飛行機が海の自然を守る! 特殊センサーを使った「潜らない水域調査」をご存じか

飛行機が海の自然を守る! 特殊センサーを使った「潜らない水域調査」をご存じか

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  • 更新日:2022/09/23
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ALBの計測イメージ(画像:国土交通省四国地方整備局)

水に触れず、空から調査を

地球規模の課題である気候変動問題。その解決に向け、環境省は2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した。その実現のためには、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出量の削減に加え、吸収作用の保全と強化が必要とされている。

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森林は二酸化炭素の吸収源として一般的だが、その面積は伐採や火災などで世界的に減少傾向にある。そこで近年、吸収源の新しい選択肢として注目されているのが、「ブルーカーボン生態系」と呼ばれる海洋生態系だ。

ブルーカーボン生態系とは、アマモやコンブなどが生育する藻場、湿地・干潟、マングローブ林などで、光合成によって大気中の二酸化炭素を取り込み、有機物として貯留する。その面積あたりの二酸化炭素吸収速度は、陸域の森林などと比べると5~10倍と非常に速い。

日本は四方を海に囲まれているため、炭素吸収源としての海域のポテンシャルが高い。このことから、ブルーカーボン生態系、特に全国各地に分布する藻場を把握し、二酸化炭素吸収量の算定につなげることが喫緊の課題となっている。

水域の調査と言えばこれまで、ダイバーが行う潜水調査のほか、魚群探知機やサイドスキャンソナーを搭載した船で海底の情報を記録する音響測深などが行われてきた。しかしこれらの方法は、調査を行う人の熟練度によって結果が左右されたり、時間がかかったりしていた。

このような問題を解決するものとして近年注目されているのは、特殊な航空機センサーを取り付けた

・小型飛行機
・無人航空機(ドローン)

だ。空中写真や高解像度画像を取得して画像解析を行ったり、航空レーザー測深機を使って海底地形を解析したりする方法だ。

熟練不要、誰でも調査が可能に

画像解析は、高解像度カメラやハイパースペクトルセンサーなどを備えた航空機で空撮画像を取得することにより行う。海中の藻場は黒っぽく映ることが多く、周囲の堆砂域(たいしゃいき)と違う状態で観測できる。この特徴を利用して、色などの波長情報から藻場を判別する。

2020年に発表された新潟県水産海洋研究所による調査では、無人航空機を使って撮影した334枚の航空写真を1枚の写真に合成し、機械学習の一種であるランダムフォレスト法を使った解析や、人による目視判別などの結果を比較した。

その結果、潜水の経験が無い人でも、正解のデータを参照することで、高い精度を示すことが明らかとなり、藻場調査のコストを下げる可能性があることがわかった。これは、条件さえ整えば潜水の経験の有無が判別結果に影響を与えず、熟練が不要であることを意味している。

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画像解析による藻場抽出結果(画像:中日本航空)

飛行機による調査効率は船の100倍以上

一方、航空レーザー測深機(ALB)を使った調査は、水中を透過し水底で反射する緑色の波長帯(グリーンレーザー)と、水面で吸収または反射する近赤外レーザーを組み合わせることで、密生した海藻の形状を把握する手法だ。

空間情報コンサルタントのアジア航測(東京都新宿区)が2016年2月、ALBによる航空レーザー測深と同日に、船による音響測深を行った。

それぞれがかかった時間を比較したところ、ALBは約4900haを2時間30分で計測したのに対し、音響測深では約130haを観測するのに7時間かかった。調査者らは、ALBの作業効率が音響測深の100倍を超える、と結論づけた。

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ALBによる画像解析結果(画像:中日本航空)

画像・地形データ解析を合わせた手法も

画像解析と、ALBによる航空レーザー測深を組み合わせた調査も始まっている。

2022年8月、中日本航空(愛知県豊山町)と総合エンジニアリング企業の東京久栄(東京都千代田区)は、ブルーカーボン量把握に関する共同研究を開始した。

この研究では、さまざまな波長帯の画像が取得できる航空機搭載型リモートセンシングシステム「CAST」と、ヘリコプター搭載型グリーンレーザー測深機「SAKURA-GH」などで調査を行う。ひとつの手法によらない調査方法で、ブルーカーボン量推定方法の確立などの基礎資料を得ることを目標に研究を進める方針だ。

このように、航空機による藻場調査は、さまざまな調査機関や企業によって研究開発が進められている。一方で、そもそも特殊なセンサーを搭載した航空機を保有する企業は限られているため、データ取得の段階でボトルネックが生じるという問題もある。

ただし、調査の手を止めてはいけない。今、世界では東京都と同面積の森林が1週間ごとに失われ続けているとも言われており、これに変わる二酸化炭素吸収源の研究が急がれている。

2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、従来の方法と航空機調査などの新しい手法をうまく併用しつつ、国・研究機関・企業が一丸となった対策が、今後さらに重要になるだろう。

瀬口あやこ(調査測量系ライター)

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