「臨海地下鉄」構想、都主導で中央区そっちのけ? 現場からは「TX接続言及なし」の戸惑い、そもそも都バス増発が先ではないのか

「臨海地下鉄」構想、都主導で中央区そっちのけ? 現場からは「TX接続言及なし」の戸惑い、そもそも都バス増発が先ではないのか

  • Merkmal
  • 更新日:2022/11/25
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「臨海地下鉄」新線のルート(画像:Merkmal編集部)

中央区が渇望した「臨海新線」

『読売新聞』電子版が11月24日、「臨海地下鉄」新線のニュースを報じ、話題を呼んでいる。記事によれば、計画の詳細は小池百合子都知事が近く公表する。

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路線は東京駅から有明方面へ約6kmで、東京駅の北東側に設けられる新駅から、

・新銀座
・新築地
・勝どき
・晴海
・豊洲市場
・有明・東京ビッグサイト(いずれも仮称)

を経るとされている。JR東日本が計画を進めている「羽田空港アクセス線」との接続も検討しつつ、2040年代前半の開業を目指す。

報道で広く知られることになった同計画だが、先んじて、建設業界紙『日刊建設工業新聞』11月10日付がこれまでの経緯を詳報している。

これによれば、臨海新線の事業化は2021年7月に行われた国土交通省の交通政策審議会で

「つくばエクスプレスとの接続も含め、事業化に向けて検討の深度化を図るべき」

との答申があったことで具体化。9月には、東京都が有識者で構成する「都心部・臨海地域地下鉄構想事業計画検討会」を設置、これまで3回の会合を開き検討が進められていた。

これまで臨海新線構想を声高に主張していたのは、路線の多くが走る東京都中央区だった。おりしも2022年11月8日、区役所や町内会の関係者を集め、区内の月島第二児童公園にて新線推進を目指すパネル展示と集会が開催されたばかりだ。

中央区は2014年、臨海部と都心部を結ぶ地下鉄新線の調査検討を開始し、一貫して建設を求めてきた。臨海部の公共交通として、ゆりかもめの延伸(豊洲駅から勝どき・晴海方面)を検討する声もあったが、同区は一貫して延伸を拒否してきた。

一時は、晴海通りに路面電車を新設する構想も浮上したが、その後は地下鉄新線の建設を求めて揺るがなかった。

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建設業界紙『日刊建設工業新聞』のウェブサイト(画像:日刊建設工業新聞社)

都交通課は「蚊帳の外」

実現可能かどうか当初疑問に思われていたが、2021年の交通政策審議会の答申以降は勢いづいたのか、2022年の推進集会で登壇した吉田不曇(うずみ)副区長は

「都や国が(計画を)近々発表し、おおよそ新線の位置や駅が決まってくるはずだ」

と発言し、期待を強めていた。

そうしたなかでの報道である。中央区役所では今後どのように新線計画に参画していくのか――交通課に24日、聞いた。

「私たちも今日の報道を見て知ったので、これからどう対応するかを検討しているところです」

計画を求めているはずの中央区が、「今日知った」とは一体どういうことなのか。

「東京都の検討会は有識者を招いて実施するもので、中央区は参加していません。そのため、私たちも議事録などを基にどういった話し合いが行われているのか注視していたのです」

これでは、まるで「蚊帳の外」である。

どうやら、新線建設を求めて中央区が制作した報告書なども参考になっているようだ。ただ、報道を見た限りでは中央区が望む路線になっているとはまだ言い難い部分もあるという。

「まず、つくばエクスプレスとの接続について言及がなされていません。また、報道に付属している地図を見た限りでは、新銀座駅の位置がずいぶんと北に寄っているような気がします」

そして、最大の問題は完成時期が2040年代後半となっていることだ。

「東京都の報告書にどう書かれているのか。まずそれを確認しなくてはいけません。ただ、2040年代に完成ということなら、もう少し早くする方法を東京都と話し合っていかなければなりません」

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「パークタワー勝どきミッド/サウス」の外観完成予想CG(画像:三井不動産)

深刻な最寄り駅の混雑化

中央区が「2040年代では遅すぎる」と考えるのは当然である。なぜなら、現在の交通網では対応しきれない臨海部の人口増は、もう間もなく起こるからだ。

1万人以上の総人口を想定する東京五輪選手村跡地「晴海フラッグ」は、2024年に入居開始を予定している。総戸数2786戸の「パークタワー勝どき」は2023年の完成予定だ。

最寄り駅は都営大江戸線の勝どき駅だが、かねてよりマンション急増で駅の混雑化が深刻になっており、ホームを増設している。2019年から2面2線で運用しているが、まだ広いとはいえない。

パークタワー勝どきの入居開始後の混雑を避けるために、マンション出入口から直結する地下道も工事中だが、晴海フラッグと併せて駅と建物周辺の混雑化が深刻になるのは必至だ。

また、銀座や東京駅方面への通勤・通学客のためには、現在の晴海埠頭(ふとう)と東京駅とを結んでいるバスの大幅増発も求められる。つまり、対応は進めているものの

「2040年に地下鉄が完成しても間に合わない」

というのが中央区の本音なのだ。

「都営バスの増発が今後必要なことはわかっていますが、現状はどのくらい増やすか都交通局と話し合っているところです。始めてみないとわからない部分も多いので、早めの対応が必要だと思っています」

倉庫と空き地しかなかったあの勝どき・晴海は、わずか20年あまりで莫大(ばくだい)な人口を抱えるタワーマンションエリアに急激に変化した。ゆえに、中央区も公共交通をどう配置するか苦慮しているようだ。

そうしたなか、ゆりかもめの延伸については

「地上に高架を建設することで、地域を分断しかねない」

と、改めて否定的な見解を語った。

臨海地下鉄への期待は大きい。しかし、まずは都営バスをどれだけ増発するのか――これが地元住民にとっての課題だろう。

昼間たかし(ルポライター)

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