Eコマースにおける知的財産保護の現状とは

Eコマースにおける知的財産保護の現状とは

  • マイナビニュース
  • 更新日:2022/06/23
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●知的財産保護では模倣品対策

Amazon、模倣品からブランドを保護するための新サービスを日本向けに提供

アマゾンジャパンは6月15日、「第8回Amazon Academy」と題するオンラインイベントを開催した。「Eコマースにおける知財、その保護と活用によるブランドマネジメントとは」がテーマの同イベントおける、基調講演の内容を紹介する。
○知的財産保護では模倣品対策に注力

今回のイベントのテーマである知的財産の保護において、同社がとりわけ力を入れているのは模倣品対策だという。

イベントの冒頭では、アマゾンジャパンのジャスパー・チャン社長が「ブランド・オーナー様の専門知識とアマゾンのツールを組み合わせることで、模倣品をより効果的に特定、阻止して、知的財産保護の機能をより強化させることができると考えます」と挨拶した。

○バンダイは模倣品対策に加え外部との関係構築も強化

続いて行われた基調講演では、バンダイの法務・知的財産部に所属し、IIPPFF(国際知的財産保護フォーラム)インターネットプロジェクトチームの幹事も務める岡崎高之氏が登壇。同氏は、模倣品対策においてアマゾンと情報交換及び協力関係の強化に関する覚書を締結したことに関連して「Eコマースで成果を出すブランド保護活動~個社から『協働』へ~」と題して、バンダイやIIPPFの活動内容について説明した。

岡崎氏の講演のポイントは、以下の3点だ。

1)バンダイにとってのブランド保護
2)侵害対策だけへの集中の限界
3)IIPPFでの取り組み

バンダイはキャラクターをIPと呼び、年間で約300IPの商品化を行っているという。その権利の一部は自社保有だが、多くは外部の知的財産権者からライセンスを受けており、社外と知的財産に関するコミュニケーションが多いと岡崎氏は語る。

「お客様の頭の中にあるブランド価値をどうやって守り育てるかが要点」という同氏は、そのステップとして権利保全と権利活用の2点を挙げた。

権利保全は、商標・意匠・特許の出願や著作権登録といった、一般的な手段だ。だが、これだけでは十分ではないという。同社も模倣品対策は適宜実施しているものの、「いわゆる模倣品のイタチゴッコ問題」(岡崎氏)が発生しているとのことだ。

岡崎氏は「ブランド保護が継続的な業務だと考えた時に、どうすればポジティブな仕事の価値を与えることができるのか」との問いを投げかけ、「外部との関係を構築するという考え方」が答えだと強調する。

具体的には、「知的財産権を外部とのコミュニケーション・ツールと考えるやり方」(岡崎氏)だという。
○IIPPFを通じた活動でコミュニケーションの可能性を拡大

岡崎氏によると、同社では「個社の活動だけでなく、会社の枠を超えた社外団体での活動にも力を入れている」といい、その1つが岡崎氏が幹事を務めるIIPPFを通じた活動だ。

IIPPFは模倣品・海賊版など知的財産権侵害問題の解決を目指す官民一体型のフォーラムであり、権利者企業・団体であれば無料で入会できるという。

「個社で行っている個別の侵害対策や対外PRと組み合わせることによって、知的財産権をパスポートにした外部コミュニケーションの可能性が大きく広がっています」(岡崎氏)

最後に岡崎氏は、「知的財産権をお客様や社会とつながり、ブランド価値を高める協創的なコミュニケーション手段と捉えると、世界が広がると思います」と、自身の講演を締めくくった。

●知財とマーケティングの知られざる関係性
○知財とマーケティングの知られざる関係性とは

続いて、KIT虎ノ門大学院(金沢工業大学大学院)イノベーションマネジメント研究科教授の杉光一成氏による、「企業価値の向上とは『商標』を『ブランド』にすることである ~知財とマーケティングを架橋せよ」という基調講演が行われた。

元々は知的財産が専門だったという杉光氏は、ここ10年ほどはマーケティングを専門にしているという。

その杉光氏がマーケティングと知財の関係に気付いたのは、1960年頃の米ゼロックスによる世界初の普通紙コピー機発売をめぐる動きだったという。

当時は米国のゼロックス本社へ出向かなければ入手できないとまで言われる状況だったそうだが、その背景には600件近くの特許があると杉光氏は指摘する。

また杉光氏は、差別化が重要という点も、知財とマーケティングで共通だと語る。その視点を、マーケティングの権威で杉光氏が著作を翻訳したフィリップ・コトラー氏に話したところ、驚きをもって受け止められたとのことだ。

だが、両者には異なる点もあるという同氏は、その例として知財における商標とマーケティングにおけるブランドは同じものなのか、との問いを投げかけた。

ブランドの本質は顧客吸引力だと指摘する杉光氏は、商標を出願すれば即ブランドになるわけではなく、顧客吸引力を得るための施策が必要であり、商標をブランドにしていくことが重要だと説いた。

杉光氏は商標がブランドになるために必要な要素として、識別力が高い、品質が良い、サービスが良い、商品説明と実際の品質に差異が無いという4点を挙げた上で、模倣品対策の重要性を指摘する。模倣品により正規品のブランドが傷付き、それにより顧客吸引力が失われてしまうからだ。

杉光氏は「知財とマーケティングは、連動させればさせるほど価値が出てくると思っています」と、その重要性を強調した上で、「顧客吸引力が生まれれば自然に売れる、マーケティングの究極目標になり、そうなれば、どんどん企業の価値が向上する」と、自身の講演を取りまとめた。

● アマゾンのブランド保護戦略は4本の柱
○アマゾンのブランド保護戦略は4本の柱に重点

3番目の基調講演では、米Amazonのバイスプレジデント ブランドプロテクションを務めるメアリ・ベス・ウェストモアランド氏が、「コラボレーションで実現するAmazonにおけるブランド保護の取り組み」と題して、同社の取り組みを紹介した。

ウェストモアランド氏は、同社のブランド保護戦略では以下の4つの柱に重点を置いていると語る。

1)優れた堅牢性を持つ積極的な防止策
2)ブランドを保護するための強力なツール
3)悪質な業者の責任追及
4)利用者への教育・サポート

防止策では事業者の身元確認のためのツール構築を挙げ、悪質な事業者や出品のブロックに奏功しているという。

ブランド保護には模倣品防止ツールを用意し、7億5000万個以上の商品を保護していると自負する。

悪質事業者への責任としては、2020年にAmazon模倣品犯罪対策チームを設置。ブランド・オーナーとのパートナーシップ締結やIIPPFなどの団体との協力により、模倣品業者に対抗しているという。

利用客に対しては、模倣品を避ける方法に関する啓発活動を実施すると共に、同社が模倣品と検出した商品を誤って購入した場合は、全額返金しているとのことだ。

「模倣品を0にする取り組みはノンストップで続けます」と強調するウェストモアランド氏は、パートナーシップやコラボレーション、業界横断的なブランド保護強化に期待を示し、自身の講演を結んだ。
○知的財産の積極的な活用に関するパネルディスカッションも

基調講演に続いて、「知的財産の保護に加えて、ビジネスチャンスを拡大していくための知的財産の積極的な活用について」がテーマの、パネルディスカッションが開かれた。

前述の岡崎氏と杉光氏の他、アメイズプラスIT事業部マネージャーの鈴木宏典氏とキヤノン知的財産法務本部 模倣品対策課長の豊田仁氏が加わった計4人が、このテーマに沿って議論を深め、イベントは終了した。

山本善之介

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