「面白くて変な渋谷」を再び。区公認ファッションECサイト仕掛け人の狙い

「面白くて変な渋谷」を再び。区公認ファッションECサイト仕掛け人の狙い

  • Forbes JAPAN
  • 更新日:2020/10/19
No image

渋谷を愛する人々による、渋谷を愛する人々のための新たな取り組みが始まろうとしている──。

渋谷区公認のファッションECサイト「SHIBUYA FAMILY SALE」が10月18日正午よりローンチされる。工夫が凝らされた仕掛けの裏には、ただ服を販売するだけでなくコロナ禍で落ち込んだ渋谷の街を、再び盛り上げたい狙いがある。

発起人の一般社団法人渋谷未来デザインのプロジェクトデザイナー久保田夏彦と、ECサイトの制作を手がけたワンオーCEOの松井智則に話を聞いた。

目標を上回るクラファンの売上。コロナ禍に見えた光

緊急事態宣言下の渋谷スクランブル交差点の光景に目を疑った人も多いだろう。宣言が発令されてから初めての週末の4月11日の渋谷駅周辺の人出は、前年同週比86%減だった。

それまで東京の中心地として1日に300万人が訪れた渋谷の街は、新型コロナの蔓延により一瞬にして「ゴーストタウン」のような様相を呈した。

それから半年あまり、徐々に街の人出は戻りつつあるが、渋谷区の主な観光資源であるエンタメ、飲食、アパレル産業は未だにかなり厳しい状況が続いている。特にアパレル業界に詳しい松井は、「店舗での販売がままならないこと以外にも、来シーズンに向けた展示会も行えないため来年度以降の売り上げが見込めず、コロナ以前の状態に戻るにはかなり険しい道のりとなりそうだ」と指摘する。

ファッションやエンタメといった渋谷のカルチャーを再生すべく、渋谷区や、区の商店会連合会、観光協会、渋谷未来デザインが一丸となって「YOU MAKE SHIBUYA クラウドファンディング」を立ち上げた。運営資金は、そのクラウドファンディングで集められ、当初の目標である4289万円を大きく上回る4477万円が支援された。支援金はECサイト以外にもエンタメ産業への支援としてオンライン配信システムの整備などにも活用される。渋谷区が中心となって開始されたプロジェクトだが、渋谷を愛する全国の思いが集まった結果に違いない。

ECサイトの名前は「SHIBUYA FAMILY SALE」。松井は「かつて渋谷に訪れていた300万人の人々は年齢もさまざまです。幅広い年代の人みんなが楽しめるようにと考えました。『FAMILY SALE』というワードからも楽しげな感じが伝わればいいなと思います」と語る。

No image

ファッションECサイト「SHIBUYA FAMILY SALE」は、その名の通り、家族みんなで楽しめるようなデザインに

ECサイトというと、今シーズンの商品を扱ったり、来シーズンの予約販売が行われることもあるが、「SHIBUYA FAMILY SALE」に並ぶ商品は、シーズンを終え、店頭には並ばなくなった経年在庫と言われる品だ。そのため定価より安く商品を手に入れることができる。

参加店には、SHIPS、アーバンリサーチ、アダストリアなどの大手企業から、渋谷区内にのみ店舗をもつ単店のほか、渋谷区内に本社や販売店をもつブランドも名を連ねる。

大手企業がサイトに参加することで有名ブランドの商品が手頃に買える、と人が集まり、その流れで渋谷ならではの単店の商品も手にとってもらえるのでは、という狙いがある。また、大手企業はシーズンを終えた商品を出品できるため、在庫を余らせずに済む。サイト、ブランド、そしてサイトを利用する顧客で三方良しの関係を築くことができるモデルなのではないだろうか。

「このサイトの軸は2つあると思っていて、ひとつは経年在庫を余らせないこと。もうひとつはコロナで大変な時に、販路としてこれからも活用してもらえるようにすることです。第2波などを見据えて、もしまた状況が変わっても対応できるように、サステナブルなモデルを作っていきたいと思っています」と久保田は話す。

No image

「SHIBUYA FAMILY SALE」の特徴を語る、渋谷未来デザインのプロジェクトデザイナー久保田夏彦

撮影から発送まで、出店は無料で

「SHIBUYA FAMILY SALE」ではサイトに出店する際に初期費用が一切かからない。商品をサイト運営側に送ると掲載用の写真撮影から発送まで、全て無料でサイト側が行い、売り上げの27%がサイト側に還元される。通常ECサイトに登録し、商品を出品するには最低でも100万円単位の初期投資が必要になるため、これは革新的な試みといえる。

さらにサイトの特徴として、プロのスタイリストによる全身コーディネートを見ることができる。ブランドの垣根を超えて、服の魅力が最大限に引き出された状態でオンラインショッピングを楽しむことができるのだ。

No image

サイト上ではプロがスタイリングしたコーディネートが見られる(提供写真)

