現役東大教官が教える「受験必勝法」

現役東大教官が教える「受験必勝法」

  • JBpress
  • 更新日:2021/02/22
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大学入試のコツを知らないと損をする(写真は東京大学)

コロナだ、地震だ異常気象だ、あるいは五輪だ、3.11から10年だとか、最近の話題には事欠きません。

しかし、それらと無関係に寒い冬は少しずつ春の色を濃くしていて、日本ではこれすなわち「受験シーズン」です。

実は私は「現国入試頻出著者」でもあるので、この連載を受験目的でティーンエージャーが読んでいたりするという、恐るべき現実もあるらしい。冷や汗ものです。

ということで、ここでは受験生の皆さん、その親御さんも含めた読者向けに、受験攻略法、必勝法、その後の人生の春秋と、AIが加速度的に普及する2020年代の知識集約型社会での人材育成などを、短い紙幅で完結にまとめてご紹介してみましょう。

今回の結論を先に書いておきます。

「秀才」を演じる。これをきちんと意識してできれば、大概の入試は落第点の取りようがありません。

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受験必勝法:「秀才」を演じること

大半の試験で合格するためには「合格点に値する答案を書けばよい」という鉄則を記しておきます。

30年ほど前、当時はバブルだったからですが、時給2万円の受験指導で稼いでいた「元東大生」講師のレクチャーですから、お買い得です(笑)。

まず出発点以前。

苦手科目がある、という人は、それを「気にします」。

「僕は数学が苦手・・・」「私は英語ができないの・・・」

「それ、やめましょ」というのが「必勝受験指導」の1の1。

気にしても意味ないんです。無関係なことをあれこれ、思い悩むな。

君が何者であろうと、なかろうと、即物的に、合格点に達する答案が書けていれば合格点がつくし、書けなければ「それ以外」となる。

「自分」をめぐる「センチメント」を、ひとまず忘れること。

それを、こんなふうに指導します。

まず、クイズかゲームの感覚で、何気なしに、プラスマイナスゼロの出発点から始めるんですね。

それで1つトライ・・・できた。2つ目トライは・・・できただろ?

で、三つめ・・・。

こんなふうに、根拠が明確な出発点から一つひとつできるようにしてやると、だんだん生徒の表情が明るくなり、その先、じきにプラスマイナスゼロの真剣な、スポーツ選手みたいな表情になってくれば、まあ、もう変な心配いらないですね。

こういうの、実はいまでもやっています(ただし、東大では時給2万円はもらっていません。企業向けですと、少し違う価格設定でご相談するようになります)。

出発点以前のポイントは、喜怒哀楽の感情と無関係に、正解とされるミットの守備範囲にボールを淡々と投げ入れていく、その「作業」ですね。

多くの子供が、そういう出発点以前の逡巡で<学力増進>以前で止まっている状況がとても多いし、私自身も高校時代は、そんなことを気にしたりもした。

受験を通じてそういうものをなくし、大学以降、特に指導するようになって苦手科目という概念と無縁になってから、善くも悪しくも考え方が変わりました。

「苦手科目」とは何か?

それは「錯覚」に過ぎない。その人が「苦手だ」と思い込んでいる科目が「苦手科目」であって、例えばコンピューターはそういう先入観がないから、何でも食わせれば学習します。

同じようにやればよい。

そうやって「心頭を滅却」した先に、具体的なノウハウがあるわけです。

出題者の観点で問題を見る

そこで次に、必ず合格する「秀才を演じる法」を伝授しましょう。

それは、端的には「過去問」の分類と分析、そして「出題者」の観点で同一傾向の問題が出せるようになること、採点基準を念頭に点を与える観点で向き合えるようになることなんですね。

そうすると8、9割以下の点は、ほぼ取りたくても取れないようになります。「採点者の視点」です。

その「採点基準」のなかで、場合により最低ラインの劣等生答案も「演じ」れば、そこそこの「平均点」程度の解答も「演じ分けられ」、あらゆる出題ポイントの痒いところに手が届く「秀才も演じる」ことができる。

こうなると自由自在です。

「出題者」は、出すだけでなく「採点者」もやらなければならないですから、ありとあらゆる「誤答」も目にする。

子供でも、プロの棋士とか、こういうことが万全にできるでしょう?

