイツは使えない」と判断した時の対応は情け容赦ない。シーズン中であっても、他の育成ドライバーと入れ替えたり、場合によってはお払い箱にすることもある。

レッドブルの育成プログラムの目的は「未来のF1チャンピオンを見つける」こと。若き日のセバスチャン・ベッテルや現在のフェルスタッペンのように、常にチャンピオンになる可能性を見せ続けなければ、未来はない。厳しい環境で角田は戦いに挑むことになるが、日本のファンが抱く長年の夢、日本人ドライバーの勝利をぜひ実現してほしい。

川原田剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi

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