サイトの制作を行ったワンオーの松井は、「このスタイリングだといくら、とブランドを超えて売り出していきます。渋谷自体がダイバーシティの街なので、物として売るのでなくスタイルとして売っていきたい。スタイリストさんやタレントさんなどに協力して頂いて、いろいろなスタイリングを展開していきたいと思っています」と語る。

久保田は、スタイリングをした状態でサイトに掲載することは、このような時世においても「渋谷のカルチャー」を感じてもらえるような工夫になっているのではないかと話す。

「ファッションを見ながら渋谷を歩くのは楽しいけれど、コロナでできなくなってしまいました。スタイルを提案することで少しでも渋谷らしさを感じてもらえればと思っています。裏テーマとしては、コロナで撮影ができなくなってしまったスタイリストさんたちに活躍して頂ける場になればいいなとも思っています」

No image

ブランドの垣根を超えたコーディネートがチェックできる(提供写真)

渋谷の街では渋カジ、コギャルなど、数多くのスタイルが生まれてきた。どんなアイテムを持つかより、それらをどうスタイルに昇華させるかが重視され、独特のミックス感をもった渋谷ならではのカルチャーが発信されてきたのかもしれない。

「ECサイトだけでなく、例えば渋谷の仮装空間を歩きながら買い物ができたり、渋谷に来れない人にも渋谷を味わってもらえるようなコンテンツを考えていきたい」。街を歩きながら渋谷を行き交う人々のファッションを眺める。そんな楽しさをオンラインでも体験でき、最終的には街に人が戻ってきてくれるようなコンテンツを作っていきたいと2人は語る。

リアルの店舗とオンライン上での楽しみ方をどう掛け合わせていくかが、今後の課題となりそうだ。

意外にも業界の売上は伸びている

10月17日、「SHIBUYA HARAJUKU FASHION FESTIVAL(シブハラフェス)ファッションショー」が開催された。シブハラフェスは渋谷区を盛り上げるお祭りとして毎年開催されてきたが、ファッションショーの開催は、再整備後の宮下公園で初の試みとなった。1本目のショーのプロデューサーをモデル・タレントのりゅうちぇるが務め、宮下公園に広がるランウェイの様子は映像配信された。

No image

コロナ禍にファッションの持つ力を感じたというワンオーCEOの松井智則

私たちの生活様式は一変し、活動の拠点は街からどこか見えない場所へと場を移しつつある。「不要不急」という曖昧な線引きで必要な物と不要な物が分けられた状況下において、ファッションやカルチャーはどのように変化しつつあるのだろうか。松井はこう語る。

「自分自身もそうだったのですが、衣食住の衣は本当に必要か見直されたと思うんですよ。でも郊外のアウトレットにたくさん人が集まっていたり、経営している小売店ではECで昨対を超えていたりと、やっぱりファッションって必要なんだなとパワーを感じましたね。

自粛期間に映画をたくさん見たりすると、カルチャーみたいなものが自分の中に溜まってくるじゃないですか。そうなると家にいても服が欲しくなってくるし、実際に服を買って気分が上がったとみんな言っていて。そういうことがスタイルやカルチャーにリンクしていくんだなというのはとても感じましたね」

久保田も「Zoomでミーティングばかりの実生活にファッションが必要かと言われれば不必要な物かもしれないが、気持ちをリフトするためのアイテムとしてはやっぱりパワーをもってるのだと思います。気分を上げるためひとつのツールとしてECサイトが機能していけば嬉しいなと思います」と語った。

どんな形になろうと、ファッションを楽しむことで気分が上がるという方程式は、人間の本能的なものなのかもしれない。

No image

「SHIBUYA FAMILY SALE」を活用して、新しい渋谷発のカルチャーを発信していきたいという

海外展開も視野に入れたいという2人に、今後の展望を聞いた。

久保田は「カルチャーのひとつであるファッションを通じて、渋谷を元気にしていきたいですね。ファッションの楽しさを感じてもらって、ビジネス面でもしっかり売れるサイトにしていきたいと思っています」と意気込む。

松井は「90年代まで渋谷や原宿でカルチャーシーンがめちゃくちゃ生まれたじゃないですか。やっぱり渋谷がもっているパワーっていろんな人が街に来て感じたことを発信してることだと感じるので、変なことをやり続けて、また『渋谷が面白い、変なことを始めたな』と思われるようにたくさん発信していけたらなと思っています。

『SHIBUYA FAMILY SALE』も渋谷を愛しているみなさんや、渋谷で何かをしたい方をたくさん起用して、そういう人たちがまた何か渋谷のパワーで生まれる新しいカルチャーを作れるひとつの場になれたら嬉しいです」と希望を語った。

渋谷を愛する仕掛けの発起人たちの背景には、渋谷を愛する多くの人々の思いや熱を感じた。渋谷の街はこれからも、パワフルで、尖った日本のカルチャーの発信地としてあり続けるだろう。

*『SHIBUYA FAMILY SALE』HPはこちら。10月18日正午にオープン予定

この記事をお届けした
グノシーの最新ニュース情報を、

でも最新ニュース情報をお届けしています。

外部リンク

  • このエントリーをはてなブックマークに追加