ここの指し筋で失敗したとか・・・。全く同じことです。冷静に考えてみてください。

高校でも大学でも、受験というのは、出題範囲が決められていて、問題作成者(私も当然、日々問題を作ります)というのは、ルールに従ったなかから、有効な問題を作ることを考える仕事です。

ここでもう一つ、「試験問題出題の極意」もお伝えしておきましょう。

それは、難問奇問で誰も答えられないと、選抜試験の意味をなさないということです。

実力無関係の難問を出したらどうなるか・・・?

「零点平野」が延々と続いて、合格不合格を分けることができず、試験として使い物になりません。

つまり、適切に得点してもらって、それが最後まできちんとつながると満点級、という誘導尋問みたいなことになっている。

いたずらな難問奇問は、試験としては不適切なものにすぎません。

「出題者の立場に立つ」そして「採点者の観点から、秀才をきちんと演じて見せる」

これができるようになると、いきなり人が変わったように、水を得た魚のように伸びていきます。

東大の人材育成:下級生を指導する代用教員の伝統

次に、そのような人材を育てる、東京大学に延々と伝わる指導の極意をお教えしましょう。

それは「1段階下の学生を指導させて、可能なら問題・解答も自作して学生に実施してみる(教育助手の体験)」というものです。まず一般の例でお話しましょう。

大学受験を控えた高校生は、余裕がある時期なら中学生とか、あるいは高3が高2、高2が高1の問題を作って、実際に出題して、後輩を指導させてみると、飛躍的に伸びる場合があります。

まあ、1学年下とかではなく、余裕をもって見られる距離、例えば「高校生が小学生の中学受験を指導してみる」みたいなのが効果的と思います(私が高校時代、最初に体験した<アルバイト>がこれでした)。

これは現在でも大学のなかで日常的に繰り返される、かつての「代用教員」以来の伝統的なシステムでもあります。

私の担当する講義の実例でお話しましょう。

東京大学理学部物理学科3年に在学するH君、20歳。

彼は現在、同じ東京大学の教養学部、つまり1、2年向け開講されている授業の「演習」担当としてTA(ティーチング・アシスタント)=教育助手を務めています。

教える内容は、私の担当する「文理共通、AIのための数学」を扱うコマの演習。

これは文系の学生、つまり高校で数ⅡBを学び数Ⅲの準備がない生徒を前提に、世の中に出て金融、証券などで戦って行けるAI・機械学習の基礎を理解できるようにするわけです。

数学は、実際に手を動かして演習しないと、指くわえているだけでは永遠に身につかない。

この演習を担当するアシスタントで、問題の大半は私が作りますが、一部は「出題から考えてごらん」と裁量を提供します。

この場合は、解答案も各種、自分で作る必要があり、実際に下級生たちと一緒に考えると、教える方がかなり身につきます。

そういう「TA」代用教員を、学部3年生が務めて、学部1、2年生と一緒に「教え、教えられ」ながら伸びている。本学以前、旧制高校旧制大学以来の、非常にオーソドックスな伝統です。

1年次からの付き合いの彼は、そろそろまる3年になりますが、率直に最初はあまり指導が得意ではなかった。

それが、飛躍的といってよい進歩を現在進行形で見せている。

今後、彼は今教えているような教養の内容で「大学院入試」を受けるでしょうが、心配するようなことは何もありません。

これは30数年前、もし自分自身が物理学科3年のときこういう経験をしていたら、その先良かっただろうな、という最良のケースを彼に提供しているつもりで、与えているのです。

