コネクテッドカーが直面する自動車版「ベータ対VHS戦争」

コネクテッドカーが直面する自動車版「ベータ対VHS戦争」

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2021/02/23
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クルマ同士やクルマと信号などのインフラが通信を行う上で、双方の通信規格が同じである必要性が出てきた。昨年11月に、米国のFCC(連邦通信委員会)は自動車通信の帯域幅を縮小する決定を下したが、これによって2つの主要な通信規格のうち、一方が優位に立つことになった。

車両同士や車両と信号機との通信は、Vehicle-to-everything(V2X)通信というコンセプトが基礎になっている。センサーを搭載した車両同士は直接通信を行い、衝突を避けるためにお互いの位置を教え合う。同様に、信号機や街路灯、サイクリスト、歩行者との通信も可能だ。

V2X通信技術には、「C-V2X」と「DSRC(dedicated short range communication)」という2つの規格が存在する。問題なのは、これらの規格がかつての「ベータ対VHS」のビデオ戦争のように、互換性がないことだ。ビデオ戦争では勝敗がついたが、V2X通信技術ではまだ明確な勝者は決まっていない。

「我々は、グローバル市場が多数の2次市場に分裂すると考えている」とV2X通信技術を手掛けるCommsignia Ltd.でチーフ・レベニュー・オフィサーを務めるSzabolcs Patayは話す。Commsigniaは、ハンガリーのブタペストに本拠を置く企業だ。

C-V2Xは、多くの携帯電話が採用するチップ技術であるLTEを用いるが、DSRCは、Wi-Fiのようなワイヤレス規格で、自動車の安全通信に最適化されている。両方ともWAVEと呼ばれる通信プロトコルを使用している。

米国では、FCCが5.9GHz帯のうち、帯域幅30MHzをITS(高度道路交通システム)に割り当て、DSRCではなく、C-V2Xを標準技術にすると発表した。この発表は物議を醸したが、これによってC-V2Xが一気に優位となった。

「FCCは、20年以上前にDSRCをITSサービスの標準技術に指名したが、これまで十分な展開がなされておらず、ミッドバンドの周波数帯は長年利用されてこなかった。交通安全を向上させるITSサービスの展開を急ぐため、今後はC-V2Xと互換性がないDSRCから離れ、C-V2Xを推進する」とFCCは声明の中で述べている。

米フォードと独VWが異なる規格を採用
帯域の低い45MHz幅は、”アンライセンス(免許不要)”のワイヤレス通信に割り当てられ、Wi-Fiが使えるようになっている。FCCの前会長であるアジット・パイは、コロナ禍でビデオ会議やテレワークが増え、Wi-Fiの重要性が高まっていることもFCCの決断の背景にあるとし、「米国では、Wi-Fiによって生み出された経済価値は2023年までに倍増し、1兆ドルに達する見込みだ」と述べている。

2019年に、フォードは2022年から全ての車種にC-V2Xを導入すると発表した。一方、世界最大の自動車メーカーであるフォルクスワーゲンはDSRCを導入した車両を生産しており、欧州ではDSRCが標準規格になりつつある。また、世界最大の自動車市場である中国では各社がC-V2Xを採用している。

このように、C-V2Xは優位に立っているが、全世界で勝利するには至っていない。「世界の各地域で異なる規格が導入されるだろう。欧州ではDSRCが勝利すると見られるが、最終的な決断とは限らない」とCommsigniaのPatayは話す。

Patayは、どの規格が勝利するかに関わらず、自動車メーカーは車両へのV2X通信の実装を加速する必要があると指摘する。一部のメーカーは、2023〜24年に生産を開始するとしている。

Patayによると、V2Xセンサーはコストが比較的安いことに加え、自動運転車の普及に向けて重要性がさらに増すという。実際、欧州では安全性の向上を図るため、V2X通信を標準必須技術にするべきという動きが広まっているという。

「どうしてエアバッグやV2Xが必要なのかという議論よりも、どうすればV2Xのメリットを最大化できるかという議論が重要だ。自動車業界や輸送業界では、V2Xをあらゆる車両に搭載する方向に進んでいる」とPatayは話す。

将来的にV2Xは普及するだろうが、世界的な標準規格を定めない限り、地域によってはかつての家庭用ビデオの規格戦争における、負け組となったベータ方式を採用してしまう懸念が生じている。

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