マンU最大の敗因は退場でもパスミスでもない。大型補強だけでタイトルは獲れない。不足しているのは...【欧州CL分析コラム】

マンU最大の敗因は退場でもパスミスでもない。大型補強だけでタイトルは獲れない。不足しているのは...【欧州CL分析コラム】

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  • 更新日:2021/09/15
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【画像:Getty Images】

ワン=ビサカの退場と致命的なミス

UEFAチャンピオンズリーグ・グループリーグ第1節、ヤング・ボーイズ対マンチェスター・ユナイテッドが現地時間14日に行われ、2-1でユナイテッドは敗れた。クリスティアーノ・ロナウドのゴールで先制したものの、痛恨の逆転負けを喫した。最大の敗因は一体どこにあるのだろうか。(文:本田千尋)
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“ロナウド効果”は消え去った。

現地時間9月14日に行われたUEFAチャンピオンズリーグ(CL)、グループFの初戦。ヤング・ボーイズ相手に先制したのは、やはりと言うべきか、クリスティアーノ・ロナウドだった。マンチェスター・ユナイテッドは13分、中盤でフレッジが奪ったボールを左に展開すると、ブルーノ・フェルナンデスが右足のアウトで入れたクロスを、ファーでロナウドが押し込む。格下に“貫録”を見せつける一撃だった。

しかし、その後が続かない。35分にアーロン・ワン=ビサカがレッドカードで退場して10人になると、オーレ・グンナー・スールシャール監督は、後半の頭にボランチで先発したドニー・ファン・デ・ベークに代えてCBラファエル・ヴランを投入。後ろを4バックから5バックに変更し、ロナウドをトップに置く[5-3-1]のカウンター型にシフトした。

だが、スイス王者相手に防戦一方。効果的なカウンターは発動できないまま、66分に左サイドからクロスを入れられて同点に追い付かれてしまう。前線を広く動いて守備にも奔走したロナウドは72分にピッチ退く。すると代わって入ったジェシー・リンガードが、試合終了間際の90+5分に痛恨のミスパス。ゴール前への絶妙なスルーパスとなったそのボールを、ジョルダン・シーバチュに決められ、マンUは劇的な形でヤング・ボーイズに勝利を献上した。

この試合の敗因は、ワン=ビサカの退場とリンガードのパスミスという不幸が重なったことなのだろうか。それとも10人になって5バックに変更し、引き過ぎてしまったことなのだろうか。

最大の敗因は…

もちろん結果論になってしまうが、その2つの要素を敗因として考えることはできるだろう。サッカーの試合には“流れ”と、そこから生じる“運”または“不運”という人知を超えたものが存在するし、何らかのアクシデントも付き物だ。

また、5枚で引いてカウンターという形は、そもそもリーグ戦でやり慣れていないスタイル。1人少なくなったからと言って、弱気になってしまっては、かえってアンダードッグの“下克上心”に火をつけてしまったようだ。

しかし最大の敗因は、ヤング・ボーイズが見せたサッカーのスタイルにあったのではないか。敵将のデイヴィッド・ワグナー監督は、ユルゲン・クロップの影響が色濃いソリッドなサッカーを披露。元アメリカ代表の指揮官は選手時代、現リバプールの監督とマインツでチームメイト同士だった。指導者となってからは11年7月から15年10月まで、当時トップチームの監督だったクロップの縁でドルトムントのセカンドチームを率いていた。両者は20年以上の付き合いになるという。

[4-1-4-1]で強度の高いブロックを構築したヤング・ボーイズは、マンUのビルドアップに対して整備された連動したプレスを掛け、ボールを奪ってからの攻撃もスムーズで、チーム全体で攻守のイメージがしっかりと共有されていた。[4-1-4-1]だけでなく[5-4-1]も使いこなすクロップ流のソリッドなサッカーを相手に、マンUはテンポを速くしてパスを回すことはできなかった。

もちろんテンポの速いパス交換が実現できなかったのは、この試合で先発したファン・デ・ベークが未だにフィットしていないという側面もある。ただ、この強固な守備組織があったからこそ、ワン=ビサカのレッドを招いたとも言えるだろう。そして10人になり、不慣れなカウンター型を敷いたことで、ヤング・ボーイズのインテンシティの高いサッカーに力負けすることになった。

補強だけではタイトルに手が届かない

翻ってスールシャール監督のチームには、ワーグナー監督が構築したような戦術的土台が不足していた。ロナウドという強力な個で先制に成功したが、弱者を相手にした強者特有の弱点とでも言うべきか、連動したプレスやボールを奪った後のゴールへの道筋の共有という点で、ヤング・ボーイズの後塵に拝したと言わざるを得ない。

その意味で、このCLの初戦での敗北は、マンUにとって“ビッグ・レッスン”となったのではないか。戦術的土台を整備せずに強力な個に頼っていては、やがて行き詰ってしまうという教訓をベルンの地で得たのではないだろうか。

市場価値ではるかに劣るヤング・ボーイズに敗れたことで、“ロナウド効果”は消え去った。“ロナウド効果”とはつまり、ロナウドやヴァラン、ジェイドン・サンチョといった大型補強が敢行されたことで、今季はタイトルを取れるのではないか、という予感である。

ヤング・ボーイズ戦での敗北は、補強だけではタイトルに手が届かないことを証明した。もちろん今季は始まったばかりだ。ロナウドを始めとする今夏の補強そのものが否定されたわけではない。最高級の食材を手にしたスールシャール監督が、どのような料理をオールド・トラッフォードに戻ったファンに振舞っていくのか。問われるのは、チームを成熟させるための方向性である。

現在のマンUは、まだまだアンダードッグなのだ。

(文:本田千尋)

【了】

本田千尋

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