後輩の面倒を見るTAを経験することで、本人が著しく伸びるのが普通です。

一般に教室で一番勉強してきているのは、黒板にお尻を向けている側の人間と決まっています(コロナでこの比喩が使いにくくなりました・・・)。

23年前に東大に任官した直後から、こんなふうに代用教員「教育助手バイト」を重視しているのには理由があります。

私自身、そうやって伸びた自覚があるから。でもそれは、大学院以降でした。

私は「東大生時代」正確には1年次から大学院修士1年まで「時給2万円」の受験指導バイトをしていました。しかし、修士2年の春にすべてをすっぱりやめました。

直接の理由は「出光音楽賞」を貰ったからです。

音楽家の20代はオーケストラやオペラの下積みを現場で体験しないと30代以降使い物にならないという親戚筋の助言で、割の良い受験指導はすべてキッパリやめました。

学部3年次以降は、大学教養課程1、2年生の内容などではなく、高校生相手の受験指導の切り売りでお金は儲けていたけれど、自分の知はやせ細っていたと思います。

それを修士1年ですべてストップして、生活を一新しました。

受験指導の代わりに、ギャラの安い新日フィルの鍵盤奏者、あるいは半年で5万円などという問題外の薄謝、実質「無給助手」で東フィルのオペラ公演副指揮者など現場の叩き上げ見習いに入りました。

確かにこれがなければ、職業音楽人としての今の私の何もありません。芸大で教える実技もこの時期に体得したものが大半です。

ただ、修士2年、もう一つ、オーケストラよりさらに薄給の、比較にならないほど安いバイトを振ってもらいました。

これだけはお受けしたのが、東大内での「代用教員」だったのです。

私が担当したのは東京大学理学部物理学科、地球物理、天文の3学科共通の学部3年必修実験でした。

修士2年生の私が、学部3年の実験「最低線だけクリアしたら、あと何やってもいいから」と任せてもらい、カリキュラムをすべて書き直して半期150人ほど、東大内で競争に勝ち抜いてきた3年生たちを教える最初の経験を持つことになった。

これはまじめに準備しました。

並居る秀才が真剣に予習してきます。それが毎週毎週ですからこっちは大変です。当時質問に来た学生で、現在も同僚として仲の良い先生(例えば素粒子物理の鳥居さん)になった、生涯の友人を得るきっかけにもなった。

お金で買えない、得難い経験となりました。

それに加えてもう一つ、大学の中で責任を分担させてもらい、それを認められるということが、本当にうれしかった。

物理学科の事務室で「給料」と書かれた茶封筒に入った、3000円なにがしかのお金を最初にいただいたときの気持ちは、うまく書くことができません。

当時はバブル景気まっさかりです。受験指導ではもっと大量の金額を手にしていました。

でもそういうものと比較にならない、何かの経験になったと思います。その後いろいろありましたが、思い返せば8年後、助教授採用されて今に至っています。

ここでビジネスに徹するならお金はお金でドライに考えるべき、3000円は3000円、2万円は2万円かもしれません。

でも、「CSR」を筆頭に、企業の社会的価値には、やはりお金で買えないものもあると思うというのが、本連載の原点、日経ビジネスオンライン「常識の源流探訪」を書き始めたきっかけでもありました。

試験にだけ通用する勉強法

これらを踏まえて「受験にだけ通用する勉強法」をまとめておきます。

1 出題範囲を確定する

2 その範囲について、教科の全体を理解。把握し、出題者の観点からポイントを整理し

3 実際に問題演習を一定の数こなし、落第点から満点まで、解答を自在にかき分けられる程度の器量を養っておけば

実際には大半は類題しか出ませんから、テストで心配するようなことはありません。

予定稿ではこの先まだ数ページあるのですが、長くなっているのでいったんここで区切ります。

反響が良いようでしたら、この先「AIに駆逐されない人材育成」まで、高校大学受験から一本道で全体像が見えるよう解説するつもりです。

「秀才」だけではAIに駆逐されます。

「冷たい秀才」から「温かい能才」へ、そして「愛のある愚才・変人」へ、という3者を、同じ人がTPOによって演じ分ける必要がある、というのがアウトラインです。

(つづく)

伊東 乾

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