林真理子が「大人になってからつくる友だち」の大切さを痛感した「意外な理由」〜孤独を感じたこともあった

林真理子が「大人になってからつくる友だち」の大切さを痛感した「意外な理由」〜孤独を感じたこともあった

  • 現代ビジネス
  • 更新日:2022/11/25
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野心を持つことの大切さを説き、46万部の大ヒットとなった林真理子『野心のすすめ』(講談社現代新書)。

このたび、それ以来9年半ぶりの新書となる『成熟スイッチ』(同)が発売され、大注目を浴びている。

ここでは、著者の林さんが「大人になってつくる友だち」について考えてきたことをご紹介しよう。

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成功すると孤独がついてくる

「芸能界の方とはまったくおつき合いがありません。今も地元の友だちとばかり一緒に遊んでいますね」

人気のある芸能人が時折こんなことを言います。私はそのたびに「本当かなー」と眉に唾をつけています。「有名人になっても地元の友人を忘れない謙虚な自分」という演出ではないのかと。ステータスを得ると、同じ土俵でしかわからない悩みを打ち明ける友人もまた必要になってくるのではないでしょうか。

たまに地元に帰って高校時代の友だちと会ったら、色紙を持ってぞろぞろと知り合いを連れてきたり……そんなことがしょっちゅう繰り返されれば、それが本当の友だちづき合いであるかどうかは疑わしくなってきます。

大人になってからの友人関係というのは難しいものです。学生時代の友人とは違い、利害関係がからんでくる場合もある。子どもの有無などの環境や、経済的な面などでかけ離れていた場合、友情が成立するのが難しくなることもあります。

四十代の知人女性から聞いた話です。彼女は高校時代から仲のよい友人と四人グループで時折、国内旅行に出かけるなどしていました。しかし年を経るごとに、高給取りの彼女と、他のメンバーとのあいだに経済的格差が生じてきた。その格差はやがてお互いが泊まりたい宿や行きたいレストランの格差となり、ついに仲よしグループは瓦解してしまったというのです。

この他にも、テレビに出て顔も知られている女性が、やはり友人たちと旅行する際に、

「みんなの差額分は自分が払うから、グリーン車で行こうよ」

と提案したところ拒絶され、次第に疎遠になっていったという話も聞いたことがあります。

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〔PHOTO〕iStock

映像業界のとある成功した女性から、

「私って本当に友だちがいないんですよ……」

と相談を受けたとき、私はこうアドバイスしました。

「若くして有名になると、一時的に友人が減るのは仕方ない。あと数年したら、同じぐらいの年齢で活躍している人たちと友だちになっていくから。そうすると本当に楽しく遊べるよ」

「ハヤシさんが言うと、説得力あるわー」

と感心されたものです。自分でいうのもいやらしいですが、実際に、二十代で知名度と相応のお金を手にした私は孤独を感じていた時期もありました。気がつけば飲んだり遊んだりで一緒にいてくれるのは編集者だけになっていたのです。

かつての私だけでなく、とりまきの編集者をはべらせている作家はたくさんいます。業界内の噂話をしながら飲み食いは会社の経費で落としてくれるし、あれやこれやと気をつかってくれたりもする。作家は編集者とつき合うのがいちばんラクチンなのです。しかしここに落とし穴が潜んでいます。

中上健次さんのアドバイス

まだデビューしてまもない頃、中上健次さんにお会いしたことがあり、「ちゃんと書くんだよ、わかってるか」と声をかけてもらいました。

「はい、選考会どうぞよろしくお願いします!」

と頭を下げた私を、

「あいつ、俺のことを選考委員だと思ってやがる」

と中上さんはたいそう面白がっていたのだとか。私は当時、直木賞にノミネートされていましたが、なぜか中上さんのことを直木賞の選考委員だと間違って思い込んでいたのです。

そのカン違いをきっかけにご縁が出来て、のちに中上さんが、

「編集者とばかりつき合ってると、ロクな作家にならないぞ」

と忠告してくれたことがありました。角川書店の編集者だった見城徹さん(現在、幻冬舎代表取締役社長)にそれを話したら、

「中上なんて、編集者としかつき合わねえじゃないか」

と笑っていましたが、しばらくして中上さんは亡くなってしまいました。しかし中上さんの言葉は私の心にずっと残ることになったのです。

中年になってからは、出版社以外の違う世界の人たちとつき合うよう意識的に努めてきました。実業家や官僚、企業の管理職、脚本家、音楽家、漫画家など、同世代で活躍する人たちと親しくなっていったのです。子どもが小さいうちはさすがに控えていましたが、各界で活躍している友人たちと海外旅行に行ったり、料亭や花街で遊んだり。自分で稼いだお金でやりたいことを贅沢にやりたい放題出来るのは、なんて幸せなことだろうと思ったものです。

作家が編集者とだけつき合っていては会話も世界も袋小路に入ってしまうこともあります。幅広いジャンルの人たちとつき合うということは、後年、文化人の団体「エンジン01文化戦略会議」(各地でオープンカレッジ開催などの活動をする文化人・知識人の団体)に入り、学者さんや実業家などいろいろな人と交流を続けている現在まで、私の人生の大事なポリシーです。

人づき合いにかぎらず、趣味やボランティアなど、本業とは別の世界を持っている人間は強いです。仕事熱心なのはいいのですが、その世界だけにどっぷりと浸かり「これが私のすべて」と重苦しい空気を放っている人は、話も面白くないですし、人間的な魅力も乏しくなってしまいます。

どんな職業であっても、自分の視野を拡げていくことには常に積極的でありたいものです。

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