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歴史に残る会社の立ち上げにタイミングが重要なワケ

歴史に残る会社の立ち上げにタイミングが重要なワケ

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/07/22
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「タイミング」はスタートアップを成功させる上で最も重要な要素の1つです。

たとえば、1995年にGeneral Magicという企業がスマートフォンの初期型を開発しましたが、事業は上手くいきませんでした。タッチスクリーンはまだ最先端技術として実用化が進み始めたばかりで、プロセッサーの消費電力も非常に高く、バッテリーの性能も追いついていなかったためです。また、当時はEメールすらまだほとんど普及していない状況でもありました。

しかし、その数年後、同スタートアップの初期から活躍していた社員の1人であるTony Fadell氏がAppleに入社し、iPhoneの開発を主導することになります。

また、今年の3月に、Instacartという食料品の配達サービスを提供するスタートアップがシリーズIの資金調達を行い、時価総額が390億ドル(約4兆3000億円)に達しました。シリコンバレーの寵児としてかなり前から注目されていた企業ではありますが、今回のコロナ禍をきっかけに爆発的に成長しました。

この食料品配達ビジネスというのも、今でこそメジャーなカテゴリーですが、ドットコムブームのときは「根拠なき熱狂」の典型という扱いでした。

実際、Webvanという食料品配達サービスのスタートアップも、過剰に持ち上げられ、SequoiaやBenchmark、ソフトバンクなどの投資家から3億9600万ドル(約436億円)も調達したあげく、結局倒産しています。

その原因の1つは、インフラへ積極的に投資する方針があだとなってコスト構造が悪化し、事業の継続を困難にしてしまったことです。

しかし、より致命的だったのは、インターネットの普及や消費者行動が「ネットで食料品を買う」というサービス形態に追いついていなかったことです。つまり時代を先取りしすぎていたのです。

このように、優秀なチームや優れたアイデアは確かに重要ですが、良いタイミングに恵まれなければいずれも埋もれてしまいます。

そのため、Coral Capitalでも新しい投資機会を検討する際にはタイミングを判断基準に含めることが多く、「本当に今が、この企業を立ち上げるのにベストなタイミングか」という点について考えるようにしています。

具体的には、チームやアイデアにとって追い風となるような「変曲点」が訪れているかどうかを見ます。

まず、「テクノロジーの変曲点」があります。特定のプロダクトやビジネスの成功につながるような、1つもしくは複数のテクノロジーに関わるターニングポイントのことです。

例えば、タッチスクリーンやプロセッサーの高度化は、iPhoneの実現につながりました。そこからスマートフォンの普及がはじまり、より大規模な開発や生産、納品のサイクルが繰り返される中で、次第にその構成パーツの値段が下がり、機能も向上していきました。その結果、TeslaやNest、Oculusなどを含む多くの企業の成功へとつながったのです。

このように、ある変曲点の勢いが、連鎖的に他の変曲点を次から次へと生み出すことがあります。

スマートフォンの普及は「普及の変曲点」も表しています。インターネットにつながる強力なコンピューターが、いつでも使える手のひらサイズになって一般的に普及したことにより、世界中で様々な機会が爆発的に生まれました。

そうやってモバイルでインターネットやGPS機能が使えるようになったからこそ、UberやDoorDashなどのサービスも開発できたのです。

InstagramやSnapchatも、高機能カメラが搭載されたスマホの普及によって可能になりました。

そしてそれら全ての機能が揃ったことで全般的な利便性が向上しなければ、メルカリというサービスを実現することもできなかったはずです。

もう1つの変曲点は、「規制の変曲点」です。

例えば、米国のPlaidという企業は、各種金融機関と連携し、スムーズな取引や個人情報のやり取りをアプリで実現するプラットフォームを提供していますが、このサービスは2010年7月に成立したドッド・フランク法(ウォール街改革および消費者保護法)により可能になりました。

同法律は、2008年のような金融危機を回避することを目的として、一連の金融改革をもたらしました。

その1033条では、銀行などの金融機関は「消費者の要求に応じて……特定もしくは一連の取引、またはアカウントに関する全ての情報を提供しなければならない」と規定されていると同時に、消費者はそれらの情報を「コンピューターのアプリケーションなどで使用可能なデジタル形式」で入手する権利があると定められています(注:非公式訳)。

一見、ささいな変更ですが、これをきっかけに金融サービス業界は一変しました。伝統的な金融機関がこれまで管理していたデータにアクセスできるようになったおかげで、まるでカンブリア爆発のように数多のフィンテックアプリが誕生したのです。

SmartHRも「規制の変曲点」から恩恵を受けた企業の1つです。2008年より、行政の「e-Govポータルサイト」を介して社会保険や労働保険関連の申請手続きをオンラインで行えるようになりました。

その後、2010年には複数の手続きをまとめて申請できるようになり、より一層使いやすくなりました。

さらに2014年10月には、ユーザーの利便性のさらなる向上を狙って外部連携APIの仕様が公表されています。

この流れを経て、2015年11月にSmartHRは立ち上げられました。

また、「常識の変曲点」というのもあります。他の変曲点と比べるとやや抽象的ですが、影響力は大きいです。

例えば、コロナ禍の前は、これほどまでに多くの業務をリモートへ移行できるとは、ほとんどの人が想像していなかったと思います。それが今では、ヘルスケアのようにデジタル化を頑なに拒んできた業界でさえも、変革が起こりつつあります。

こうした変化は、かなり長期的な影響を社会にもたらす可能性があり、新しいパラダイムや機会につながります。

このように過去の例を見る限り、市場に参入するのが誰よりも早かった、もしくは遅かったなどよりも、変曲点にどれくらい近いタイミングで事業を展開できたかのほうが重要であることがわかります。

将来を的確に予想できる「未来学者」は、同時に過去の考察に優れている「歴史学者」でもあるといいます。

起業家も、同タイプのビジネスの失敗例を十分に研究し、なぜ失敗したのか考察した上で、その当時から何が変わったのか、何が変わりつつあるのかについて考えることが大切です。

優秀なチームが、優れたアイデアに取り組み、そしてベストなタイミングを掴み取ることで、歴史に残る企業は誕生するのですから。

P.S. 変曲点に関する独自の視点や見解などがありましたら、ぜひ教えてください。メールもしくはTwitterで、皆さまからのメッセージをお待ちしております。

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